歌劇「シンデレラ」『痕偏』最終幕 投稿者:まさた
 歌劇:シンデレラ『痕偏』    脚本/監督:まさた

『最終幕:ガラスの靴』

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            :
語部/初音  :「…夜が明けました。いつものように日が昇り始め、
            : いつものように川の水は流れ、いつものように風
            : が丘を吹き抜けます。変わらない日常、変わらな
            : い生活。まるで、昨夜のことは夢物語だったので
            : はないか?と思えてきます。しかし、シンデレラ
            : は思うのです。例え夢であったとしてもいい、私
            : の心の中では王子様と楽しいひと時を過ごしたの
            : だから、と」
            :
            :
            :<全身包帯とギブスのシンデレラ、ベットで登場。
            : 舞台中央に移動する>
            :
            :
            : カラカラカラカラ………ぴた
            :
シンデ/耕一:「……うー………」
語部/初音  :(…なに? お兄ちゃん……)
シンデ/耕一:「…うー…うー……」
語部/初音  :(…うん、ここは舞台だよ。……大丈夫! 病院の方
            : はうまくしておいたから…)
シンデ/耕一:「うーうー…うーうーうー…」
語部/初音  :(…クスクスッ。…うん、集中治療室から抜け出す
            : のは、ちょっと大変だったけどね。みんなで協力
            : しあったて頑張ったんだ……クスッ)
シンデ/耕一:「うーうー…うー……」
語部/初音  :(うん、初音もお兄ちゃんに、そんなに喜んでもら
            : えて、とっても嬉しいよ…)
シンデ/耕一:「…うー……うーうーうー…」
語部/初音  :(……わかってるよ。お兄ちゃん、途中でお芝居を
            : 止めたりしたくないって言っていたもんね……)
シンデ/耕一:「…うーうー……うー…」
語部/初音  :(うん、初音はお兄ちゃんの味方だもん。…大丈夫、
            : 初音もフォローするから、お兄ちゃんもお芝居の
            : 方、頑張ってね……)
シンデ/耕一:「うーうー…うーうー…」
            :
            :
            :<継母、二人の義姉登場。シンデレラに近づく>
            :
            :
継母/千鶴  :「……シンデレラさん、様態はどうですか? お部屋
            : の空気の入れ替えをしましょうか?」
義姉2/楓  :「シンデレラさん、具合の方は大丈夫ですか…?」
シンデ/耕一:「………うー…うー」
義姉1/梓  :「…シンデレラ、ゴメンな……。今まで辛く当たっ
            : ちゃっていて。お前が倒れてみて初めてわかった
            : んだ。シンデレラが私たちにいかに必要な人かっ
            : てことがさ……」
継母/千鶴  :「本当に今までゴメンナサイね、シンデレラさん…」
シンデ/耕一:「……うーうーうー…」
声          :「……お取り込み中、すみません。…あの、こちら
            : に柏木耕一くんはいらっしゃいますか……?」
            :
            :
            :<役人登場。舞台中央にやってくる>
            :
            :
継母/千鶴  :「…はい? どちら様でしょうか?」
役人/長瀬  :「ああ、申し遅れました。…私は県警の長瀬と言う
            : 者です…」
            :
            :
            :<役人の名刺を受け取る継母>
            :
            :
継母/千鶴  :「……はぁ、お役人の方ですね。それがいったい、
            : 何のご用件でしょうか?」
役人/長瀬  :「いえ、柏木耕一君に、ちょっと幾つかお尋ねした
            : いことがありましてねぇ……」
継母/千鶴  :「……はぁ…」
役人/長瀬  :「…彼が、そのぅ、柏木耕一くんですか?」
継母/千鶴  :「……ええ、そうです。今はシンデレラ役です」
シンデ/耕一:「…うーうー……」
役人/長瀬  :「ああ、そうそう、シンデレラでしたっけね。……
            : ふーむ、えぇと詳しいことは知らないんですが、
            : いいんですかね? 彼はこんなところにいて……。
            : 見たところ、かなりの重傷そうですが……」
継母/千鶴  :「…ええ、私も強く反対したのですが、本人がどう
            : してもって聞かないものですから………」
シンデ/耕一:「…うーうー…うーうー…うー」
役人/長瀬  :「……そうなんですか。彼は、その…しゃべれるん
            : ですかね? こんな状態で……?」
継母/千鶴  :「もちろん、しゃべれません。全身に包帯とギブス
            : が、巻き付いていますから」
役人/長瀬  :「…………」
継母/千鶴  :「…でも、私たちには解るんです。耕一さんが言い
            : たいことが……」
役人/長瀬  :「………はぁ…」
義姉2/楓  :「……あのぅ、うまく言えないんですけども……。
            : 付き合っていくと、この人がいま何が欲しいのか、
            : とか、何をしてもらいたいのか、ってのが解って
            : くると思うのです。……テレパシーというのとは、
