まじかる☆クール 投稿者:はむらび 投稿日:6月25日(日)18時04分

「ねぇねぇけんたろ。これって何て書いてあるの?」
「ん? どれどれ――」
 スフィーが指したのはHONEY BEEの窓ガラスにある貼り紙だった。
 そこには、


『冷やしホットケーキ始めました』


 カランコロン……。

「いらっしゃーい」
「……なぁ結花。オモテに張り出されてたアレ、何の冗談だ?」
「ああ、アレ? 夏の新メニューなのよ。まさか、喫茶店が冷やし中華始める
 ワケにもいかないじゃない? だから冷やしても違和感がないのを冷やして
 みたんだけど」

『冷やし』と『ホット』の組み合わせで違和感ありすぎ。

「それで、注文は何にする?」
「そうだな。ナポリタンと――」

「冷やしホットケーキ!!」

「おっけー、ナポリタンと冷やしホットケーキね。ちょっと待ってて、すぐ作
 るから」
 そうそう。冷やし――。
「ちょっと待て結花! 今のナシ! 白紙撤回を求めるっ!」

 そのほうこうにはだれもいない。

 俺はスフィーをにらんだ。
「……あのな、スフィー」
「なーに? けんたろ」
「変なモノ注文するなぁっ! だいたい、ホットケーキを冷やしたらどんな味
 になると思ってるんだ?」
「ん〜……。でも、ホットケーキには違いないんでしょ?」
 貴様ホットケーキなら何でもいいのか。

 ・
 ・
 ・

「はい! ナポリタンと冷やしホットケーキの十段重ねお待ち!」
 しばらくして、結花が件の冷やしホットケーキを持ってきた。
 さぁ、鑑定の結果はっ!!


 凍ってました。
 そりゃもうバナナが打てそうなくらいに。


 ちなみに、メイプルシロップの代わりにかき氷用のいちごシロップ、バター
の代わりにアイスクリームが乗っかっている。

「いっただっきまーーーす!!!」
 しゃりしゃりがりがりしゃりしゃりがりがり。

 食ってるよ。スフィーのヤツ。冷やしっつーか冷凍ホットケーキを。
「うっ!」
 突如、スフィーが頭を押さえてかがみ込んだ。
「おい! どうした!?」


「……頭がキーンっていってるよぅ〜」
 そらそーやんなぁ。


          ***************


『冷やし修繕始めました』

「おや。健太郎君いらっしゃい」
「……長瀬さん。オモテの張り紙は何なんですか?」
「いえね。最近骨董の世界で骨董品の温度が評価の対象になり始めているとい
 う噂がありましてね、それに先駆けて始めてみたんですが」

 んなの某志保ちゃん情報並に信用できねぇ。

「ところで健太郎君。君は、こういうモノに興味はありますか?」
 そう言って長瀬さんが指さした先にあったのは、


 コンビニの冷蔵ケース。


「どうです? コレがあれば一定の温度を保ったままで品物を陳列しておくこ
 とが出来ますよ。君さえよければ――」

「いりません」(0.5秒)

「えーっ? けんたろ、なんで? どうして?」
「当たり前だろスフィー。こんな使い道のないモノ買ってどーするんだ?」

「使い道ならあるよ! 例えば、お子魔女プリンをいーっぱい並べておくとか、
 お子魔女ゼリーをいーっぱい並べておくとか――」

 ちょっぷでぺしっ。
「あほっ」
「うりゅ〜……」

 ・
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 ・

「それじゃあ、今日はこの辺で……」
「はいはい。あ、そういえば最近の骨董の流れなんですが……」

 ・
 ・
 ・

 今は摂氏18度の骨董品に注目が集まってるのか。
 ……参考にもなりゃしねぇ。


          ***************


『冷やし古物あります』


 フリマで何を冷やしてるんだオイ。

「あ、若旦那。ちょうどいい所に来ましたね。実はこういうの仕入れたんです
 けどね」
 するとにーちゃん、後ろの冷蔵庫から何かを取り出す。

「どうです? よーっく冷えた金属探知器! コレさえあれば野バスのバス停
 や装甲車、はてはV33コングだろうとカンタンに見つかりますよ!」
 俺はモンスターハンターじゃないっての。

「あれ? ひょっとして冷やしはお気に召さないんで? だったらこういうの
 もあるんですが――」
 俺が黙ってると、今度は脇に置いた保温ボックスから何かを取り出した。

「これなんかどうです? 人肌に温めておいた成人向けプレミア本ですけど」
 気色悪いわ。

 ・
 ・
 ・

「それならコレはどうですか? インカで発掘されたという氷漬けのミイラな
 んですけど――」
「あのさ」
「はい?」
「悪いけど、今日は何も買わないことにするよ」
「そんなぁ。若旦那――」


「冷やかしは勘弁してくださいよ」


 ぎゃふん。



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