夢で逢えたら-4- 投稿者: 春夏秋雪
始まりがあれば
終わりがある
もし君が傷つくのなら
僕が癒してあげる
僕が傷ついても・・・
もう二度と
同じ過ちは嫌だから・・・
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『夢で逢えたら』
最終章 ユメで逢えたね・・・・

「「やめろおおおおぉぉぉぉぉおおおぉぉぉおおおぉぉぉおぉおおぉぉぉぉぉっ!!!」」

ゴウッ!!!

俺の周りに一陣の熱い風が吹く。
俺は『力』を解放した。
その『力』を感じてか柳川の腕が楓ちゃん達の前で止まる。
「クククク・・・・」
柳川が笑う。

メリメリリリリィッ!!!

俺の服が破れ、その下から鋼と化した肉体が顔を出す。
「ソウダッ!!ヤハリ、オ前ガ相手デナイトナッ!!」

ダッ!!

柳川が俺に向かって飛ぶ!!
そしてその腕を振り下ろ―――せなかった。
「「グオオオオオオオオオオオオオォォォォォオオッ!!!」」
なくなった腕の付け根を押さえて呻く柳川。
俺はもぎ取った奴の右腕を捨てて言った。
「・・・・・柳川・・・・去ネ。ソウスレバ、命ダケハ保証スル・・・」
俺は『鬼』を使いこなしていた。
『殺』の衝動もなく俺は『力』を使いっていた。
地面に這い蹲っている柳川を見て哀れに思った。
なぜ、牙を向ける?
どうして、憎む?
俺には分からなかった。
「クククク・・・・・オ前ニ同情サレルトハ俺モ堕チタモノダナ・・・」
付け根を押さえて立ち上がる柳川。
「・・・・・マァ、コレデ俺ノ役目モ終ワッタ・・・・」
「・・・ドウイウコトダ?」
「オ前ノ『望み』ヲ叶エルタメ」
ニィと笑う柳川。
「!!どういうこと―――― 」
風が吹く。
「ク!」
俺は目をつむる。
そして目を開けるとそこには柳川や千鶴さん達の姿が消えていた。
そして代わりにいた人物は
「・・・・・・次郎衛門。」
そう、『俺』がいた。
「どうだ?『力』を使いこなせる自信がついたか?」

パサ・・・

「?」
そう言うと『俺』は俺に服を投げつけた。
思わず受け取ってしまう。
「元の姿に戻ったとき困るだろ?」
そう言って『俺』は微笑んだ。
「・・・・・」
初めてだった。
『俺』が俺に笑顔を見せるなんて・・・・・・
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「どうしてこんな事を?」
元の姿に戻った俺は今回の事件の首謀者の『俺』に問いかけた。
ちなみに千鶴さん達は『俺』が家に帰して、柳川は元の『世界』に戻ったらしい。
「言っただろう。お前の『願い』を叶えるためだ」
「それだ!俺の『願い』っていったい何なんだ!?」
怒鳴り気味で問う。
「・・・・・・・もう『力』は使いこなせるか?」
いきなり『俺』がたずねる。
「おい!聞いているのは―― 」
「・・・・・・・もう『力』は使いこなせるか?」
もう一度たずねる『俺』。
「・・・・・・・もう『力』は使いこなせるか?」
「・・・・・・ああ。」
「何故??」
「・・・・・俺は親父と約束したんだ。『家族』は必ず守るって・・・・」
おっとりしていていつも優しい千鶴さん。
会う度に喧嘩ばかりしているけど、本音でつきあえる梓。
無口だけど誰よりも他人を思いやってくれる楓ちゃん。
俺を『お兄ちゃん』と言って慕ってくれる初音ちゃん。
俺にはこんなにすばらしい『家族』がいる。
「『家族』がいるかぎり俺は大丈夫だ」
「そうか・・・・」
しばし、黙って見つめ合う俺たち。
なんか温かいモノが今オレたちの間に流れたのは気のせいだろうか?
「・・・ありがとう、次郎衛門」
「なぜ、そんなことを言う?」
「だって、俺のこと心配してこんな事をしてくれたんだろう?」
そう言うと『俺』は苦笑して
「そうだが、まだ俺はお前に礼を言われることはしてないんだが・・・」
「?」
「ソコヘ行ケバ奴ニ逢エル・・・・」
その言葉で気が付く。
そうだ『願い』っていうのは『力』を操るという気持ちだとしても『奴』『想い』っていうのは何なんだろう?
「フフフフフフ・・・・」
微笑みながら『俺』は背を向けて・・・・夜の闇にとけていく。
「待ってくれ!!次郎衛門!!!」
俺の叫びも虚しく『俺』は姿を消した。