            : ちょつと違うのですけど…その、わかるんです…」
シンデ/耕一:「…うーうー……うー…」
役人/長瀬  :「…………」
継母/千鶴  :「……あの、なかなか理解して頂けないと思います
            : が、私たちの耕一さんを思う気持ちが、彼の心と
            : 通じているのです……」
役人/長瀬  :「…フム。まあ、そういうこともあるんでしょうね」
シンデ/耕一:「…うーうーうーうー…」
義姉2/楓  :「…うふふ。…耕一さんも、理解して頂けて喜んで
            : います……」
役人/長瀬  :「………そうですか…」
シンデ/耕一:「うーうー……」
役人/長瀬  :「…………」
            : 
義姉1/梓  :「…それで、長瀬さんだっけ。いったい、何の用で
            : ここに来たんだい?」
役人/長瀬  :「おっと、これは失礼。実は、昨晩に城で行われた
            : 舞踏会で、ちょっとひと騒動ありましてね……。
            : まあ、そこから行方不明になった、とある女性の
            : 捜索をしているってところなんですよ…」
義姉1/梓  :「…とある女性?」
役人/長瀬  :「はい。それで、こちらとしては、ぜひ捜査に協力
            : して頂きたく……」
継母/千鶴  :「……それで、その女性という方は、どういった方
            : なんですか?」
役人/長瀬  :「えぇ。それは捜査の段階なんで、ちょっとまだ、
            : お教えすることはできないんですが……」
義姉1/梓  :「そんなんじゃ、こっちだって協力のしようがない
            : じゃないか!」
役人/長瀬  :「あ、いえ、なにねぇ。実はある程度の物的証拠や
            : 証言なんかも揃ってましてねぇ。その人物の目星
            : も凡そは付いているですよ……」
義姉1/梓  :「それだったら、早くそいつを捕まえればいいじゃ
            : ないか!」
役人/長瀬  :「はい、えぇ。そうしたいのはヤマヤマなんですが、
            : いわゆる決定的な証拠ってヤツが、その、不足し
            : てましてねぇ……」
義姉1/梓  :「決定的な証拠……?」
役人/長瀬  :「はい…あっ、これなんですがね…。うちの若い者
            : が担ぎ込まれた時に、握り締めていたモノなんで
            : すよ」
義姉1/梓  :「これは……ガラスのくつ…?」
役人/長瀬  :「………そうです…」
継母/千鶴  :「……つまり、これを私たちに履いてもらいたい、
            : と言うことですか?」
役人/長瀬  :「あ、いえいえ。皆さんのお手まで、わずらわせる
            : 事はないですがね……ただ、そちらの柏木耕一君
            : に、試着して頂けたらと思いましてね……」
継母/千鶴  :「シンデレラに、ですか?」
役人/長瀬  :「………そうです…」
            :
義姉2/楓  :「…そんな、無理です。だって、シンデレラは全身
            : が包帯とギブスで、とても靴なんて履ける状態じ
            : ゃないですから…」
継母/千鶴  :「……そうね。カナヅチかカナビキで足のギブスを
            : 取らないと、とても靴なんて履くことは……」
シンデ/耕一:「…うー…うー…」
継母/千鶴  :「…え? シンデレラさん、いくらなんでも、そんな
            : ことは……」
役人/長瀬  :「……あの、失礼ですが、彼は今、何と言ったんで
            : しょうか…?」
継母/千鶴  :「あ、…はい。あの、足のギブスを取ってくれと…」
役人/長瀬  :「……ほぅ…」
シンデ/耕一:「うーうー…うー…」
役人/長瀬  :「…これは、何と言われているんですか?」
継母/千鶴  :「はい…。私も捜査に協力したい、と……」
シンデ/耕一:「うーうー……うーうー」
継母/千鶴  :「ですが……わかりました。伯父様に似て、耕一さ
            : んも言い出したらきかないですから…ね」
義姉2/楓  :「……これ、ノコギリ、持って来たよ……」
継母/千鶴  :「ありがとう。それじゃ、これで切断しますからね」
シンデ/耕一:「うーうーうーうー」
継母/千鶴  :「…はい。足まで切らないようにしますから…フフ」
シンデ/耕一:「うーうーうーうー」
役人/長瀬  :「……あのぅ、くり返し失礼なんですが……」
継母/千鶴  :「……はい、なんでしょう……?」
役人/長瀬  :「………いえ、何でもないです…」
継母/千鶴  :「…そうですか? …それじゃあ、シンデレラさん、
            : いきますね…」
シンデ/耕一:「うーうーうーうー」
役人/長瀬  :「…あのぅ、その何度も失礼なんですが……」
継母/千鶴  :「…はい、なんでしょう……?」
役人/長瀬  :「………いえ、そのぉ、気を付けて下さい…」
継母/千鶴  :「フフフ…心配して下さって、有り難う御座います。
            : 大丈夫ですよ……足の一本くらい切り落としても、
            : 命に別状はありませんから……」
役人/長瀬  :「…はぁ。いやまあ、そんな事もないんですが……」
シンデ/耕一:「うーうーうーうー」
継母/千鶴  :「ウフフ。本当にそんなことはしませんよ、シンデ
            : レラさん。…安心して下さい」
シンデ/耕一:「うーうーうーうー」
継母/千鶴  :「はいはい、ウフフフ」
役人/長瀬  :「…………」
            :
            : キコ…キコ…キコキコキコキコキコキコキコ
            :
シンデ/耕一:「うーうーうーうー」
            :
