『こみパマスターみずき』 第1話「魔法少女は大学生!?」(Aパート) 投稿者:はむらび 投稿日:2月20日(日)23時25分


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 ピンポンパンポーン

 『これは「こみっくパーティー」のSSです。劇中に登場する個人・団体は
  本編の個人・団体と関係がありますが、目安としては「大体」ぐらいです。

  また、演出上の要請により、一部登場人物が本編とは大分かけ離れた設定
  になっていますが、これは「猪名川でいこう!!」をやって、イメージが
  大分変わってしまったせいです。くれぐれも気をつけて下さい。

                               かしこ』
 【こみっくパーティー準備委員会・関内責任者
            兼・サークル「色白い姉妹」真の主宰:牧村 南】

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 ドンドン!

「ん……」

 ドンドン!

 ……誰なの? こんな朝早くから。

 ドンドン!

 ……まったく、ドアをドンドン叩かないでよね。近所迷惑でしょうが。
「おはよう! まいしすたー瑞希!」
 ん? この声は……九品仏大志?
「同志高瀬瑞希よ、まだ家にいるのだろう? 何故吾輩の呼びかけを無視する
 のだ」
「うるさいわね。あたしはまだ寝てるんですからね」
「うむ。見ればわかる」
 へ? 見ればわかるって、まさか……。

 ふと横を見ると、ベッドの隣に大志が正座していた。
 
「んきゃあああああぁぁぁぁぁっ!!!???」



    『こみパマスターみずき 第1話・魔法少女は大学生!?』



「た、た、た、たたた大志! 勝手に人の部屋に上がらないでよ! って、そ
 れよりどこから入ってきたのよ!?」
「知れたこと。玄関からに決まっておろう」
 ……カギかけてたんだけど。
 どうやらこいつには、世間の常識という概念が存在しないらしい。
「はぁ……。で、何の用?」
「うむ、実は今度のこみパの事なのだが……」
「あ、ちょっと待って」
「どうした? まいしすたー」
「その前に、着替えるからちょっと待ってて」
「うむ、承知した」
「……」
「……」
「…………」
「…………」
「……ねぇ」
「どうした? 同志瑞希。何か不都合でも?」
「あんたが不都合よ。何でまだ部屋にいるの?」
「ふっ、吾輩などに構わず、遠慮なく着替えるがいい。なにより、吾輩は三次
 元には興味は無い」

 ガシャーン!

 今のは、あたしが大志をぶん殴って、大志が窓ガラスを突き破って外に飛び
出た音である。
 しかし大志のヤツは、頭にガラス片が突き刺さり、尚かつ血を流しながらも、
「はっはっは。そう照れなくともよいぞ? まいしすたー」
 などと窓の下で元気に笑っていた。
 前言撤回。あいつには、人間の常識という概念が存在しない。


「で、今度のこみパがどうしたの? まさか、和樹が同人誌の原稿落としそう。
 とか?」
「そんなささいな事は問題ではないっ! 実は、こみパに恐るべき陰謀の魔の
 手が迫りつつあるのだ」
「……陰謀?」
「うむ。同志瑞希よ、『色白い姉妹』の事は知っているか?」
「名前だけは知ってるけど……」
「うむ。ちなみにサークル『色白い姉妹』とは、過去一世紀の間こみパでの配
 置スペースが壁から離れた事が無いほどの大手サークルだ」
 ……こみパがそんなに昔からやってるワケないでしょーが。
「しかし! それは世を忍ぶ仮の姿。その実体はこみパを自分たちで支配せん
 と企み、ひいては世界の支配、つまり、同人で世界征服を企む秘密結社なの
 だ!」
「……はい?」
「そして、今度のこみパにおいて、色白い姉妹が世界征服計画に本格的に取り
 組む。という情報を、吾輩独自の情報網によって入手した」
「はぁ……」
「だが! 頂点に立つのはただ一人で充分! そして頂点に立つべき資格があ
 るのは、われら『ブラザー2』でなければならない!」
 さいですか。
「そこでだ、同志瑞希よ、お前はこれから『こみパマスターみずき』となり、
 色白い姉妹の野望をうち砕くために戦うのだぁっ!!!」
 どどーん!!
 妙なSEが鳴って、背景が冬の日本海になった。
「はいはい。わかったからもー帰ってね。あたしだって暇じゃないんだから」
 そう言いつつ、もう一回ふとんに入った。もちろん二度寝するために。
「拒否は許さんぞ同志。すでに改造は済んだのだからな」

 ちょっと待った。

「……何? 今なんて言ったの?」
「だから、すでにお前を魔法少女に改造する手術は済んだ。と言ったが」
「な……、何よそれえええええええぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!?????
 そそそ、そんなのいつの間に……」
「日曜日。つまり三日前からだ」
「え? そ、そんな……。き、昨日は日曜日で、今日は月曜日のハズじゃ……」
「ほれ、今日の新聞を見たまえ。今日は水曜日だぞ」
「う、ウソぉ!?」
「真実から目を背けるな、まい同志」
「じょ、冗談じゃないわよ! 昨日はどうしても落とせない講義があったのに、
 ど、どうしてくれるのよ!」
「細かいことを気にするな、まいはにー。世界征服の野望の前には、講義の事
 など石コロ同然」
「じゃなくて! あたしには大学の方が大事なの!」
「ああ、ちなみに手術はすべて女性スタッフがおこなったぞ。女性や初めての
 方でも安心。翌日返済すれば利子は0%だ」
 サラ金か?