サァァァァァァァァァ・・・・・・

風が草木を揺らす。
虫達の鳴き声が怖いくらい大きく聞こえる。
俺はただ立ちつくしていた。

ジャリ・・・

後ろで音が聞こえる。
次郎衛門、柳川に続く第3の訪問者か?
もう、よほどの事がない限り驚かないと思っていたが、振り向いた瞬間。
俺は驚いてしまった。
そこに立っていたのは・・・・・・
「大きくなったな・・・・・耕一。」
俺の、俺の、俺の。
「・・・・・親父ぃ。」
親父だった。
「苦労かけたな・・・・」
そう言うと何も言えない俺の頭にその大きくてしわしわな手をポンと乗せた。
「・・・う・・・・ううっ」
色々言いたかった。
言いたいのに出てきたのは嗚咽と涙だった。
俺は何年かぶりの涙を流し大声で泣いた。
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俺は柏木家の玄関に立っていた。
中が明るい。
多分、千鶴さん達が俺を待っているんだろう。
深く深呼吸をする。
あのあと・・・・・
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「そろそろ、行かないと。」
親父は唐突にそう言った。
「ちょっ、ちょっと待ってくれよ!千鶴さん達にも会ってよ!それに俺まだ言いたいことがいっぱいあるんだ!!」
赤い目をした俺は親父に頼んだ。
千鶴さん達だって親父に会えたらどれだけ嬉しいことか。
しかし、親父は苦笑して、
「千鶴達に会うと帰り辛くなっちまう・・・・」
「そんなこと、言わずにさ!!」
「耕一」
親父は俺を見つめて
「これからはお前が千鶴達を守るんだ・・・」
そう言うと俺に背を向けて歩き出す。
「親父!!」
大声で呼び止める。
「・・・・・・なんだ?」
親父が聞いてくる。
「・・・・俺、今まで言えなかったこと言いたかったこと言うよ・・・・」
今気づいた。
俺の『想い』は親父へのもの。
「ありがとう、そして悪かった」
俺の『願い』とは親父に感謝と謝罪をすること。
そう、このために
次郎衛門は
柳川は
そして、親父は
俺の前に来てくれた・・・・・
「ったく、柄にもないこと言いやがって・・・」
最後の方が涙声になっている。
「あとは頼んだぞ・・・」
「ああ・・・・」
もう二度と会うことはない。
最後の別れの言葉にしてはあっけないかもしれないが俺達には十分すぎるものだった。
そして、親父の姿は闇に消えていった・・・・・
その場に立ちつくす俺に満月の光が俺を温かく照らしていた。
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今までの『自分』に
『さようなら』
これからの『自分』に
『初めまして』
俺を思ってくれる『人』に
『ありがとう』
そして・・・・
俺を迎えてくれる『家族』に


『ただいま』 
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・
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・
もし、願いが叶う所があるのなら
そこは天国ですか?
いいえ、ここは父なる大地です。
もし、想いが届く所があるのなら
そこは天国ですか?
いいえ、そこは母なる海原です。
もし、夢で逢える所があるのなら
そこは天国ですか?
いいえ、ここは家族の故郷です。
・・・・いや
もしそんな所があるのなら
そこは天国かもしれませんね・・・・

完
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あとがき

ついに完結!!
おめでとう自分!!
と、言うわけでお久しぶりです。春夏秋雪です!!
励ましのメールをくれた人ありがとう!!
苦情・文句を言ってくれた人覚えとけ!!
プレッシャーをかけてくれた人(ある意味で)ありがとう!!
何とか書き上げることが出来ました。
しかしこの作品、一太郎で20ページ分書きました!!(自分的には快挙です!!)
凄いですね。自分でも驚いてます。
この話、最後はチョッチ無理がありますが一応終わりです。
さてさて感想ですがなんかチョット見てないと凄い量ありますね。
今度は感想集かな?
ちなみに次回作はまた『痕』でギャグモノを書こうと思います。
もう、シリアスは疲れる・・・。
『雫』はもう話が出来てますし、『To HEART』は何か作りづらい。
とにかく、これからもがんばるのでよろしく!!(ペコリ)
けど多分、改訂版出すだろうなぁ・・・