『雪の降る時』 投稿者: 悠 朔
 ちらほらと降り積もる雪。
 踏まれても踏まれても、どんなに汚されても、真白に降り積もる雪。
 触れれば壊れてしまう、儚い雪。
 まるで君のようだね。
 瑠璃子さん。
 この雪と同じ白い部屋。
 そこで君は今も眠り続けているんだろう?
 月島さんと一緒に。
 壊れてしまったもう一人の僕と…一緒に。
 いっその事、僕も壊れてしまえば幸せだったかもしれない。
 君がいなくなってしまって、また僕の世界は急速に色を失ってしまった。
 変わり映えしない日常。
 自主性持たない、波に流されるだけの群集。
 知性の無い動物の群れ。
 そんな中で…僕は生きている。
 『扉』を開ける事もせずに。
 でも……もういいんだ。
 僕はずっと待ち続けていた。
 この日常が再び色を取り戻す日を。
 君が帰ってくる日を。
 でも、もういい。
 君を失って一年。
 一年は長すぎたよ……瑠璃子さん。
 君は僕が助けを求めてるって…そう言ったよね?
 きっとそうだったんだろう。
 今もきっと……僕は待ってる。
 救われる日が来るのを。
 誰かが僕に救いの手を差し出してくれるのを。
 もういいんだ。
 僕はこれから『扉』を開く。
 誰にも煩わされず。
 誰にも干渉されない世界への、『扉』を。
 瑠璃子さん……。
 君はそこにいるんだろう?
 お兄さんと二人で。
 君は……僕を待っててくれるよね?
 今そこに行くから。
 大丈夫だよ。
 ちゃんと……寂しくないように友達も連れて行くから。
 皆きっと喜んでくれるよね?
 こんなつまらない世界じゃなく、ずっとずっと楽しい世界が待ってるんだから……。
 瑠璃子さん。
 待っててね……瑠璃子さん……。