 ふと、大志は持ってきた紙袋の中から、そりゃもう少女趣味丸出しの杖を取
りだした。
「さぁ同志よ! 最後の仕上げにこの魔法のステッキを手に取るのだっ!」
「うぅ……。世界征服も世界平和もどうでもいいから、あたしに普通の大学生
 活を送らせて……」
 涙が止まらなかった。しかも色が紅だった。
 変な杖を目の前にしたあたしが取るべき行動は……、

  1・杖を取る
  2・杖を取る
  3・杖を取る

「こらぁっ! どれを選んでも同じじゃないの!」
「女々しいぞ同志瑞希。これはお前に課せられた試練。いや、運命だ!」
 運命なんてくそっくらえ。と思った。
「さぁ、まいしすたー! 杖を取り、呪文を唱えるのだあっ!」
「あの……、わかんないんだけど……、呪文」
「のーぷろぶれむ。杖を手にすれば勝手に唱えるように改造済みだ」
 鬼。
 あたしは泣く泣くステッキを取った。悟りを開くというのはこんな気分かも
しれない。でも今開いたのは、あっちの世界への扉かもしれないけど。
 ステッキを手に取った途端、ある言葉が頭に浮かんできた。

『らーめん、れいめん、ぱーこーめん!
 たんめん、そーめん、ちゃーしゅーめん!』

 呪文を唱えるといきなり杖が光り出した。
 それから、今着ている服が光り出し、光の粒になって身体から離れ、ステッ
キに吸い込まれる
 つまり、今のあたしは……、


 裸だった。


 その後、ステッキから再び出てきた光の粒が身体にまとわりつき、今度はピ
ンク色のひらひらした服になって、変身完了。
「おお、えくせれんと! ついに、魔法少女こみパマスターみずきの誕生だ!
 どうだね? まいしすたー。感想は?」
「……ば」
「ば?」
「……ば」
「ば?」


「バカああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」
 ドンガラガシャーン!


「な、なにをする! こみパマスターみずき! テーブルなど持ち上げるでな
 い! そんなもので殴られたら死んでしまうだろう! それに、お前は魔法
 少女であって怪力少女ではないぞ!」
「うるさいうるさいうるさぁいっ! なんで、なんで、なんで『変身する時に
 裸になる』って、先に言ってくれないのよ!?」
「何を言う、それしきの事デフォ中のデフォだろうが。魔法少女は『変身する
 時に、一旦裸になる』のは大事な要素であろう?」
「バカバカバカバカーーーっ!!! あんた! あたしの見たでしょ!?」
「安心したまえまいしすたー。先程も言ったが、吾輩は三次元に興味は無い」
「そんな問題じゃない! うぅ……、もうお嫁に行けないじゃない……。どう
してくれるのよ! 大志のバカあああぁぁぁっっっ!!!」
「わかった! わかったから、テーブルを振り回すのを止めんか!」


 気が付いたら部屋はメチャクチャだった。しかも、ここはあたしの部屋だか
ら、後で自分が掃除しなくちゃいけないし。
「ぜぇ……、ぜぇ……。気は済んだか? まい同志」
「はぁ……、はぁ……。なんとかね」
「よし、納得してくれたようだな」
 してない。
「では、一通りの説明にはいるぞ」
 聞けよ、人の話。
「まず、 お前はすでに改造手術によって常人の三倍の身体能力を持つが、こ
 みパマスターみずきになれば、さらに三倍! 合計で通常の九倍になるのだ!
 例えるなら、即売会の会場前で三日間徹夜しても平気なほどのパワー! い
 ざ開場となれば、お目当てのサークルに一番乗りで駆けつけられるほどのス
 ピード!」

(即売会の会場付近で徹夜したり、会場で走るのはやめてくださいね。
                            by 牧村南)

