ちぇりー・ぶろっさむ 第二話 投稿者:ヒトシ


  浩之は驚いた。葵が練習場に琴音をつれてきたからだ。
「琴音ちゃん、どうしたんだ?こんなところに来て?」
「あの、ちょっと・・・」
琴音は浩之と目を合わせる事が出来ず、うつむきながら言う。
「私が無理を言ってついてきてもらったんです。見学でもしてもらって、もしよかったら
クラブに入ってもらおうかと・・・」
琴音とは対照的に、葵は浩之の目を見ながら、実に楽しそうに言った。浩之は少し困った
ような、あきれたような顔をすると、
「琴音ちゃんには向かないと思うけどな・・・」
と、言った。

  バァン、バァン、と軽快な音が響く。葵がサンドバックを蹴る音だ。琴音と浩之は神社
の境内に腰を下ろしそれを見ていた。
「格闘技のクラブ、だったんですね・・・」
「ん、ああ。葵ちゃん、何も言わなかったんだろ?」
「はい。」
「格闘技のクラブだってわかってたら、来なかった?」
「・・・わかりません。」
琴音はサンドバックを相手にしている葵を見ながら答えた。
「すげぇだろ、葵ちゃん。俺も葵ちゃんから教えてもらってるんだぜ。」
「そう、なんですか。」
琴音は何か興味なさそうに答えた。
「まあ、今回だけは俺の顔を立てると思って付き合ってくれよ。な?」
そんな琴音の様子を見て浩之は言った。
  その時、琴音の頭に一つのヴィジョンが浮かんだ。身震いをすると「あ」と小さく声を漏らした。
「琴音ちゃん、どうした?」
琴音の異変に気付いた浩之は悪い予感がした。
「まさか、例の予知か?」
「ま、松原さんが、サンドバックに・・・」
それを聞いた浩之は立ち上がると葵に声をかけた。
「葵ちゃん!サンドバックはそこまでだ!キックミットを使った練習をしよう!」
急にそんなことを言われた葵はわからない顔をした。
「急にどうしたんですか?」
「いいから!早くこっちにくるんだ!」
葵はまだわからない顔をしていた。そして何を思ったのかサンドバックを抱きかかえた。
「それじゃあ、サンドバック、片づけますね。」
その瞬間。
「ああ!!」
琴音の声とともにバキッとサンドバックがぶら下がっていた枝が折れた。
「きゃぁあ!」
ドスン、とサンドバックが地面に落ちた。
「葵ちゃん!」
浩之が駆け寄る。葵はサンドバックを抱きかかえた姿のまま地面にひざを突いていた。
「痛たた・・・」
「大丈夫か、葵ちゃん?」
「はい・・・」
そう言うと葵は立ち上がった。
「おい、血が出てるじゃねーか。」
浩之の言う通り、葵のひざは擦りむけ血が出ていた。
「このくらい、大丈夫です。」
しかし、その様子を見ていた琴音は大丈夫ではなかった。
「あ、あ、あ・・・」
そして走り出す。
「いや・・・、いやぁー!!」
「ひ、姫川さん?」
葵には何が起こったのか全くわからない。やがて視界から琴音の姿が消えた。
「琴音ちゃん・・・」
浩之はボソッと言った。
「先輩。姫川さん、いったいどうしたんですか?」
葵は浩之に聞く。
「実は、琴音ちゃんはな・・・」

  走る、走る、走る。
  呼吸が乱れる。
  思う。
  自分は人とすごすのは無理なのだと、思う。
  自分は不幸を呼ぶのだと、思う。
  走る、走る、走る。
  呼吸が乱れる。
  そして、心が乱れる。

反省会
  どうもヒトシです。「ちぇりー」第二話、いかがだったでしょうか。
  これからどうなって行くのか?僕も不安です。
  どうなるんだろう(汗)。ピンチだ。
  でもガンバっぞー(頑張るぞ)。どうにかして終わらせてやる!!
  それでは又の機会に。