昔々、ある所に、浩之という若者とあかりという娘が住んでいました。 「浩之ちゃん・・・」 「ん、何だ?」 「・・・、なんでもない。」 二人は見ているほうがむずがゆくなるほどなかむつまじく暮らしていました。 そんなふうに二人がいちゃいちゃしていると、突然、勢いよく扉が開きました。 「だだ、誰だ!」 これからエッチな事をしようとしていた浩之はむちゃくちゃうろたえました。 そこに立っていたのは、長瀬祐介という名の少年でした。 「おじいさん、おばあさん、僕は雨月山へ鬼退治に行ってきます!」 祐介は突然そんなことを言いました。 「おまえ、いったい誰だ!」 「つきましては、きび団子と陣羽織を作っていただきたい。」 祐介は浩之の言う事を全く無視していました。 そうです、彼は、向こうの世界の住人になっていたのです。 「ひ、浩之ちゃん・・・」 浩之はおびえるあかりをかばうように立ち上がりました。アノ時起たなかったのがうそのようです。 「何で、俺達がそんなことをしなくちゃならないんだ!」 浩之ちゃんカッコイイ。あかりはそう思いました。 しかし、そのときです。浩之とあかりの頭の中をチリチリとした何かが駆け巡りました。 そう、祐介の毒電波です。今の彼は「躊躇」などという言葉とは無縁です。 「なななななんんんんんだだだだだ・・・」 「ひひひひひろろろろろゆゆゆゆゆきききききちゃちゃちゃちゃちゃんんんんん・・・」 二人は床にうずくまりました。それでも浩之は必死にあかりをかばおうとしました。 しかし、そんな努力が無駄なのはご存知の通りです。 「きび団子と陣羽織作っていただきたい。」 祐介がもう一度そう言うと、浩之は陣羽織を、あかりはきび団子を、自分の意志とは関係 なく作り始めました。 「なんで、なんでだぁぁぁ!!」 「助けてえ!浩之ちゃん!!」 二人の悲痛な叫びはしばらくの間、当りに響き渡りました。 「おじいさん、おばあさん、それでは行って参ります。」 陣羽織を着込み、腰にきび団子をつけた祐介は二人のもとをあとにしました。 「おじいさんって、いったい・・・。」 自分の胸に泣きじゃくるあかりを抱いた浩之はしばらく祐介が向かっていったほうを見つめていました。 次回予告 そんなのまだ考えてませんよぉ。続けていいのか?