歌劇:シンデレラ『痕偏』 脚本/監督:まさた 『第1幕:シンデレラ』 ―――――――――――――――――――――――――――――― : 語部/初音 :「…昔むかしのことです。あるところに、『シンデレ :ラ』という娘がいました。シンデレラは、快活で器 :量も良く、また、とても美しい娘でした…」 : : :<シンデレラ登場。舞台中央で雑巾がけをする> : : シンデレラ :「…………」 語部/初音 :「…………」 シンデレラ :「…………」 語部/初音 :「…………」 シンデレラ :「…………」 : 語部/初音 :(…お兄ちゃん…) シンデレラ :(…………) 語部/初音 :(…耕一お兄ちゃんってば…) シンデレラ :(……初音…ちゃん……) 語部/初音 :(耕一お兄ちゃん、セリフセリフ!) シンデ/耕一:(…あ…ああ……) 語部/初音 :(…………) シンデ/耕一:(…………) 語部/初音 :(……お兄ちゃん…大丈夫……?) シンデ/耕一:(…ああ…大丈夫だけど……。……だけど、なんで :俺が…シンデレラの役なんだろうか、と考えちゃっ :てね……) 語部/初音 :(…それは……しょうがないよ。だって、みんなで :公平にあみだくじで決めようって言ったのは、耕一 :お兄ちゃんなんだし……) シンデ/耕一:(…うん…頭では、わかってはいるんだけれど……) 語部/初音 :(……お兄ちゃん……) シンデ/耕一:(………うん…) : シンデ/耕一:「…わぁ…、…わぁ……、……わぁたしの名前わぁ、 :しん……シンデ………シンデレラあぁぁぁぁ…」 : 語部/初音 :(……お兄ちゃん…顔が引きつってる……) シンデ/耕一:(…ううぅぅぅ…) : シンデ/耕一:「わ、私の名前はぁ、シン…デレラぁ。いつもお継 :母さんやお義姉さんたちにぃ、い、いじめられてい :て、不幸で可哀相な、お、お、女の子ぉなのぉぉぉ」 : 語部/初音 :(お兄ちゃん!頑張って!!) : シンデ/耕一:「でもぉう、負けな、ないわぁぁぁ。は…はく…白 :馬に乗った、おぅ、おう、王子様が、迎えに来てく :れると信じているんだ、だぁ、だものぅ!!」 : 語部/初音 :「…そうなのです。美しいシンデレラは、その美し :さを妬んだ継母や義姉たちに、いつもいつもいじめ :られているのでした」 : : :<二人の義姉の登場。シンデレラに近づく> : : 義姉1/梓 :「よぉっ、こーいちぃ。似合っているじゃない、そ :の格好!」 シンデ/耕一:「ビクッ!! あ、梓!! 何でお前が……」 義姉1/梓 :「何でって、くじで決まったじゃないか。それより、 :その格好。ぷっくっくっく、よぉぅく似合っている :ぜ、耕一、あははははは」 シンデ/耕一:「わっ、笑うな!!俺だって好きで、こんな格好し :ているワケじゃあッ…!」 義姉1/梓 :「なに言っているんだよ、誉めているんだぜ、くっ :くっく。もう最高だよなぁ、楓」 義姉2/楓 :「…ええ、本当にお似合いですよ、耕一さん、クス :クスッ」 シンデ/耕一:「…か…楓ちゃんまで……」 義姉2/楓 :「ご、ごめんなさい、耕一さん。……でも、本当に :……クスクスクスッ」 シンデ/耕一:「ガガーーーーン!! …ううぅぅぅ、俺…もう立ち :上がれないかも……」 : 語部/初音 :(…お兄ちゃん、しっかりして) シンデ/耕一:(…ううぅぅ、初音ちゃん……俺、もう…) 語部/初音 :(元気だして、お兄ちゃん。初音、お兄ちゃんのこ :と絶対に笑わないよっ。それに千鶴お姉ちゃんだっ :て、耕一お兄ちゃんのこと、ちっとも笑っていない :し…) シンデ/耕一:(…………) 語部/初音 :(……お兄ちゃん……) シンデ/耕一:(……初音ちゃん…。