頑張れ矢島君 投稿者:柄打 投稿日:4月4日(火)01時19分
 何故か、矢島の家に遊びに行くことになり、今は奴と二人で下校している。
 まあ、それは別に良いのだが、駅前にさしかかった頃から
矢島の行動に落ち着きがなくなったのが気になった。
「どーした矢島。なんかあんのか?」
「いや・・・・ちょっと今は会いたくない人が・・・」
「あー!とー君だー!!」
 背後からかけられた声に、矢島の肩がビクッと跳ね上がった。
「・・・・れ、玲子さん・・・・」
 振り返ると、ショートカットの活発そうなお姉さんが立っていた。
 多分、俺達よりも一つか二つ年上だろう。
「最初に断っておきますが、違いますからね」
 何が違うのか俺には解らなかったが、矢島はこれでもかと言うほど力を込めて断言した。
「えー、そんなの言われなくても解ってるよー」
 玲子さんの言葉に何故かほっと肩をなで下ろす矢島。しかし、

「だって、二人ともあからさまに『攻め』タイプじゃん」

	どんがらがっしゃーん!!
	
 矢島はこけた。それもかなり盛大に。
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「じゃあ藤田君、とー君。まったねー」
 それから軽く話した後、玲子さんは現れたときと同様に、元気良く去っていった。
 会話には、攻めだの受けだの上だの下だの、意味のよくわからん単語が連発されたが、
矢島の態度からなんとなく聞くのがためらわれた。
 だからその辺は置いといて、再び歩き出しながら残った疑問をぶつけてみた。
「なんでお前が『とー君』なんだ?」
「んー、単純なあだ名だよ」
 そう言いながら、一軒の小ぎれいな二階屋の前で立ち止まった。
「ほら、着いたぜ。ここが俺ん家だ」

 その家の表札には只一文字

	「矢」

とだけ書かれていた。