『こみパマスターみずき』 第2話「あの子は無口な女王様!」 投稿者:はむらび 投稿日:3月9日(木)22時55分


『前回のあらすじ』


 本郷猛は改造人間であ

 やりなおし。

 こみっくパーティー。
 全国58億のおたく達の熱い魂が集う場所である。
 しかし、今こみパに魔の手が迫りつつあった。

 サークル「色白い姉妹」。
 彼らはこみパの征服、ひいては世界の征服を企む悪の組織である。

 しかしこれを事前に知った九品仏大志は、現在おたくに染まりつつある大学
生・高瀬瑞希に改造手術を施し、「こみパマスターみずき」として彼女を戦い
に赴かせる。

 そしてこみパマスターみずきは、こみパ会場にて襲いかかってきた色白い姉
妹の手先「マスターピーチ」を退けることに成功する。

「しかし、またいつ第二・第三の刺客がやって来るやもしれぬ。だが、戦え!
 こみパマスターみずき! 負けるな! こみパマスターみずき! おたくの
 未来は君の肩にかかっているのだ!」
「……大志、何ビデオカメラに向かって叫んでるの?」
「知れた事を。ナレーションに決まっておるではないか、同志瑞希よ」



『こみパマスターみずき 第2話・あの子は無口な女王様!』



 日が進んで、今日は前回のこみパから二週間後の土曜日。
 例によって大志が「話しがある」と言ってあたしの部屋に押し掛けてきたの
で、仕方なく話を訊く事にしたが、大志はいきなりビデオカメラを取り出して
ナレーションを始めたので、とりあえず黙って成り行きを見ていた。
 ちなみに今回、大志は天井裏に潜んでいた。

 終わったのを見計らって、あたしから話しを切り出す。
「で、何の用?」
「うむ。実は、この近所に色白い姉妹の手先が潜伏しているとの情報を得たの
 でな。その事を伝えに来たのだ」
「それ、確かな情報なの」
 いきなりそんな事を言われても、ちょっと信用できない。
「ふっ、吾輩を見くびるなよ? なにしろオフィシャルのホームページで確認
 したから間違いは有るまい」
「……は?」
 ちょっと呆気にとられた。でも大志はあたしに構わず話を続ける。
「何を驚いている? 連絡やサポート、あるいは宣伝の為にサークルがホーム
 ページを持つ事など、別に珍しくも無かろう?」

 ……仮にも世界征服を企む組織が、自分たちの活動をおおっぴらにして良い
のだろうか。

「それよりさ、そういうのが有るのってどこで知ったの?」
 当然の疑問をぶつけてみた。
「サーファーズパ○ダイスだ。『色白い姉妹』で検索したら一発で見つかった」

 だから少しは隠せっての。

「それで、その手先ってのはどの辺りにいるの?」
 すると大志は、とたんに顔を曇らせる。
「うむ……、それに関しては流石の吾輩にも判らなかった」
「そっか……」


 ふと、疑問が沸き上がってきた。
「そういえばさ、大志、色白い姉妹の刺客といえば、この間のあさひちゃんは
 どうしたの?」
 実はあの戦いの後、逃げる内に大志達とはぐれてしまったのでその後の詳し
い経緯は知らない。
「うむ、きちんと家に帰したぞ」
「へえー、大志にしちゃ珍しいじゃない。あんたの事だからサインでもねだっ
 たのかと思ったけど」
「いや、
 『一緒に帰らない?』
 と誘ってみたのだが、
 『一緒に帰って、友達とかに噂されると恥ずかしいし……』
 と言われて断られたのだよ」
 ……さいですか。


 その時、大志があたしの方に向き直り真剣な顔つきになった。
「それはさておき。同志瑞希よ、一つ大事なことを言い忘れていたが」
「え? 何か他にあるの?」
「うむ。実はまいぶらざぁ和樹が原稿の執筆に詰まっているのだ」
「……また?」
 あきれつつ訊いてみた。
「まただ。ちなみに今度はペン入れで詰まってるとの事だ。締め切りまで充分
 な時間があるので、安心したまえ」
「……何の事?」
 どうにも大志の言っている事が理解できない。
「知れた事を。つまり、今回も手伝え。という事だ」
 ……そーなのね。あたしにはそれ以外の選択肢は無かったのよね。
 でももう泣かない。
 女が泣いて良いのは、財布を無くした時と母親に殴られた時だけ。
 ってあば○はっちゃくも言ってるし。


