河原の土手で片足の膝を抱えて座っている姿。 見覚えのある寺女の制服。 こんな場所では似合わないのに、その違和感が感じられない。 スカートの丈が短いのにそんなに脚をあげたら、見えるぞ。 「…何見てるの」 げ。 この完璧な隠行の術をみやぶるとは! 「流石わ綾香と誉めておこう」 「…頭に木をくくりつけて伏せてりゃ、誰だって判るわよ」 彼女はそれでも立ち上がろうとせず、にっと猫のような笑みを浮かべている。 挑発か? 時々判らなくなる。 「だから、いつまで伏せてるの」 やばい。目つきが変わった。 俺は慌てて立ち上がって身体の埃を落とす。 「え、いや、あははは。たまには変わった現れ方してみようかな?とか」 いかん、目がまぢだ。 そんなに怒らせるような事したのかな… 「浩之」 がし 両肩をぐわしとつかまれる。 「こら、ぐわしは版権違反だぞ、ちゃんと許可をとってだな」 「いいこと?敵はいつ攻めてくるのか判らないの。隠れるならもっと自然に、利用する物を考えないと」 …綾香? 俺が呆気にとられているのを良いことに、説明を続ける。 「こんな土手なら顔に泥を塗りたくるとか」 と、むき出しの地面を指さす。 「あ、あのー」 「第一芝ぐらいしか生えてないところに枝は変でしょ」 「綾香さん?」 だが、えんえん綾香の話は続いた。 「いい、だから…」 だが、そこに救世主が現れた。 「綾香お嬢様?」 「あ、セバスチャンだ」 一瞬凄い顔の綾香が見えたような気がした。 だがそれもつかの間だった。 轟 その時彼女はは風になった。 にじんでいく姿が… やがて、風景にとけ込んで、完全に姿を消してしまった。 「しまった、また逃したか。セバスチャン一生の不覚」 一瞬不審そうなめで俺をにらむと、再び叫びながら走り去っていった。 「大変だなぁ」 「わかった?」 「うわあっ、どっから出てきやがった!」 「その場にある物を利用して隠れる。基本中の基本よ。このぐらいマスターしなきゃ」 彼女は人差し指をくいっと横に向けてウインクした。 …泥だらけの顔で、埃を飛ばす服をはためかせて。 大変だなぁ、と思った。 いや、綾香ではなくて、セバスチャンが。http://www.interq.or.jp/mercury/wizard/index.htm