「……それより、変身する時に、その……、つまり……、……裸になるのはど
 うにかならない?」
「仕様だ」
 それでユーザーが納得すると思うか、コラ。
「そればかりは外すわけにはいかん。一旦裸になってこそ、正統なる魔法少女
 の変身シーンだ」
 もしも本当に神様がいるのなら、今すぐ殴りに行きたいと思った。
「おおそうだ、ステッキは通常時にはボールペンのサイズになり、しかもボー
 ルペン代わりにも使える仕組みになっている。しかし、絶対に無くすなよ。
 もし無くした場合は、吾輩がお前を動物に変えてしまうからな」
 あんたはバードマンか。


「おっと、うっかり忘れるところだったが、魔法少女に付き物の『まるっこい
 妙な生物のお供』と『戦闘シーンを収録してくれるお友達』をこちらで用意
 したぞ。その点に関しては、吾輩に抜かりはない」
「……そりゃどうも」
「ふっ、期待するのはわかるが、そう急がずともよい」
 期待してない。むしろこの現状から逃げられることを期待したい。
「さぁ、いでよ! コードネーム『○ロちゃん』!&『知○ちゃん』!!」

『ケ○ちゃん(おたくヨコ)』「お、お呼ばれなんだなー」
『○世ちゃん(おたくタテ)』「待たせたでござるよ。ヤングメン」

 ガシャーン!

 本日二回目の窓ガラス破壊。 
「……同志瑞希、何故彼らを外へ捨てる?」
「……いい? 『丸っこい妙な生物』ってのは千歩譲って認めるけど、アレを
 よりによって『知世○ゃん』ってのは無理がありすぎるわよ! 共通点はビ
 デオカメラぐらいじゃないの!」
「ぬぅ、お気に召さなかったか……。仕方がない、いざ戦闘になったときは、
 吾輩が支援する事にしよう」
「最初っからそうしてよね……」


 ちなみに、この後窓の外から、
「おお、そういえば今日は『まじ○る☆アンティーク』の発売日でござるよ、
 ヤングメン。頭から脳味噌をこぼしているヒマはないでござる」
「た、たいへんなんだなー。急がなくちゃいけないんだなー」
「……まさか、予約してないのでござるか?」
「だ、大丈夫なんだなー。予約は発表と同時に済ましたんだなー。でも、いち
 早くスフ○ーちゃんを保護しなきゃいけないんだなー」
「それでこそおたくの鑑でござるよ、ヤングメン。さぁ、我々もおくれをとっ
 てはならないでござるよ」
「だなー」
 という声が聞こえてきた。
 傷は大丈夫そうだけど、人間としてはダメそうだ。


「さて同志瑞希。いや、こみパマスターみずき。早速最初の指令だが……」
「なに? 早速色白い姉妹と戦うの?」
「いや、これから吾輩と共に、同志千堂和樹の家へゆくぞ」
「えっ? まさか、和樹が……」
「いや違う。実は、まいぶらざぁ和樹が事もあろうに原稿を落としそうなのだ」
「……はい?」
「何だ? その鳩が豆鉄砲喰らったような顔は。まい同志千堂和樹が、今書い
 ている同人誌の原稿が落ちる手前。と言ったのだ。冗談では無いぞ」
「ちょ……、ちょっと! そういうのは先に言いなさいよ!」
「先に言ったぞ。63行目辺りのやり取りを思い出したまえ」
 ……本当に落としかけてたんかい!
「よって我々はこれから手伝いに行く。なに、今のお前なら改造手術の恩恵で、
 同志和樹の三倍のスピードでペン入れ・ベタ塗り・トーン張りができる。心
 配は無用」
「はいはい、わかったわよ。やればいいんでしょ? やれば。それで? 後何
 ページ残ってるの?」
「うむ、50ページだそうだ」
「うーん、それならなんとか……」
「ネームが、だ」
「……ちょい待ち」
「なんだ?」
「……残ってるのって、ネームなの? ペン入れとか、仕上げじゃなくて?」
「そうだ」
「……その原稿、全部で何ページ?」
「きっちり50ページだ」
「……それって、一ページたりとも手が付いてないって事?」
「そういう事になるな、ちなみに表紙も出来てない」
「……締め切りは?」
「あさって」
「そ……、そんなの間に合うわけないじゃないの! あさってまでに50ペー
 ジのマンガ一本書き上げるなんて無理よ!」
「そのためにお前がいるのだ! さぁ同志よ! 成せば成る! お前は、この
 偉業を成し遂げる星の下に生まれたのだ! 逃亡は許さんぞ! お前の熱き
 魂を、思う存分原稿にぶつけるがいい!」
 今は目の前のバカに思う存分拳をぶつけたかった。

 お父さん、お母さん。東京は怖いところです。


「ところで大志、手術の費用はどこから出したのよ?」
「うむ。こんな事もあろうかと、こつこつ貯めた金があってな」
「いつから貯めてたの?」
「百年前から」
「嘘つけ」
「嘘ではない。我が九品仏家に先祖代々伝わる世界征服用の資金から調達した」
 ……恐るべし、九品仏家の人々。