じーっと見る。 左右を見てから、ゆっくり人差し指を伸ばす。 きょろきょろ。 じーっ。 どきどきどき。 『気を付けろよ』 確か、誰かがそんなことを言っていた。 赤い、赤い、赤い四角の箱。 最近それに魅せられている。 きょろきょろ。 じーっ。 どきどきどきどき 「先輩」 どきっ 「火災報知器を押しちゃ駄目だぞ」 … 「え?校内にある報知器のどれかは自爆スイッチだ?…何の漫画を見たんだ」 …… てへ。 しばらく火災報知器の周辺で先輩を見かけたが、その間一度も火事は起きなかった。 そんな、ある昼下がり。 「よ、先輩。もう火災報知器はいいのか?」 こくこく。 …… 「…え?新しいどきどきをみつけましたって?え?なに?その手に持ったボタンは」 ……にっこり 「ひ、秘密?え?な、何のボタンなんだよ、一体っ」 芹香が真っ黒い小さな箱の上に乗った、赤いボタンを押したのかどうかは定かではない。 <おしまい>http://www.interq.or.jp/mercury/wizard/