            : キコキコキコキコキコキコキコキコキコキコ
            :
シンデ/耕一:「うーうーうーうー」
            :
            : キコキコキコキコキコキコキコ………ポキッ!
            :
継母/千鶴  :「………ふぅ。ギブスが取れました。……お役人
            : さん、ガラスの靴を……」
役人/長瀬  :「……え? あ、はぁ。それでは、さっそく……」
            :
            :
            : ガサガサガサ……………………ピタッ
            :
            :
語部/初音  :「……役人が持ってきたガラスの靴を、シンデレラ
            : が履いてみました。すると、どうでしょう? シン
            : デレラの足は、すっぽりと靴の中に収まるではあ
            : りませんか! 今まで誰の足にも合わなかったガラ
            : スの靴は、シンデレラの足にだけピッタリとハマ
            : ったのです」
語部/初音  :「…そうなのです。このガラスの靴は、シンデレラ
            : がお城で脱ぎ落としてしまった、靴の片一方だっ
            : たのです!!」
            :
役人/長瀬  :「……ふむ、これで決まりましたな…」
継母/千鶴  :「それじゃあ、お役人さん…」
役人/長瀬  :「ええ、私が探していた人物に、間違いありません」
義姉1/梓  :「おい、耕一…じゃなかった、シンデレラ! よかっ
            : たなぁ!!」
義姉2/楓  :「シンデレラさん。おめでとうございます……」
継母/千鶴  :「よかったですわね、シンデレラさん…」
シンデ/耕一:「……うー…うー…」
役人/長瀬  :「……はぁ。それでは、柏木耕一くんを殺人未遂の
            : 容疑で逮捕いたします」
継母/千鶴  :「………やっぱり……」
役人/長瀬  :「…え?」
継母/千鶴  :「……いえ…逮捕…ですか……?」
役人/長瀬  :「…あ、いえ。その、柳川くんがですね、個人的に
            : お会いしたいということですのでね……」
継母/千鶴  :「…柳川さんっていうと、王子様だったですよね?」
役人/長瀬  :「……あのぉ。彼、お借りしていいでしょうかねぇ?
            : 柳川君に会わせてやりたいと思うんで……」
継母/千鶴  :「ええ、もちろんですわ。お役人さん、シンデレラ
            : を無事にお城まで届けてあげて下さいね」
役人/長瀬  :「はぁ……はは、そうさせていただきます…」
シンデ/耕一:「…うーうーうー」
義姉1/梓  :「シンデレラ! 王子と一緒に頑張れよ!」
義姉2/楓  :「シンデレラさん、いつまでもお幸せに…」
シンデ/耕一:「…うーうーうー」
役人/長瀬  :「……はあ、それじゃあ、失礼しますので……」
シンデ/耕一:「うーうーうーうー……」
            :
            : カラカラカラカラカラ………………
            :
            :
            :<シンデレラ、役人に連れられて退場>
            :
            :
義姉2/楓  :「……行ってしまいましたね…」
義姉1/梓  :「……ああ、行っちゃったな……」
継母/千鶴  :「……二人とも、幸せに暮らしていければいいわね」
義姉2/楓  :「…そうですね」
継母/千鶴  :「……それじゃあ、私たちも帰りましょうか」
義姉1/梓  :「そうだな……ヨシ!! 今日の夕飯は、腕にヨリを
            : かけて、美味しいものを作るぞ!!」
義姉2/楓  :「わあぁ、楽しみぃ」
継母/千鶴  :「ウフフ…そうね。それじゃあ、帰りましょう」
            :
            :
            :<継母と義姉たち退場>
            :
            :
            :
語部/初音  :「…こうして、ガラスの靴を履いたシンデレラは、
            : お城に迎え入れられ、王子様と結婚しました。
            : そして、いつまでもいつまでも、王子様と幸せに
            : 暮らしたのでした……おしまい」
語部/初音  :「…皆様、どうもありがとうございました。これで、
            : 最終幕『ガラスの靴』を閉幕、歌劇『シンデレラ』
            : を終幕とさせて頂きます。本当に最後までお付き
            : 合い頂きまして、誠に有り難う御座いました。
            : お帰りの際にはお忘れ物の無いよう、足元にご注
            : 意しながら移動して下さい。本日は、大変ありが
            : とうございました……」
            :
            :
            :
            :<魔女登場。舞台中央に立つ>
            :
            :
魔女/かおり:「……ホント、バカね……」
            :
            :
            :<魔女退場>
            :
            :
            :
            :<フェードアウト>
            :
――――――――――――――――――――――――――――――
<キャスト>
シンデレラ―――柏木耕一
王子――――――柳川警部補
継母――――――柏木千鶴
義姉1―――――柏木梓
義姉2―――――柏木楓
魔女――――――日吉かおり
馬車――――――相田響子
王様――――――小出由美子
役人――――――長瀬係長
語部――――――柏木初音