ありがとう。) 語部/初音 :(…耕一お兄ちゃん…) シンデ/耕一:(…そうだよな、俺にはまだ、初音ちゃんや千鶴さ :んがいるんだもんな…) 語部/初音 :(そうだよ、初音も千鶴お姉ちゃんも、お兄ちゃん :の味方だよ!) シンデ/耕一:(そうだよな…うん…) : 声 :「…シンデレラさん!!そんなところでこそこそと :何をやっているのッ!!」 シンデ/耕一:「…えっ!?この声って、まさか……」 : : :<継母登場。シンデレラに近づく> : : 継母/千鶴 :「シンデレラさん!なに怠けているの!?お掃除は :ちゃんと終わったのでしょうね!!」 シンデ/耕一:「ち、千鶴さん…。千鶴さんが継母なワケ。てっき :り王子役だと思っていたのに…ははは」 継母/千鶴 :「なに分けのわからないことを言っているの、シン :デレラさん! ところで、お掃除の方は、きれいに :出来たのでしょうねぇ?」 義姉1/梓 :「あーあ。千鶴姉ったら、『私にはこんな役できなぁ :ーい』なーんて言っときながら、一番なりきってい :るんだもんなぁ」 継母/千鶴 :「おだまり、梓!! それよりも、シンデレラさん!」 : : :<継母はセットの窓枠を人差し指でつつぅと撫でる。 :そして、指に埃がたまったのを確認する> : : 継母/千鶴 :「……シンデレラさん。なに?この汚れは!?ちっ :とも綺麗になっていないじゃないの!!」 シンデ/耕一:「あ、いや、千鶴さん、ねぇ…」 継母/千鶴 :「なに?シンデレラさん。それとも継母である私の :言うことが、聞けないっていうのかしら!?」 シンデ/耕一:「い、いや、別に、そう言っているワケじゃあ…」 継母/千鶴 :「……そう、私の言うことが、聞けないっていうの :ね……。……やっぱりあの時、殺しておくべきだっ :たのかしら。……ねぇ、耕一さん……フフフ」 シンデ/耕一:「ハイッ!! やります、千鶴さん! やります、や :らせて頂きますうぅっ!!!」 継母/千鶴 :「あら、そう? 良い子ね、シンデレラさん。それじ :ゃ、今晩はお城で舞踏会があるから、私たちが帰っ :て来るまでに、隅から隅まで綺麗にしておくのよ、 :わかった?」 シンデ/耕一:「わっ、わっ、わかりました!!」 継母/千鶴 :「フフフ、本当に良い子ね、シンデレラさん。それ :じゃあ、梓、楓。お城に行くわよ!!」 義姉1/梓 :「お、おう。それじゃ、耕一。あとヨロシクなっ!」 義姉2/楓 :「それじゃあ、耕一さん。またお城で、会いましょ :う」 継母/千鶴 :「おほほほほほ……」 : : :<継母、二人の義姉、退場> : : シンデ/耕一:「…………」 シンデ/耕一:「…………」 シンデ/耕一:「…………」 : : 語部/初音 :「…こうして、継母と義姉たちは、お城の舞踏会に :出かけてしまいました。それて、シンデレラは一人、 :家に残されてしまったのです。さてさて、このあと、 :シンデレラはどうなるのでしょうか?続きは、第2 :幕『舞踏会』で行います。それでは、第1幕『シン :デレラ』はこれで閉幕します。みなさま、どうもあ :りがとうございました」 : : シンデ/耕一:「……もう、ヤダ……」 : : :<フェードアウト> : ―――――――――――――――――――――――――――――― <キャスト> シンデレラ―――柏木耕一 継母――――――柏木千鶴 義姉1―――――柏木梓 義姉2―――――柏木楓 語部――――――柏木初音 脚本/監督―――まさた 提供――――――leaf(うそ)