『雨音と晴音』 投稿者:
−しとしとしとしと−

外は雨が降っている。
庭にある松の木も、なんだか元気が無いみたい。

私は、2、3日前から風邪を引いていた。
今はもう熱も無いんだけど、梓お姉ちゃんが、
「こういうのは治りかけが大事なんだから、今日一日はゆっくり寝てな。」
って言うの。
「もう大丈夫だよ」
って私が言っても、
「いいから今日は休みなっ」
って。

心配させちゃいけないから、学校を休んで今は布団の中にいる。

まだお昼前なのに、外はどんよりと暗い。
私はただ、ぼうっと雨の音を聞いていた。

雨は嫌い。

しとしとという音が、私の耳からつぅと入っていって、ぽつん、ぽつん、と落ちていく。
その雫は、私の心に広がって、やがて大きな水溜まりになる。
冷たい硝子のような、その青い空白は、私を周りに追いやって、大きく大きく膨れ上がる。
そして、いつもそこに耕一お兄ちゃんが映される。
でも、顔の当たりは曇っててよく見えなくて、どんな表情をしてるのか分からない。
なんだか不安になって、私はきゅうっと縮こまってしまう。

だから嫌い。

こんなとき、布団の中でくの字になって、ひざを抱える。
そしたら、ちょっとだけ安心しちゃうんだ。

頭まで布団をかぶってるから、なんだかぽかぽか温かい。
やっぱりまだ熱があるのかなぁ。
ぽかぽかぽかぽか暖かい。
頭がぼうっとしてきて、もう何も考えれなぃ・・・・・・・・・・・・

「やっときたか、遅いぞ」
「わりいわりい、上手いこと電車が繋がらなくてな。」
「まったく・・・」
「だから、ごめんって。で、初音ちゃんは?」
「今は寝てるみたい。もう熱も引いたみたいだし、大丈夫でしょ。」
「そりゃ良かった」
「あんたが来ること、初音には知らせてないんだ。ビックリさせてやろうと思ってね。」
「いい性格してるぜ。んじゃ、ちょっと驚かせてこようかな。」
「あんたもね。」
「はははっ」
「ふふっ」

暖かな光が差し込んでいる。
・・・あれっ私寝ちゃってたんだ。
おでこがひんやりと冷たい。
手をあてると、タオルが置いてあった。
梓お姉ちゃんが置いてくれたのかな。

ふかっ

髪の毛をくすぐられる。
誰だろう?
あっ、梓お姉ちゃんかな?
「梓お姉ちゃん?」
・・・、返事はないが、ふかっとまた撫でられる。
私はゆっくりと瞼を開き、ぼんやりとした空間を見つめる。

「お姉ちゃん?」
ゆっくりとゆっくりと、もやもやが消えていって、やっと誰だか分かった。
あ、耕一お兄ちゃんだ。
お兄ちゃんは優しい瞳で、ただ頭を撫で続けている。
気持ちいいなぁ・・・・・・・・・

......えっ!?
「耕一お兄ちゃん!!!!!!!?」

がばっと飛び起きて、お兄ちゃんの方を見る。
お兄ちゃんはちょっと目をぱちぱちさせて、そして優しい瞳で、
「おはよう、初音ちゃん。」
私は何がなんだか分からず、
「おはようございます。」
って返すと、
「可愛い下着だね。」

え?下着?
下着って下着のこと?
って、なに言ってるんだろ、私。
下・・・着・・・?
私は自分を見た。

私はうさぎさんのプリントの入った薄い花色のパジャマを着ていた。
そうそう、冬のやつは汗かいたから洗ってたんだっけ。
・・・あ、透けてる......


「きゃあっ」
腕で胸のところを隠す。
顔が真っ赤になっていくのが自分でも分かる。
お兄ちゃんを見ると、なんだかにやにや笑ってる。
「お兄ちゃんのえっちぃ。」
そういったら、ますます顔が熱くなっていって、恥ずかしくて布団にうつ伏せになった。

そんな私を見たお兄ちゃんは、耳元で、
「好きだよ」
と囁いた。

「お兄ちゃん!」
私は振り返り、お兄ちゃんの首に腕を回した。

「汗かいててごめんね。」
「ん?気にしなくていいよ、そんな事。」
「でも・・・」

お兄ちゃんの唇が私の唇に重なる。
「んっ・・・」

長いキス。

互いの唇が離れた時、つぅっと雫が伝わる。
離れたくない二人の気持ちを結ぶかのように。


<後日談>
「いやぁ、まさかあれで風邪が移っちゃうなんてなあ。」
「ごめんね、お兄ちゃん」
「いいんだよ。初音ちゃんの風邪だったら大歓迎さ。」
「お詫びに、いっぱいいっぱいお世話するねっ」
「そう、じゃあ・・・」
「なに?」

「・・・・・・してくれる?」
「え、う、うんっ!」

ちゅっ

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お久しぶりです、緑です。
SSどころの短さじゃない文章を書く者です。(って言うか長いの書けない(^^;)
開き直って、「これはSSSなんだー!」と誤魔化したりする奴です。

どうも私が投稿すると、直後に同じキャラで良い話が出てくるので、ちょっと泣けてきます。
まあ、もっと上手くなりたいです。

今回は初音なので、ゆきさんかな?(予想ですので)

ま、ゆっくりやっていきますので、よろしくお願いします。

それでは。