脚本/監督―――まさた
提供――――――leaf(うそですから(汗))

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 まさたです。
 これで歌劇「シンデレラ」『痕偏』は終わりです。
 最後まで読んで下さった方々に、心からお礼の言葉を言います。
 本当に、ありがとうございました。
 これからも、よろしくお願い致します。



 それでは、簡単な感想です。

【久々野 彰さん】『ド素人 久々野彰インターネット奮闘記』
 これはなかなか役に立ちますね。しかし、モデムには、私も頭を
 痛めています。外国製の28kを購入したら56kで繋がって
 いるので、「やったぁ!」と一人で不気味に小躍りしていたり
 するのですが、これがどうにも本当に56kの速さとは思えな
 かったりします(苦笑) まあ、元は28kなので、文句は言え
 ないんですけどもね(笑) そういえば、最近、インターネット
 の快速ソフトが出回っていますが、アレらは「買い」ですか?
 よろしければ、一つご伝授下さいませ(笑)

【健やかさん】『月の幻惑』 
 夜のあぜ道って、一人だけ取り残されたようで恐いですよね。
 特に何にも無いところほど、逆に何かありそうで嫌ですね。
 でも、芹香ちゃんのような可愛い女の子と出会うことができる
 んなら、その辺を走りまわってみます(笑)

【ひめろくさん】『五月雨の涙』
 小さな頃、女の子の持つビー玉が綺麗で、ことある毎に貰って
 来ては、箱の中に集めていた記憶があります。セリオの思い出も、
 箱一杯にあふれるビー玉のようになればいいなと思います。
 あと、最後の「久しぶりに煙草でも……」のところが、ひめろく
 さんの思い入れの現われのような気がしました。(違うかな?)

【無口の人さん】『せばすちゃんとことり』
 この作品は文部省推薦図書に推薦されました(←うそです(笑))
 こういった作品は好きです。セバスチャンのセンチな心を見せて
 もらいました(笑) 次回作品を期待しています。

【無駄口の人さん】
 初音ちゃん……ですか………あは、あはははは、気のせいですよ、
 気のせい……え? そうは思えないって? あはははは……(大汗)
 えーと、そう! 貴之でしたね。その時はどうでしょう??
 もち、柳川の態度は変わるでしょうね。物語は正統派になるかも。