セリオとプレゼント  投稿者:柄打


「ー・・・・・という訳なのです。長瀬主任」
「・・・なるほど、ね」
 長瀬は、無精髭の目立つ顎をなでながら答えた。
 ここはHM研の主任室。いま、この場には長瀬とセリオの二人しか居ない。
「ところで、セリオ」
「ーハイ。なんでしょう?」
 長瀬は、この男にしては珍しく、一言一言、言葉を選ぶようにして続けた。
「お前は、自分が何者だか解っているね?」
「ーハイ。私は次期メイドロボ先行試作型HMXー13・セリオです」
 いつも通りの模範解答に、後ろ頭をボリボリとかきながら
長瀬は、軽く唸った。
「ま、いいか。とりあえず明日、私達の所に来なさい。
 悪いようにはしないよ」
「ーありがとうございます、長瀬主任」


翌日 寺女・放課後

「あ、いたいた。ねえセリオ、今日・・・・」
「ー申し訳ありません、綾香御嬢様。大事な用事があるのです。
 失礼します」
「・・・・あ、・・・・そう・・・・・」
 一礼すると、セリオはそのまま校門から出ていった。


同日 来栖川邸・夜

「綾香御嬢様、いらっしゃいますか?」
 不意に、部屋の扉がノックされた。
「あ、セリオ!?どうしたの今日は・・・・・セリ、・・オ?」
 扉を開けた綾香の声が、尻窄みに小さくなる。
「ー・・・・・はい・・・・」
「ど、どうしたの、その格好!?」
 綾香が思わず、素っ頓狂な声を上げる。
 それほど、今のセリオの姿にはインパクトがあった。
 全体の印象としては、ピンクハウス系に似ている。
 しかし、そのデザインはかなりすっきりしており、身体のラインもある程度見て取れる。
 濃い藍色をベースにしたドレスに、純白のレースのフリルが鮮やかに映える。
 これで、つば広の帽子でも被れば、完璧に等身大フランス人形なのだが、
流石にそれは、センサーが邪魔をする。
 しかし、幅広のリボンがそれを十二分に補っている。
「ーあ、あの・・・・・・・プレゼント、です」
「そうなの!誰から?」
 綾香は素直に「負けた」と感じた。
 今まで何着かセリオのために服を買ったあげたことはある。
 確かにそれらはセリオに似合っていたが、この服のように
セリオの新しい魅力を引き出させるようなモノではなかった。
 綾香は、この衣装をセリオに送ったモノに、賞賛を送りたくなった。
 しかし、素直にはしゃぐ綾香とは逆に、セリオの表情は冴えない。
「ーい、いえ、そう言うわけではなく・・・」
「え?何?」
 綾香は、セリオの周りを回り、視点の高さを変えつつ気のない返事を返す。
「古来より、プレゼントにはリボンをかけてお渡しする物だと聞きまして・・・・」
「んー。まあ、必ずとは言わないけど大抵そうよね・・・・・・・って、え!?」
 思わず、セリオを見つめる綾香。
 しかし、セリオは視線を合わそうとはせず俯いている。
 そのため、大きなリボンが丁度綾香の目の前に差しだされる形になる。
「あ、あの・・・・・・セリオ?」

「御誕生日、おめでとう御座います。綾香御嬢様」