ちぇりー・ぶろっさむ 第三話 投稿者:ヒトシ


  昼休み、琴音は中庭で弁当を広げていた。しかし彼女の座り込んでいる場所は日当たり
の悪い隅の方であった。日当たりのいいところには人がたくさんいる。それをよけると必
然的にこういう所になってしまう。しかし琴音はそれはそれでかまわないと思っていた。
「あの、姫川さん・・・」
琴音は顔を上げる。その声の主は葵であった。手には弁当箱を持っていた。
「隣、いいですか?」
葵が聞くと、琴音は目線を下げた。しかし、その目線の先にはバンソウコウの張られた葵
の膝があり、さらに目線を下げてしまった。返事はなかったが、葵は琴音の隣に腰を下ろ
した。
「教室に行ってもいなかったから・・・、先輩に聞いたら、ここじゃないかと・・・」
葵は言う。が、琴音は目線を下げたままそちらを見ようとはしなかった。
「あの、今日は天気がいいですね?」
「・・・」
「こういう日、中庭に来るといい気持ちですよね?」
「・・・」
葵は何か会話のきっかけをつかもうと話しかけるが、琴音の返事は沈黙のみだった。
「あの・・・」
また葵が口を開いた。しかし今までとは言葉の雰囲気が違った。
「先輩から聞きました。姫川さんの予知のこと・・・」
ビクッと琴音の体が震える。
「あの、木の枝が折れたのは私のせいです。私がサンドバックを強く蹴ってたから・・・。
だから、姫川さんのせいだとかそういう事は・・・」
「もお、いい!」
琴音はそう叫ぶと立ち上がろうとしたが、その行動は葵に阻止された。葵が琴音の腕をつ
かんだのだ。琴音は怒りとも悲しみともとれない形相で葵を睨み付けた。
「はなして!!」
しかし、葵ははなさなかった。逆に琴音の目を見つめた。その視線の強さに睨み付けた琴
音の方が臆してしまった。
「別に、姫川さんのせいじゃないです・・・」
琴音の頭に疑問符が浮かぶ。
「不幸の予知なんて、姫川さんが悪い訳ありません!!」
最後の方はほぼ叫び声だった。
「悪い未来が見えるからって、姫川さんのせいなんですか?姫川さんが見たくて見てるん
ですか?違い、ますよね?」
葵はそう言い終わると、琴音を見つめた。
「はなしてください・・・」
琴音は静かな調子で言った。葵はハッとなり、つかんでいた手を放した。
「ごめんなさい、私・・・」
「私といると悪いことが起こります。・・・松原さんだって、怪我を、したじゃないですか。」
琴音はさっきとうって変って何か悲しいそうな顔をしていった。
「でも・・・」
「ごめんなさい・・・」
そう言うと琴音はその場を離れた。
「今日も、神社で練習してますから、きっと来てくださいね!」
葵は琴音の背中に向かっていった。

  「姫川さん、来てくれるでしょうか?」
神社の境内に腰掛け、葵は浩之に今日の出来事を話した。
「怒鳴ってしまって・・・。私、嫌われちゃいましたね・・・」
落ち込む葵に浩之はどう声をかけていいのかわからなかった。
「きっと、来てくれませんよね・・・」
「葵ちゃん、気持ちは分かるけどよ、落ち込むもんじゃないぜ?」
そう言ってみたが、その言葉が慰めにならないことを浩之は知っていた。
「練習、しようぜ?」
練習をして少しでも気が紛れれば、そう思った。

その日、琴音は来なかった。


反省会
  みなさんいかがお過ごしですか?どうもヒトシです。
  これだけ打ち込むのに一時間もかかってしまいました。
  さて今回ですが、琴音ちゃんが怒鳴ってます。「琴音ちゃんは怒鳴らねーよ!」
  という人もいらっしゃるでしょう。大目に見てください。
  友人に「おまえの葵ちゃんびいきが出てる」と言われました。そうかなぁ?
  それでは又の機会に。