『電波革命祐介』 〜第2部 黒電波編〜 投稿者:柄打
初めまして。「柄打」と申します。
一応、図書館内のものは一通り目を通したつもりですが、
もし、ダブっていたらごめんなさい m(__)m
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●夕刻 決闘屋上

倒れた人々の模様、立ち並ぶ机・机・机。
その机の上には「埴輪」が”それ”を支えている。

・・・ちりちり・・・・
「この黒電波にかけて誓う」
・・・・・・・・・・

「・・・長瀬ちゃん・・・」
僕を呼ぶ瑠璃子さんの声が、いやに遠く聞こえる・・・。

・・・ちりちりちり・・・・・
「この決闘に勝ち」
・・・・なん・・で?・・・・・

「電波、受け取って」
・・・・・だ、だめだよ瑠璃子さん・・・・

・・・ちりちりちりちり・・・・・・・・・
「電波の花嫁に死を!」
「長瀬ちゃん」
「る、瑠璃子さん。だめだよ、戦えないよ、友達に電波を向けるなんて」
語尾が震えているのが自分でもハッキリと解る。
目の前の現実は、僕にとってそれほどまでに信じ難いモノだった。

「沙織ちゃん!」

きーん こーん かーん こーん・・・・・
まるで決闘開始の合図の様に、下校を知らせるチャイムが鳴り響いた。

「早く電波を!」
「でも・・・」
「そうだ、私はその女を殺す!」
机の上のバレーボールを支えていた埴輪がトスを上げる。
ふわり、と沙織ちゃんのしなやかな体が宙に舞う。
「ひーのーたーまー・・・、スパァァーーーーーイクッ!!!」
炎をまとったスパイクが襲いかかる!
「瑠璃子さん!」
咄嗟に僕は、沙織ちゃんと瑠璃子さんの間に体を割り込ませる。
「ぐっ・・・かはっ・・・」
沙織ちゃんのスパイクの威力は凄まじく、一瞬息が詰まる。
・・・・でも・・・・・
「ど・・どうしてなんだ!あの色鮮やかだった沙織ちゃんがどうして・・・」
「お前には解らない。解る資格など無い」
ドロリと濁った沼のような瞳。
「長瀬ちゃん、早く電波を!」
瑠璃子さんがこんな強い口調で呼びかけたのは、もしかしたら初めてかもしれない。
でも、僕の視線は沙織ちゃんに釘付けになったまま離れようとはしなかった。
ここで決闘した「黒電波の決闘者」達と同じ瞳。・・・なぜ・・・

  『知ってるの?あたしってもしかして有名?』
  色を失った僕の世界にあって、眩しいほどの色彩を放っていた沙織ちゃん。

埴輪が支えるボールを無造作に掴み、ゆっくりと瑠璃子さんに歩み寄る沙織ちゃん。
「やめろ、沙織ちゃん!やめるんだ!!」
振り向きざま、沙織ちゃんの手から再びボールが放たれる。
「うわっっ・・・」
なんとかその一撃は避けたものの、僕の体はこの急激な体重移動についてはこれなかった。

  夕刻。夕日が総てのモノを紅く染めている・・・
  教室の窓に肘をつき、優しく微笑む沙織ちゃん。
  『……来年……おんなじクラスになれるといいね』
  『なれるといいね』
  『いいね』
  『いいね…………』

「痛っ!」
無様に転んだ僕の髪を掴み引き起こす沙織ちゃん。
「長瀬ちゃん!」

「お前も、その女も、生徒会の連中も、みんなが私を狂わすんだ。
何の苦労もなく、手に入れた電波をを使って……」

沙織ちゃんの濁った瞳に、不気味に歪んだ僕が映っている。

「だからお前達はみんな平然と……」
「長瀬ちゃん!!」

沙織ちゃんと瑠璃子さんの絶叫が重なる。
そして、埴輪が再びボールを上げる。

「人を操ることが出来るんだぁ!!!」

再び沙織ちゃんの体が宙に舞い・・・上がらない。
僕は残った力を振り絞り、沙織ちゃんの両腕をしっかりと掴んでいた。

「・・・沙織・・ちゃん・・・・・」
体の痛みはかなり酷い。事実、僕は顔を上げることすら出来ない。
「・・確かに僕には解らないことが沢山ある・・・」
でも・・でも、これだけは言わなくちゃいけない。
「だけど、これだけはハッキリと解ってる」
僕は気力までも総動員し、沙織ちゃんの瞳を真っ直ぐに見据える。
「………」
「君は、僕の大事な友達だってことさ。待ってて、今、助けてあげるから・・・」

ちりちりちりちり・・・・・
僕は、自分の体をアンテナにして周りの電波を集めた。

ガタン、ガタン、ガタン・・・
机が四隅に集まっていく。
そして、

「んっ……!」
「・・・・・」

僕は優しく沙織ちゃんにキスをすると、彼女の体内に電波を解き放ち・・・

・・・一息に黒電波を散らした・・・

そのとき、沙織ちゃんの頬を伝う一筋の雫を、僕は見たような気がした・・・

きーん こーん かーん こーん・・・・・
決闘の終了を報せるかのように、最終下校のチャイムが鳴り響く・・・


●同時刻 某所

ガラガラガラ・・・・・ゴオゥ
スポーツタオルを納めた棺桶が火葬される

「そして、お姫様は王子様のキスで目覚めましたとさ‥か‥」
壁に寄り掛かった馬面の男が呟く。
男は胸ポケットからよれよれになった煙草を取り出し、その中から一本取り出すと
くわえるでもなしに、煙草を持った右手で後退し始めた生え際をコリコリと掻く。
そして、軽く溜息をつくと、

「いやー、若いってのはいーねぇ‥」

そう呟き、あらためて煙草に火を点けると、その煙を胸一杯まで吸い込む。
吐き出された紫煙がゆっくりと昇っていく。
煙草はくわえたまま、空いた右手で無精髭の目立つ顎を撫でる。

「しかし、二股はいかんなぁ、祐介‥‥」


●夜 寮東館

ちりちりちり・・・・
「ルルル、瑠璃子サン・・・
アアアアレハ浮気トカジャナクナクナクテテテテテ・・・」

ちりちりちりちりちり・・・・
「クスクスクス・・・。長瀬ちゃん、電波・・届いた・・・?」
「ル、ルルル瑠璃子さん、ヤヤヤヤメヤメヤメ・・・・・」

ちりちりちりちりちりちりちり・・・・
「クスクスクス・・・。絶対電波黙示録・・・」


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ジャンル/雫・パロディ
キャスト/祐介・瑠璃子・??・???
コメント/エンゲージする者へ 夕刻 決闘屋上で待つ