るろうに耕一−リーフ剣客浪漫譚−第百十三幕「橋本の心眼 柳川の心眼」 投稿者:パルティア


「殺す?この俺を」
柳川も、橋本も、口に微笑を浮かべながら相手を見つめていた。
「ふ〜ん」
そう言いながらも、橋本の神経は柳川のある一点に集中していた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ひょっとしてお前、神戸で警察のお仲間五十人を殺ったのを、うらんでいるのか?」
その言葉に柳川にわずかに反応が見えた。 わずかに・・・・・・・・・・

「目が見えなくとも、心眼で俺には手に取る様にわかるんだよ。お前の気持ちが
昂っているのが。」 
「俺の前で隠し事は不可能だ。復讐も又一つの正義だ、それは構わねえ。
だがあまり入れ込み過ぎて、冷静さを失うんじゃねえぞ」
言いながら、橋本はクククと小さく笑った。

「・・・・・・・・・成程な・・・・・・・・・・・・・・・・・やはりだ・・・・
お前の心眼は、妖術や魔術やエルクゥの力といった類のものではない」
話し出した柳川に、橋本も笑いを止めた。

「お前の心眼は、心理は読めても思考までは読めていない。警察とは、日本の治安と
民衆の生活を守るのがその任務。 どんな理由であろうと一度その職についた以上、
任務の過程で、命を落とすのは至極当然の事。それを抜刀斎の様に、いちいち気にす
る方がおかしい。 死んだ者が安心してあの世にいける様、残りの任務を完遂せんとは
思うが、復讐のつもり等毛頭無い。」

そこまで言うと柳川は刀を上げ、構え始めた。

「心眼で見えぬなら教えてやる。この俺が昂るのは唯一つ」
そして、鬼突の構えに入った。

「悪・即・猟という、俺自身の正義の為だけだ!!」

「・・・・・・面白れえ。元エルクゥ組三番隊組長柳川一。 相手にとって不足ねえ」
続いて、橋本も構える。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一瞬の間の後、先に動いたのは柳川だった。 凄まじい勢いの鬼突を仕掛ける!

だが、命中!と思われた瞬間、橋本は槍状の武器に付いている鉄球で、鬼突を防いだ!
「・・・これが噂に名高い柳川一の鬼突か。  微温いわ!!」
そして、槍と鉄球で仕掛ける!

「派手にぶっとばすぜ!    宝剣宝玉 百花繚乱!!!!」

とっさに柳川は後ろに飛び、槍と鉄球をかわしたが、胸と脚に三つの傷を負っていた。
「ホウ、傷三つとはなかなかやるじゃねーか」
口元に微笑を浮かべ、橋本には余裕が在った。

・・・・・・そして、双方再びにらみ合いが始まった。

「・・・フフフ 狐につままれたという顔だな。目の見えないはずの俺が、何故狙い
すましたかの如く、鬼突の先端を防御できたか・・・・」
柳川は、無言で橋本を見つめる。

「知りてえか。・・・・そうだろうな。 では、教えてやるよ」
橋本は自分の耳を指差すと、
「お前のいうとおり、心眼は妖術といった類いのものじゃねえ。心眼の答えはコレだ」

「あの日、俺は図書室で志々雄と対峙し、そして光を失った。腰抜けになった俺は、
あいつに会うたびに、あいさつするはめになった。そして、そんなこんなでこの異常
聴覚を身につけた。この異常聴覚にかかれば、人間など音の塊。心臓の鼓動は俺に相
手の心理状態を、筋肉の収縮と骨の摩擦音は攻撃態勢を如実に教えてくれるって訳だ」

言い終えた後、橋本は更に声を上げ、
「これが俺の無敵の心眼!この前では鬼突なんかは、唯の突き同然だ!!」
と叫んだ。

そこで、黙っていた柳川が嘆息しながら口を開いた。
「・・・・・・・着ている制服もそうだが、頭の中身も中々めでたい奴だ」
「なに?」
「鬼突をあまりなめるなよ」

そして、柳川がパチンと指を鳴らした瞬間!橋本の武器の鉄球が砕け散った!
「!」

「心眼の御高説、わざわざどうも。その礼代わりと言ってはなんだが、ここは一つ
俺の心眼もみせてやろうか」
橋本に動揺が走っていた。
「安心しな。心眼と言ってもお前の様な異常聴覚じゃない。俺のいう心眼は、数多の
死線を潜り抜けた剣客だけが持つ読み・・・一言で言えば洞察力だ」

それを聞いて、橋本の表情に笑みと好奇心が浮き出る。
「ホウ・・・面白れえ。その心眼で何を見るってんだ?」

「ずばり!お前が志々雄の仲間になった本当の理由!」
今度の橋本の表情からは笑みが消えていた。
「お前の御高説の中の志々雄に光を奪われた時のくだり・・・・・恨みつのる忌しき
過去のはずなのにお前はうすら笑っていた。それでピンと来たんだ。
ああ、こいつは復讐をあきらめている
心眼を得て自分はより強くなったと思った。だが再会した志々雄は死線をくぐり抜け、
それ以上に強くなっていた。闘ったところで敗北は必至。そして、それまでのお前の
人生全ては無駄に帰す。そこで、お前は志々雄の誘いをスキあらば、いついかなる
時でも殺していいという、条件付きで受け入れる事にした。そうやって常に狙うフリ
をしていれば、少なくとも周囲の人間には、自分の敗北を悟られずに済む・・・・」

「どうだ・・・・・・・当たらずとも遠からずってところだろ」

言い終わると柳川の口から、橋本の口から、
「・・・・・・・フ・・・・・・・フフフ・・・・・・ハハハ・・・・・・・・・・
ハーッハッハハハハハハハハッハ」
大笑いが始まった。・・・が次の瞬間!

「何が可笑しい!!」
そう橋本が叫んだ!

「柳川一・・・・・・・お前の心眼もたいしたものだが・・・・・・・・・・・・・
心眼の使い手はこの俺一人で充分だ!てめえは俺の真の技でブチ殺してやる!!!」
叫び終わると橋本は、背中の甲羅の様な盾と槍を構えた!

「闘いもせず、尻尾を巻いた負け犬が、偉そうに吠えるな。」
柳川も再び鬼突の構えに入る!

次回第百十四幕「突き立てる爪」橋本の威力重視の真の技は?鬼突は?決着は?

感想を頂けたのでまた書いてしまいました。
キャストは全員考えてありますが、一度に発表はしません。
後、読みたい話等お在りでしたら、指定して頂ければ善処させて頂きます。
又長くなりましたが、感想など頂けたら幸いです。