痕−まだまだ癒えぬ痕−2 投稿者:パルティア


「じゃあ、後で。仕事頑張って下さい。」
千鶴さんは、どうしても出なければいけない会議の為、仕事に戻っていった。
おれは呆然とその背中を見つめていた。

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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺の子供・・・・・か
まだ実感が湧かない。しかし、現実は受け止めなければいけない。それは分かって
いる。しかし、割り切れない何かが在った。
「よりにもよって・・・・今とは・・・・・」
千鶴さんも俺も忙しく、また大事な時に、子供が出来るとは・・・。自分のうかつ
さを呪いたかった。避妊・・・・・・・・・・あんな時に言える訳無いか。

しかし・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・嬉しかったりする
きっかけはどうあれ、千鶴さんと結婚できる。嬉しくない訳が無い。深刻な内情と
は別に、少しにやけている自分の表情はそれを代弁していた。千鶴さんも嫌がって
る訳では無く、むしろ喜んでくれていたのも俺の支えになった。

やがて、柏木の家に着く。居間に入ると、梓が夕食の用意をしていた。
「ただいま」
梓に声をかける。だが、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
梓は、一心不乱にキャベツを千切りにしているようで、俺の声が聞こえていない様
だった。こいつにしては珍しい事である。
「おい!ただいまって言ってるだろ!」
少し、大きな声で言ってみる。
「え、あ?いたっ!」
突然、我に返った梓は驚きで手を切ってしまったようだ。
「おい?大丈夫か?悪かった、すまん」
「え、あ、う。」
「え、あ、う?大丈夫か?梓。」
梓は異常な程動揺している。何かあったのか?とにかく、傷の手当てを・・・・
「おい、指、大丈夫か?」
「大丈夫!」
そう叫ぶと、梓はこの場を走り去り、凄い音を立てて階段を上がっていった。
??????何かあったのか?
「・・・・・・変な奴」

やがてその日の夜、千鶴さんは遅くなると電話があり、千鶴さん抜きの4人の夕食
が始まった。今日の夕食は・・・・・・・・・
「梓〜これ酢っぱ過ぎないか?」
「え?そう?ごめん。作り直そうか?」
な、俺は言葉を失っていた。明らかに今日の梓はいつもと違う!先程の異常な動揺
は見せなくなったが、素直すぎる上に優しい。
「今日、キノコ食べたか?梓」
思わず聞いてしまう。
「え?キノコ?食べてないよ。」
「なら、いいんだ。でもこの料理、酸っぱすぎないか?楓ちゃんと初音ちゃんはど
う思う?」
楓ちゃんと初音ちゃんに同意を求めてみる。
「私はそれほど酸っぱいとは思いません。美味しいです」
楓ちゃんが答える。
「そう?初音ちゃんは?」
「私も美味しいと思うよ。」
「そうかな〜〜?」
どうやら、俺だけが感じるらしい。そういう物かな・・・・・と思い直し、食事を
続けた。

食後、俺は居間でテレビをぼんやりと見ていたが、頭hは千鶴さんの事でいっぱい
だった。奥では楓ちゃんと初音ちゃんがトランプで遊んでいるようだった。
やがて、洗い物を終えた梓が近づいてきた。
「耕一・・・・・・・」
「おい、今日はどうしたんだ?お前、変だぞ」
その時、ちょうど奥では、初音ちゃんが負けたらしい。
「お姉ちゃん凄い!また負けちゃった!」
初音ちゃんのかわいい声がここまで聞こえてくる。
「初音ちゃんはいつも子供でかわいいなあ」
思わず俺は呟いていた。
「あれで結構大人だよ、初音は。耕一は子供好き?」
「あ?ああ好きだよ。子供はかわいくて良いよな」
「良かった。もし嫌いって言われたら私、どうしようかと思った・・・・・」
「あ?」
「私、耕一の事好きだよ。誰よりも。だから、耕一とだったらうまくやっていけると思う」
「な・・・・・・何の話だ?お前、どうしたんだ?」
「どうもしてないよ。子供が出来ただけ。」

梓の言った事を知覚した時、世界は色を失い始めた。

そして、これは始まりに過ぎなかったのである・・・・・・・・・・・・続く

注・・・・・・これはろくでもない終わり方をするのでお気を付け下さい。
ムーンライトシンドローム凄すぎ。作者は電波受けているのでは?眠い・・・・
お腹痛い・・・・・・・・・以上、作者近況でした(笑)