刺身皿  投稿者:日々野 英次


 俺の名は藤田。藤田浩之。思ったことは実行に移さなければ終わらせられない不幸な男。

 浩之は腕を組んで悩んでいた。
「どうしたの、浩之ちゃん」
「うわぁって、なんだあかりか」
 あかりは戸惑ったように困った表情をする。
「え、ぇ?だって浩之ちゃん、悩んでるから」
「あ、ああ、いや、お前には関係ないから」
 浩之は大慌てで逃げるように離れた。
 あかりは首を傾げた。

 ふー、危なかったぜ。見つかるととんでもないことになるからな。
「何がアブナイんデスか?」
「ふぅわああああっ、って、なんだ、レミィじゃねえか」
 飛び上がりそうになるのを必死に堪えて浩之は言った。
「Oh!yes.ヒロユキ、逃亡者デース」
 ううむ、あながち間違いではない。会話の流れが無茶苦茶だが。
「俺は急いでいる。じゃ」
「捕まったら殺さレルから、頑張って逃げて下さいネ」
 …何か勘違いしている。

 いやぁ、しかし今のは…思わず想像しちまって…
 ………
「ぐは」
「何一人で鼻血だしてん」
 呆れた声で言いながら、さりげなく(つーかぎこちなく)ティッシュを出すいいんちょ。
「お、さんきゅ」
 鼻血を吹きながら(ばか、吹いてどーする!)もとい、拭きながら智子の顔を見る。
「何か用か」
「…別に。あほが勝手に鼻血出してるから、死ぬ前に助けたろ思ただけや」
 ふん、と鼻を鳴らして去っていった。

 …ううむ…
 でも、やっぱ…普通の人間だとなぁ…
 ポケットティッシュは既に空になっていた。
「あー浩之さーん」
  とてとてとて
「あう、浩之さん、お顔が悪いですぅ」
「馬鹿、それを言うなら顔色が悪いだろう」
「あううううう」
 …マルチじゃ、面白くないし…
  !
「そうだマルチ、おまえ、体温とかどうなってるんだ?」
 マルチは少し首を傾げてたどたどしく説明を始めた。
「え〜とですねぇ、普段はコンピュータとかの排熱と、燃料電池が内蔵されているんですけど、
それが稼働した場合とがあります」
 …ラジエータとかヒートシンクつければあるいは…

  にやり

「あーうー…浩之さんこわいですぅ」
  何やら思いついた彼は、むんずと彼女の手を掴んだ。
「怖くないから怖くないから」
 マルチは引きずられるようにして、連れて行かれてしまった。

 マルチは硬いテーブルの上に横たえられている。
「ふぅさぶあ!」
 何語だ。
 頭は氷が被せられて(っておい)、背中には水の通る金属製の管が当たっている。
 んでもって、真っ裸。
「なにするんですかひろゆきさん!」
 声が裏返っている。浩之は意に介さず彼女のおなかに手を当てる。
「おお、やはり十分冷えてる」
 いいながら刺身を乗せていく。
 何の苦労もなく(だってぺったんこだから)盛りつけ終わる。
「うむうむ。汗だって蒸留水だし、やっぱこれかね」
 想像通り面白みのない女体盛りの出来上がりだ。
「よし、実験は終了だ、早速…」

  ばきゃん

 その時大きな音を立てて扉が砕けた!
 蹴り足をあげた格好のままの綾香と、ぼーっとしたセリオが立っていた。
「なにやってんのよ」
  ぎくり
「なにって、ほら、よく言うじゃないか、女体盛りは男の夢だって」
 後ろにさがりながら浩之はよく分からないことを言う。
「へぇえ、そぅなの」
 指をばきばき鳴らし、つり目をさらに吊りあげて、綾香は浩之を見下ろした。
「いや俺はそれにマルチじゃなくてセリオに…」
「よけー悪いわ!」

  合掌。

 !注意! 急激にコンピュータ類を冷やしたり、冷えた場所から暖かい場所には持っていかないようにしましょう。
     結露して壊れちゃいます。


      ―――――――――――――――――――――――

 いえ別に悪気はないです。

>川村飛翔サマ
 心に留めておきましょう。
 神にもとい紙に印刷する場合とは勝手が違って難しいですね。

 >『悲劇の始まり』
  …誰?(笑)
  だいたいの予想では…
  敢えて次回を待ちます。

>vladサマ
 とうとう浩之の出番ですね。
 引きますねー。早く書いて下さいね。
 でも、どうやったら浩之があんなにガラ悪…失礼、野性的なSSが書けるのですか?
 『関東藤田組』なんかは特にそーですね。