 カリカリ……、シャッシャッ……。
 カリカリ……、シャッシャッ……。
 カリカリ……、シャッシャッ……。
 あたしは今、和樹の原稿を手伝っている。
「瑞希」
 ふいに和樹が呼びかけてきた。
「何? 和樹」
「そっちに墨汁無いか?」
「ああ、これね。はい」
 あたしは手元に有った墨汁を渡した。
「サンキュ」


 カリカリ……、シャッシャッ……。
 カリカリ……、シャッシャッ……。
 カリカリ……、シャッシャッ……。
「瑞希」
 また和樹が呼びかけてきた。
「今度は何?」
「悪いけど、ボールペンか何か持ってないか?」
「あ、持ってるけど……」
 ポケットからペンを取りだして和樹に渡す。
「これでいい?」
「オッケー」


 カリカリ……、シャッシャッ……。
 カリカリ……、シャッシャッ……。
 カリカリ……、シャッシャッ……。
「瑞希」
 三度目。
「はいはい。今度は何が欲しいの?」
「いや、そうじゃなくてさ……」
 そう言って、和樹は部屋の隅に居る大志の方を見る。
「なんであいつがあそこにいるんだ?」
「えっ? そりゃあ、あたしは大志に呼ばれたから……」
「そうじゃなくて、何であいつはあそこで見てるだけなんだ?」
 あたしの言葉を遮って、和樹が疑問をぶつけてきた。
「ふっ。吾輩は此処で諸君の仕事ぶりをきちんと見ているので、安心して執筆
 を続けたまえ」
 何故か大志は偉そうに言い放つ。
「大志……、あんたは手伝ってくれないの?」
「いや、吾輩は見てるだけだ」
「……あたしが血ヘドの中を這いずり回っているおかげで、あんたはそこで人
 間以上ってやつを気取ってられるのよ。グ○フィス」
「そう、お前は這いずり回る生け贄にすぎん」
 すると和樹が突然口を挟んできた。
「あのさ、二人とも楽しそうにしてるのはいいんだけど……」
「こんなのと一緒にするなっ!!」

 ドバキィッ!

「げ……、原稿を……」
 あたしに殴られ倒れながらも、和樹はペンを放さなかった。


「あ」
 いきなり和樹が素っ頓狂な声をあげた。
「どうしたの?」
「いや、ペン軸が折れただけだよ。すぐに新しいのと取り替えるさ」
「大丈夫?」
「大丈夫だって。すぐに書けなくなるわけじゃないしな」
 心配そうに訊ねるあたしに和樹は笑顔で答えた。
 だけど、和樹はまた不思議そうな声をあげる。
「ん?」
「何? 今度はどうしたの?」
「いや、このペン軸なんだけどさ、よく見たら、ほら……」
 うながされるままに、あたしは和樹の持っているペン軸を見た。
 しかしそれはペン軸などではなく……、

「アスパラガスなんだよ」

 その通りだった。
 紛う事なくアスパラガスだった。
 360度どこから見てもアスパラガスだった。
 言い訳の余地が無いくらいにアスパラガスだった。

「どうした? 諸君」
 ふと、大志がのんきに訊ねてきた。それに和樹が答える。
「いや、これを見てくれよ。ほら、ペン先だと思ってたのが実はアスパラガス
 だったんだ」
 すると大志は、
「ふむ……、珍しい事もあるものだな」
 と言った。
「一言で片づけるなぁっ!」
「……ん? これは……」
 あたしの抗議を無視しつつ、大志は買い置きの墨汁を手に取って一口なめた。
「これは……、これは墨汁ではないぞ! これはイカスミだ!」
「本当か!? 大志」
 和樹が大志に問いただす。
 しかしそれよりも、ためらうことなく墨汁の瓶の中身をなめる大志の方が気
になった。
 何か言おうとしたあたしの視界の隅にスクリーントーンが目に付いた。いや、
それもやはりトーンではなかった。
「ちょっと二人とも」
「「どうした?」」
 あたしの呼びかけに二人の声が綺麗にハモる。
「これも、よくみたらスクリーントーンじゃなくて、網戸の網よ!」
 すると大志は、
「ふむ……、珍しい事も――」
「いいかげんにしろっ!」

 バキッ!

