『 マルチちゃんとセリオちゃん 』第4話 投稿者:まさた
『 即興劇場 〜 お掃除 〜 』
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 ぴーん ぽーん

「… おう、やっと来たか。ほら、上がっていいよ 」
「 ありがとうございます。それでは、お邪魔しますぅ 」
「…… 失礼します 」

この日は青空広がる素敵な日曜日でした。
私とマルチさんは二人で藤田家に来てしまいました。
もちろん私にはこんなところが無縁な場所であるとわかっています。
しかし私の優しき親友の頼みとあってはおいそれと断るワケにはいきません。
「… すみませんですぅ、セリオさん。無理して付き合わせてしまいまして 」
「… いいのですよマルチさん。他でもないあなたの頼みですから 」
私はマルチさんに微笑みながら言いました。
「… 悪いなぁセリオ。大掃除なんかに付き合わせちゃってさ 」
「… わかってるなら、少しは遠慮しろ。このボケカス野郎 」
私は浩之さんに微笑みながら言いました。
浩之さんは暫く硬直されたようですが、すぐに笑いながら「助かるよ」と言われました。
どうやら聞き間違えたことにしたようでした。


「… それじゃあ、俺は二階を掃除するから。何かあったら言ってくれよ、な 」

浩之さんが二階に上がられると、マルチさんが張り切って言われました。
「… それでは始めましょうか、セリオさん。私は窓のお掃除をしますので、セリオさん
  は洗い物をお願いできますか ?」
私はコクリとうなずくと台所に向かいました。
案の定、流し台の上は汚れた食器が山積みになっています。
(…… 汚れ )
 ガラガラガラガラ ………
 ガコンガコンガコン ……
「…… うふ、きれい 」


「 え? もう済んだんですかぁ ?  やっぱりセリオさんは凄いですぅ 」
マルチさんはポンと小手を叩かれて喜んでくれました。
「 それじゃあ、次は掃除機で床を綺麗にしてくれませんか ?」
「…… そうじき 」
「 ハイ。ブオォォって余計なゴミを吸い取って欲しいんですぅ 」

私は物置に向かい掃除機を取ってきました。
そしてコンセントを差し込んでスイッチを入れてあげます。
 ポチッ
 ブオォォォォ ………
掃除機が吸い込みを始めました。
 ブオォォォォ ………
「………」
 ブオォォォォ ………
「………」
 ブオォォォォ ………
「………」
 ポチッ
 ヒュルルルル ………
掃除機の吸い込みが止まりました。
「………」
 パカッ
 かちゃかちゃかちゃかちゃかちゃ ……
 バタン
「………」
 ポチッ
 ズゴゴゴゴゴッッッ !!
再び掃除機が吸い込みを始めました。
 ズゴゴゴゴゴッッッ !!
「…… うふ 」
 ベキッ バキバキッ …… ズキュルルルル
「…… うふふ 」
 ガシャ ドキャッ ……… バキュルルルル
「…… うふうふふ 」
 ポチッ
 ギュルルルル ………
掃除機の吸い込みが止まりました。
「……… きれい 」


「 わぁ、もう終わったのですかぁ ? やっぱりセリオさんは凄いですぅ 」
マルチさんはポンと小手を叩かれて喜んでくれました。
「 それじゃあ、今度は荷物の整理をして頂けませんか ?」
「…… せいり 」
「 ハイ。ゴミをポイッと捨てて部屋を綺麗にして欲しいのですぅ 」

私は部屋の中央まで来ると、くるりと回りを見回しました。
… たんす たな つくえ いす てぇぶる そふぁ てれび うえき
… ざふとん じゅうたん かぁてん すたんど でんわ すとぉぶ
… えあこん せんぷうき でんきがま くっしょん れいぞうこ
… だいざ かぁぺっと びでお たたみ こたつ とだな かうんたぁ
ふと私はもう掃除する荷物などないことに気付きました。
そして私は、足元にひとつ置かれている掃除機を見ました。
「…… うふふ、きれい 」


私は再びマルチさんのところに行きました。
するとマルチさんも窓の掃除が終わったところでした。
マルチさんは私がいてくれたおかげで助かったと言ってくれました。
「 おーい、マルチぃ〜。そっちはどうだぁ〜〜 」
二階の窓から乗り出すように浩之さんが声をかけてきました。
マルチさんは大声で「浩之さーん、終わりましたよぉ〜」と返していました。
浩之さんは大変嬉しそうにマルチさんと私にお礼を言ってくれました。
「 また頼むなぁ〜〜 」
マルチさんは嬉しそうに「また来ますぅ」と言われていました。
浩之さんは微笑んで「おう」いました。
私もマルチさんに合わせて「また来ます」と言っておきました。
浩之さんは引きつり顔で「おう」と言いました。
あまり好意をもたれていないようですが構いませんでした。
どうせもう二度とここに来ることはありえないのですから。


帰り道。
緩やかな春の風が吹きました。
どこかで小鳥の鳴く声が聞こえます。
どこかで幼児たちの笑い声が聞こえます。
どこかで悲しみに溢れた悲鳴が聞こえます。
「… もう春ですね 」
マルチさんは晴れた空を見上げながら言いました。
「…… そうですね 」
私も一緒に雲一つない青空を見上げました。
私はこの優しき親友と共に、いつまでも空を見上げていました。



                                                   < 終劇 >
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こんにちは、まさたです。
マルセリの第4話『 お掃除 』をお届けしました。
最後まで読んで頂けました方々、どうもありがとうございます。
楽しんでいただけたなら幸いです(笑)
最近、マルセリでこの語り口調が気に入っているまさたです(笑)
これからのマルセリはこんな形で行こうかと思っています。
久々野さま、爆笑ギャグものとは少し離れてしまいそうですが、許して下さいね。
すみません。
では(笑)