茜の「あれ」 投稿者: 白久鮎
「・・・確か、誕生日にお返し貰えるんですよね」

「なにっ、まだ覚えていたのか・・・」

「はい」

「そう言えばいつなんだ、茜の誕生日」

「今日です」

「うわー、なんも用意してないぞ」

「大丈夫です。
これから二人で買いに行くんですから。
欲しい物も決まってます」

「ま、まさか「あれ」か・・・」

「あれです」

「あれだけは勘弁してくれー」

見上げれば、どこまでも澄み渡った青空。
本当に、さっきまでの大雨がうそのように…、
二人でこの小径を歩いて行く。
どこまでも、一緒に…。
本当に好きな人と一緒に。



「茜、本気か・・・」

「はい、本気です」

茜の言った「あれ」を買いに来た筈だった。
「あれ」とは、てっきり不気味なぬいぐるみか激甘ワッフルの
どちらかだとおもっていた。
俺の考えが甘かった・・・。

「浩平、どうしたんですか」

「いや、何でもない・・・。それより、そろそろ帰らないか」

「来たばかりです」

そう言って茜はウェイターに何やら注文をしていた。
俺の言葉はあっさりと打ち消された。
こうなったら仕方ない。覚悟を決めるか・・・。
そう思い目の前にある皿を見つめた。
そう、茜の言った「あれ」とは、物ではなく食べ物、それも味覚が
ちょっと人とは違う茜の気に入ったもの。
ただ甘いだけのワッフルなら惚れた男の弱みというか、無理をすれ
ば食べられなくもない。
しかし・・・。

「浩平、食べないんですか。おいしいですよ」

茜は心配そうに聞いてくるが俺にはひきつった笑顔で答えることしか
できない・・・。

「いや、食べるよ」

その時。

「うらーーー」

目の前の茜が突如叫んだ。

「ここのコック何入れやがった、変なもん食わせやがって」

やっぱり・・・。だから嫌だったんだ。
噂で聞いていた通りだ。

「お客様、他のお客様のご迷惑になりますので・・・」

そういって止めに入ったウェイターの人も何か弱腰だ。
きっと何か原因を知っているのだろう。

「厨房の方に確認して参りますので、その間お連れのお客様を
抑えていただけますか」

「はい・・・」

そう言ってウェイターは厨房に入っていった。
茜を押えながら耳を澄ますと、

「梓、今日千鶴さん来なかったか、って何で千鶴さんここにいるんですか」

「あっ、耕一さん。どうしたんですか」

「どうしたんですかじゃありませんよ・・・。
一応聞いておきますけど、料理しましたね」

「ええ、しましたけど。それが何か」

「やっぱり・・・、また茸使いましたね」

「なんのことですか」

「とぼけても無駄ですよ、ほら」

といって茜の方を指差す耕一さん。

「てへっ、ばれちゃいましたね」



噂で聞いた所によると、壮絶な味覚オンチの会長がときどき厨房に
あらわれては怪しげな料理をつくっていく、らしい。
問題を起こすわけだが何故か男性客に絶大な人気があるらしく誰も
止めることができないという。
茜がこんなのだし仕方ない泊まっていくか・・・。



そうここは知ってる人は知っている有名旅館「鶴来屋」内の
レストランだった。



(後書き)
はじめまして。自称「ギャグSS書き」の白久鮎です。
前半部分はリーフに関係ないけど後半でてくるのでこちらにも
掲載しました。
茜の「あれ」とは一体何か、という疑問に答えを出したSS(嘘)
最初はパソコンにして茜がゲーマーになっちゃう、ていうのを考えてた
けど、ネタに詰まって結局こうなりました。
「痕」知らない人絶対やるべし。
こことtacticsに同じネタを掲載しました。
両方見た人、むかつくかも知れないけど許してね。

http://home4.highway.ne.jp/ayu0912/