 言いかけたセリフを最後まで言わずに、大志はマットに沈んだ。


「うーん……。まさか買い置きの画材が、実は画材じゃなかったとは……」
「和樹……、何で今まで気付かなかったの?」
 そこへ大志が話に割り込んできた。
「それよりもまいぶらざぁ、この画材はどこで買って来た?」
「ああ、商店街の画材屋で買って来たんだけど……」
 その言葉にあたしは、何かの予感のようなモノを感じた。
「あっ、あたし急用を思い出したの。ゴメンね」
 言い終わらないうちにあたしは外に飛び出していた。
「おい! 待ちたまえまいしすたぁ!」
 後ろで大志が何か言ってるけど、もうあたしの耳には届かなかった。


 商店街にやって来た。
 目的の店はすぐに見つかった。なにせこの商店街には画材屋は一件しかない。
「ここね……」
 ひとり言をつぶやいてから店内に入った。
「あっ……、……いらっしゃいませ」
 店内に店員とおぼしき女の子がいた。
 その顔には見覚えがある。長谷部彩ちゃん。確か、創作系の同人誌を描いて
いる子だと思う。
「あの……、何かお探しですか……?」
「えっ?」
 考え事をしている最中に、ふいに話しかけられてちょっと戸惑った。
「あ、ち、違うのよ。あたしは買い物に来た訳じゃなくて……」
 しかし彩ちゃんは、あたしに構わずいきなり棚を探り始めた。そして何故か
タタミイワシを持ってこっちを向く。
「あの……、この原稿用紙は、かのグーテンベルグも使ったと言われる由緒正
 しい品なんです……」
「いや……、それ、タタミイワシでしょ?」
「……今なら、おまけとしてこちらの消しゴムも付いてきます……」
「……その消しゴム、どう見てもハンペンなんだけど?」
「しかも……、お値段はセットで10万円と格安です……」
「人の話を聞けっての。しかも全然安くないし」
「……ひょっとして、冷やかしですか……?」
 するといきなり、彩ちゃんの顔が険しくなった。とはいえ、注意しないと気
付かないレベルではあるけど。
「……ここが、色白い姉妹の直営店と知ってて冷やかすんですか……?」


 え?
 ちょっと待って。今、彩ちゃんは確かに『色白い姉妹』って言ったわよね?
だとすると……。
「……そう。私は、表向きはこの画材屋のバイトです……。しかしそれは仮の
 姿。……私の正体は、サークル『色白い姉妹』の直営画材店の経営責任者、
 『静かなる女王の長谷部彩』です……」
 そう言ってから、彩ちゃん……、いいえ、色白い姉妹の手先『長谷部彩』は、
身構えた。
「……ポチ達、出番です……」
 彩ちゃんがそう言うと、店の物陰等から十数人の男達が現れる。
 ……まずい。いくらなんでも数に差がある。
 ここは一旦どこかに隠れて、変身してから戦おう。
 そう思い変身ペンを取り出し……。

「あれ?」

 無い。
 変身ペンが無い。
 あれ!? おかしいな。無くさないようにポケットに入れて……。

「あ」

 回想始め。

  「瑞希」
   また和樹が呼びかけてきた。
  「今度は何?」
  「悪いけど、ボールペンか何か持ってないか?」
  「あ、持ってるけど……」
   ポケットからペンを取りだして和樹に渡す。
  「これでいい?」
  「オッケー」

 回想終わり。

 思い出した。

「あああああ!!! しまったーーーっ!!!」
 肝心のペンを手放してどーするのよ! あたしのバカバカバカーーーっ!!
 って事は……、これってひょっとしなくても大ピンチ!?
 そしてあたしは果敢に戦うも多勢に無勢やがて力尽きて床に倒れ込みその姿
が飢えた野獣のような男達の欲望を駆り立て無惨にもあたしは心と体を壊され
て弄ばれてそれでも彼らの衝動は尽きず悪夢は終わらない。とか……。
 イヤイヤイヤーーーっ!! そんなのイヤすぎるーーーっ!!!
 そりゃ確かに、初体験が公園で。ってゆー前代未聞の悪名を背負っちゃった
けど、でも、いくらなんでも陵辱されるなんてイヤよーーーっ!!!
 てゆーかこのSSっていつの間に18禁に!? 良い子も極悪人ももう寝る
時間なのに!?
「……やってしまいなさい、ポチ達」
「やっちまいます! 女王様!」
 彩ちゃんのかけ声と共に男達が襲いかかってきた。
 ああっ! 非常に無情に命と貞操の危機!!?

