プレステ版?「競作シリーズその弐 日々野 英次 VS AIAUS お題:綾香」 投稿者:日々野 英次 投稿日:6月3日(土)20時26分
 河原の土手で片足の膝を抱えて座っている姿。
 見覚えのある寺女の制服。
 こんな場所では似合わないのに、その違和感が感じられない。
 スカートの丈が短いのにそんなに脚をあげたら、見えるぞ。

「…何見てるの」
 げ。
 この完璧な隠行の術をみやぶるとは!
「流石わ綾香と誉めておこう」
「…頭に木をくくりつけて伏せてりゃ、誰だって判るわよ」
 彼女はそれでも立ち上がろうとせず、にっと猫のような笑みを浮かべている。
 挑発か?
 時々判らなくなる。
「だから、いつまで伏せてるの」
 やばい。目つきが変わった。
 俺は慌てて立ち上がって身体の埃を落とす。
「え、いや、あははは。たまには変わった現れ方してみようかな?とか」
 いかん、目がまぢだ。
 そんなに怒らせるような事したのかな…
「浩之」

  がし

 両肩をぐわしとつかまれる。
「こら、ぐわしは版権違反だぞ、ちゃんと許可をとってだな」
「いいこと?敵はいつ攻めてくるのか判らないの。隠れるならもっと自然に、利用する物を考えないと」
 …綾香?
 俺が呆気にとられているのを良いことに、説明を続ける。
「こんな土手なら顔に泥を塗りたくるとか」
 と、むき出しの地面を指さす。
「あ、あのー」
「第一芝ぐらいしか生えてないところに枝は変でしょ」
「綾香さん?」

 だが、えんえん綾香の話は続いた。
「いい、だから…」
 だが、そこに救世主が現れた。
「綾香お嬢様?」
「あ、セバスチャンだ」
 一瞬凄い顔の綾香が見えたような気がした。
 だがそれもつかの間だった。

  轟

 その時彼女はは風になった。
 にじんでいく姿が…
 やがて、風景にとけ込んで、完全に姿を消してしまった。
「しまった、また逃したか。セバスチャン一生の不覚」
 一瞬不審そうなめで俺をにらむと、再び叫びながら走り去っていった。
「大変だなぁ」
「わかった?」
「うわあっ、どっから出てきやがった!」
「その場にある物を利用して隠れる。基本中の基本よ。このぐらいマスターしなきゃ」
 彼女は人差し指をくいっと横に向けてウインクした。
 …泥だらけの顔で、埃を飛ばす服をはためかせて。

 大変だなぁ、と思った。
 いや、綾香ではなくて、セバスチャンが。



http://www.interq.or.jp/mercury/wizard/index.htm