セリオの憂鬱 投稿者:無口の人


 関係ないけど「いくことにした」を変換したら、「育子とにした」になりました。
 なんとなく、悲しくなりました。

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 部屋の出入口に行き、扉の取っ手を握った。
 ガチャ、ガチャ…ッ。
 鍵が閉まっている。
 また、セリオが閉めたのだ。
 僕の出番が近いときは開けておくようにと、いつもあれほど言っているのに、
なぜかセリオは、すぐに鍵を閉めようとするのだ。
「困った癖だ…」
 僕は呟きながら部屋の中に戻った。

 セリオは、『サブキャラの部屋』の隅の所に、ひとり座っていた。
 壁を背にして、フローリングの床の上に正座をして、志保ちゃんJUMP!をやっていた。
 相変わらずの虚ろな目で、ただじっと、画面上の一点を見つめている。
「やぁ、すごい点数だね。もしかして、寝てないの?」
 僕が声を掛けても、セリオは何の反応も示さなかった。
 セリオが何も応えないのは分かっていた。
 あの日から…、お喋りだったセリオの口は、ひと言も言葉を発しなくなってしまったのだ。
 そう、あの日…初めてバッドエンディングを迎えた日から…

 ふと気が付くと、目の前にセリオが立っていた。
 セリオは、僕の横を通り過ぎていくと部屋の出入口に行き、カシャンと音を立てて、扉の鍵を閉めた。
 セリオは、鍵の閉まった扉をじっと見つめ、静かに立ち尽くしていた。
「…セリオ…お前…また鍵を閉めて…」
 僕は立ち上がり、セリオの前まで行くと、
「…僕は出番が多いから、いつも開けておいてって言ってるのに…」
 再び鍵を開けようと、扉に手を伸ばした…。
 そのとき。
 セリオが、僕のその手を掴んで制した。
「…なんだ、鍵を開けちゃ駄目なのか?」
 僕が訊くと、セリオは頷いた。
「…でも、今でも誰か、ヒロインと結ばれない人がいるといけない」
 僕が無理矢理鍵を開けようとすると、
「…駄目です」
 セリオが、あの事件以降、初めて口を聞いた。
「…セリオ…お前」
「…閉めとかないと、佐藤君がエンディングに出てしまうじゃないですか…」

「男がエンディングに出て、何が悪いっちゅうねん!あぁ!」