 しかしその時、

「ミラクルボイス!!!」
 ドガァッ!!!
「ぶがぁっ!?」

 エネルギーの固まりが男達の内の一人に直撃した。
「……誰ですか?」
 彩ちゃんが店の入口の方……、つまりあたしの後ろに向かって声をかけた。
そこにいたのは……、

『たんめん、きしめん、びびんめん!
 らーめん、にゅーめん、ひやそーめん!
 魔法のアイドル声優、マスターピーチ! 乙女のピンチにただいま参上!』

 そう、マスターピーチことあさひちゃんだった。ただし、以前とは違いゴー
グルを着けているが。
 そのマスターピーチを彩ちゃんはにらみつける。
「……マスターピーチ、まさかあなたが、わたし達を裏切るなんて……」
「……そうですね。でもあたしは……、あたしはあなた達の野望を知ったから、
 それを止めるためにあなた達と戦います! ……例えそれがカードマスター
 ピーチのトレカを交換してくれた人であっても!」
「そのとーり!」
 再び入口から声が聞こえてきた。聞きおぼえのある大志の声が。
 だけど、そこにいた影は大志の形ではなかった。いや、大志の形だけどそう
じゃなかった。

 裸エプロンだった。

「くっくっく。何も知らない無垢な少女をかどわかして自分たちの戦力にしよ
 うなどと、そうは問屋が卸さん! 一度は貴様等に惑わされたようだが、吾
 輩の説得により彼女は正義の戦士として生まれ変わったのだよ!」

 いいからその汚いモノを見せるな。

「そう……、あたしは生まれ変わったんですっ! 正義に目覚めたんですっ!」
 そしてマスターピーチは、彩ちゃんを指さして宣言した。
 しかしあたしは見た。マスターピーチの服の裾からチラリと見えたそれを。
 そう、デジ○キャラットモノの同人誌を。しかも見たところ男性向け。

 ……買収された?

 突然、マスターピーチがあたしのそばまで来て、小声で喋る。
(瑞希さん、ここであたしが引きつけている内に、変身してきてください!)
(わ、解ったわ!)
 あたしは一旦店を出て、路地裏に入った。

『らーめん、れいめん、ぱーこーめん!
 たんめん、そーめん、ちゃーしゅーめん!』


「あうっ!」
 マスターピーチは男達と戦っていた。
 しかし男達の攻撃を受け、その衝撃でゴーグルが取れてしまった。
「むぅ、マズイぞ!」
 大志がうろたえる。
 実はマスターピーチのゴーグルは、大志のお手製のゴーグル型ディスプレイ
なのである。
 台本が無いとうまく喋れない彼女は、ゴーグルに映し出される、大志が隠し
持つハンドコンピュータで入力したセリフを読み上げている。
 そのゴーグルが取れてしまった。
「あ、あの、その……」
「落ち着け! マスターピーチよ! 今にこみパマスターみずきが……」
「その通り!」


『画材と騙して偽物を売りつけるなんて、
 商店街組合が許しても、このあたしが許さない!』

「……まさか!」

『こみパマスターみずき! 愛と勇気の名のもとに、ただいま参上!』

「……現れたんですね、こみパマスターみずき……!」
 彩ちゃんがこっちに向き直る。
「遅いぞ! こみパマスターみずき!」
「ゴメン! それより、二人とも大丈夫?」
 大志に謝りつつ、二人を気遣う。
「あ、は、はい! なんとか……」
「よし! それじゃあ、後はあたしに任せて!」
 あたしは彩ちゃんの方を見据え、ステッキを強く握りしめた。そしてステッ
キが輝きだしたのを確認して構えをとる。
「マジカル……」
「む? ちょっと待てまいしすたぁ!」
 とたん、大志が止めようとしたが、既に遅い。

「ブーメラン!!!」

 ステッキは投げられた。
 しかし、

 ガシャーーーン!!!
「きゃあっ!?」

 ステッキは近くの棚を壊して、床に落ちた。
「まいしすたぁよ! マジカルブーメランはある程度広いところでなければ使
 えん! ここの様な店の中では無理だ!」
「そ、そんな……」
「遊びは……、終わりですか?」
 彩ちゃんが静かに言い放つ。そしてその声に反応して男が殴りかかってきた。
「うりゃあっ!」
「はっ!」
 しかし間一髪のところでかわし、男の拳はあたしの後ろにあったスイッチを
殴りつけた。
 そのとたん、彩ちゃんの顔色が変わった。
「あ」
「えっ?」
「それ……、自爆装置のスイッチなんです……」
「へ?」
 瞬間、

 ドゴゴゴォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!


