雨が降っていた。 傘は持たない主義なので当然持ってきてない。 あ〜あ。 こういう時、いつも後悔する。 変わらぬ日常。 鞄を雨除けにして、駅まで走るか。 そう思って、ちょっと屈む。 サッカーやってた時の癖が出た。 思わず、にやけてしまった。 あかりがいたら、 「ひろゆきちゃん、変わらないね。」 とでも言っただろうか? 変化 今、俺のとなりにあかりはいない。 あいつは、俺の横にくっついてくるのをやめた。 と、言っても、別に別れたとか、そんなんじゃないんだぜ。 実は、結婚したんだ、俺達。 結構上手くやってる。 もう、3年かな。 つまり、あいつは俺の横じゃなく、傍にいるんだ。 今、あいつは病院にいる。 妊娠してるんだ。 俺の子だぜ、俺の子。 まあ、まだ、あんまり実感はないんだけどな。 とりあえず今日も様子を見に行かないとな。 そういや昨日、あいつ予定がどうとか言ってたような? まあ、いいや。 後で聞こう。 病院に着いた。 『にゃぁ〜』 びくっとしたぁ、なんだ、猫か。 一瞬、赤ん坊かと思っちまった。 猫... 雨...... ・ ・ ・・猫を見る。 このままだと可哀相だな。 ・・・よし! 俺は、背広を脱いで、猫を包む。 そのまま病院へ入る。 当然、看護婦さんに怒られたが、事情を説明し、中に入れてもらう。 タオルを2枚もらい、片方のタオルで、猫の体を拭いてやる。 ぷるぷるぷる、体を震わせた。 なんか、犬みてえな猫だな。 もう片方の新しいタオルで包んでやる。 さっきの看護婦さんがミルクを入れてくれた。 皿を近づける。 おお〜、飲む飲む。 喉を撫でてやると、 『なぁご〜』 と鳴いた。 気持ち良いので、しばらく撫でてたら、 「あら、藤田さん。遅かったわね。今日は大事な大事な用があるんじゃないの?」 あかりの担当の看護婦さんが来て、意味深なセリフ。 「は?」 いや、俺はあかりの様子を見に来ただけ... 「ちょっと、忘れてるんじゃないでしょうね。あなたの奥さん、今日出産予定日でしょ。」 え、うそ!? そういや、そんなこと聞いたような。 ・・・やべえ、こんなことしてる場合じゃない、急がなきゃ。 「看護婦さん、後は頼む」 ダッシュ! 「ちょっと、後は頼むって、あたしも付き添いとかあるん...」 聞いちゃいられない。 走って病室の前にたどり着く。 『藤田あかり』 あってる、よし。 「あかり、入るぞ」 と、声をかけてドアを開ける。 が、いない。 ? 「藤田さんですか?」 あかりの隣のベッドで寝ている女性が俺に尋ねる。 「ええ、そうですが。うちのあかり、どこ行ったか知りませんか?」 困った顔をされた。 知らないんだろうか? いや、そんな感じじゃないな、この顔は。 と、すると... 「・・・・あの、もしかして?」 いや、まさか、幾らあいつが時間どうりな奴だからってそこまで... 「そうです。奥さん、急に陣痛が来て、今分娩室ですよ。早く行ってあげてください」 マジか!? なんて、規則正しい奴なんだ。 「ほら、急がないと!」 うおぉ、はい! わかりました!! ぇ、えらいことになってきた。 分娩室まではだいたい距離が55M。 走る、走る。 この曲がり角を曲がれば、見えてくる。 よし、あと10M、5M。 4M。 3M。 2M。 1M。 着い... 「ふぎゃぁ、ふぎゃあ」 −ずるっ− こけそうになった。 扉が開き、より一層大きな赤ん坊の泣き声と共に看護婦さんが出てきて、俺に声をかけた。 「藤田さんですね、生まれましたよ。母子共に健康です。」 生まれた...? 思考が止まる。 「あの...?」 ・・・ 「藤田さん?」 ・・・・ 「藤田さん!」 「うわぁ、はい!」 「もっとちゃんとして下さいよ、もう父親なんですからね。」 父親。 違和感のある言葉。 ちちおや。 ・・・ 「藤田さん!」 また注意された。 「す、すいません。中、入っても、いいですか?」 看護婦さんに尋ねた。 「もちろんです。奥さん、頑張りましたよ。」 中に入る。 「ひろゆきちゃん...」 あかりがいた。 泣いてやがる。 その顔には、ちょっと疲労の色がうかがえた。 が、輝いても見えた。 涙のせいか? 「あかり...」 それ以上、かける言葉が見つからない。 「うぎゃあ、うぎゃあ」 となりには、元気に泣く赤ん坊。 ・ ・ ・・うおおおおおお! なんか急に実感わいてきた!! 「頑張ったな、あかり。」 声をかける。 あれ、変だな、あかりの顔が良く見えない。 「ひろゆきちゃん、泣いてるの?」 あかりが言った。 何を馬鹿なことを。 顔のあたりを袖で拭う。 涙だ。 俺、泣いてる。 「ははははははっ。」 自然に笑いが零れた。 「ふふっ。」 あかりも笑った。 最高の笑顔で。 夜になった。 もう、雨も止んでいる。 そういや、猫もいなくなってた。 なんだか、明日は快晴の予感がする。 外を見るのをやめて、俺は、ベッドのあかりの傍へ。 あかりはもう寝ている。 可愛い寝顔。 ほっぺたを押してみる。 ぷにっ、ぷにっ。 「んん〜。」 なんか可愛いから、もう一回。 ぷにっ、ぷにっ。 「ひろゆきちゃん〜」 やべっ、起こしちまったか? ...なんだ、寝言か。 しっかし、幸せそうな顔してやがる。 ・ ・ この顔を、ずっと見ていきたいな。 俺はあかりを抱きしめた。 強く、そして、優しく。 ----------------------------------------------------------------------- 総スカン 食らったSS 書き直す するとなんでか あかりが出産(笑) ども、緑と申します。 多分、知ってる人ほとんどいないと思うので、はじめまして(笑) えー、駄文です。 めっちゃ、都合いいです。 出産シーンは、はしょりました。 でも、感情だけは伝わるよう努力しました。 いいわけ(笑) 感想、お待ちしてます。 それでは、また。