 それは、髪と言うにはあまりにも大きすぎた。
 大きく、分厚く、広く。そしてちぢれすぎた。
 それは、正にアフロだった。

 自爆装置のせいで画材屋は吹き飛んだ。
 ただ、爆発に巻き込まれたものの、なんとか全員生きていた。
 だけど爆発の衝撃で、一名を除いてアフロヘアーになっていた。
「……ふぅ。終わったようだな」
 そう、大志だけが無事だった。
「大志……、なんであんただけ無事なのよ?」
「うむ、とっさにATフィールドを張ったからな」
「……なんでそんなの使えるの?」
「ATフィールドは、誰もが持ってる心の壁なのさ」
「うう……」
 声のした方向を見ると、さっきの男達がいた。もちろんアフロ。
「うう……、何でこんな目にあわなきゃいけないんスか? 俺たちゃ只の逸般
 ……もとい、一般人なのに……」
「えっ? あんたたち、色白い姉妹の人間じゃ……」
「違うっすよ。俺たちゃここの画材屋に画材を買いに来たけど、『まともな画
 材が欲しいなら、私の言う事をお聞き。ひざまづいて私の足をお舐め』って
 言われて、ちょっとイイかも……もとい、仕方なく従ってただけなのに、何
 でこんなめに遭うんスか? しかもアフロになるし……」
 そう言って、彼らは泣きながら土を袋に入れ始めた。
「……けほっ」
 引き続き、彩ちゃんも気が付いた。例外なくアフロ。
 あたしは彩ちゃんに話しかけた。
「ねぇ彩ちゃん……、一つ訊きたいんだけど」
「何ですか……?」
「……何で自爆装置なんか付けたの?」
「……、お約束だから……」
「けほっ、けほっ」
 最後にマスターピーチも気が付く。余すことなくアフロ。
 彼女はあたしの頭を見て驚く。そりゃそーだ、だってあたしもアフロだし。
「あ……、み、瑞希さん、あ、頭が……」
「……アフロ。でしょ?」
「えっ?」
「自分の頭ぐらい自分で解るわよ……。それより、ピーチもアフロだけど?」
「え、ええっ!?」
 ピーチは自分の頭を押さえた。

 もさっ。

 自分の頭の感触を確かめてから、ピーチはまた気を失った。


「そこの君達! これは何があった?」
 ふと声の方を見ると、お巡りさんがいた。そりゃあ、こんな爆発があれば気
付くわよね。
「うむ、これは……」
 大志が一歩前に出てお巡りさんに近寄る。

「「「「そいつのせいです!」」」」

 あたし達は声を揃えて大志を指さした。

「な……、き、貴様等! 吾輩にすべてをなすり付けるつもりか!?」
「確かにこの騒ぎの中で無傷なのは怪しいな。てゆーか裸エプロンだし。
 そこの君、ちょっと一緒に来てもらおうか?」
「違う! 吾輩は違うんだあああっ!!!」
 ……さらば大志。
「……帰ろっか」
 誰かがそう呟いた。


 一方その頃……。

「……彩のヤツ。失敗したみたいやで?」
「なにそれー!? ちょーむかつくー!」
「にゃあー! まさか彩のおねーさんでもダメだったなんて……」
「あらあら、困りましたね〜」
「なぁ、次はどないするん?」
「それじゃあ、次はあなた達が行ってくれる?」
「よっしゃ! 任しとき!」
「ふふーん、最初からそーしときゃいーのよ」
「はい! がんばるですぅ!」


 なお、カズキード仮面こと千堂和樹は、

「あ、そういや画材を買い直してこないと……」

 まだ原稿を書いていた。



                               つづく。



 ■■■次回予告■■■

 瑞希『何とか敵を倒し、新しい仲間も加わったけど、それでも色白い姉妹の
    攻撃は続く……。え? 今度は塚本印刷に新しい敵が現れたみたい?
    サークル色白い姉妹! あなた達の好きにはさせないっ!』 

 次回! こみぱマスターみずき第3話! 【恐怖の同人三巨頭】!

 由宇『そんなヤツぁ、人間やあらへん!』

 ■■■■■■■■■■