柏木家の暴走 投稿者: へーのき=つかさ
 このSSは大変危険です。
 使用時には、精神科医の診断の元、斜めにお読み下さい。
 また、正常な精神構造をお持ちの方は、直ちに使用を止めてください。

────────────────────────────────────────

 今日は耕一が家にいる。
 そう思うだけで、梓はうきうきとした気分になる。
「今日の夕飯は奮発しちゃおうかなー♪」
 足音軽く、廊下を歩いていたときだった。
「ねえ梓、ちょっと服貸してくれない?」
 自室の扉から頭だけを覗かせ、千鶴は言った。
「服? なんで?」
「ちょ、ちょっとね・・・たまには違った物を着てみたくて・・・」
 もちろん嘘である。
 梓が扉の隙間から部屋の中を覗き込むと、そこにはこんがりと焼けた服だった物と、粉々に粉砕されたアイロンだったものが積まれていた。
 耕一の前で着ようと思ったのだろう。
「はあ・・・」
 溜息が出る。
「ま、別に貸してやってもいいけどね・・・・・・ただサイズが合うかな・・・」
「え? だって私達の身長ってそれほど変わらないでしょ?」
「いや、そうじゃなくてね・・・」
 梓がニヤリとした笑みを浮かべる。
「胸の所が緩いというネタなら、もう聞き飽きたわ・・・」
 突然現れた楓の一言が、梓と千鶴の時間を止めた。
 ウォンも真っ青な見事さだった。
「あ、あんた・・・・・・な、なんてことを」
 狼狽する梓とは対照的に、千鶴は、にっこりと微笑んだ。
「か、え、で、ちゃん? あ、な、た・・・」
「部屋の温度が三度ほど下がったってネタも多いわよね・・・」
 楓の先制攻撃! 千鶴はひるんだ。
「それに、どうしてどこでやってもぴったり三度なのかしら・・・・・・もしかして姉さんってエアコン内蔵してるの?」
 楓の連続攻撃! 千鶴は倒れた。
「ど、どうしちゃったの!? 楓!!」
「ふっ」
 楓は意味ありげな笑みを浮かべた。
「ターゲットを一体撃墜、直ちに次のターゲットの撃墜に移る・・・」

                    ★★★

「う〜ん、初音ちゃんはやっぱり強いなあ」
「そ、そうでもないよぉ」
 その頃、当の耕一と初音は、初音の部屋で和気あいあいと遊んでいた。

                    ★★★

「はあっ」
 梓は夕食の準備に取り掛かっていた。
 ちらりと居間を見る。
 そこには、楓の辛辣なお言葉をいただき廃人になった千鶴が置かれていた。
 なんでこんな事になっちゃったんだろ・・・
 そんな事を考えていた時だった。
「こういう時は、かおりさんが慰めに来るっていうのがお約束よね、姉さん」
 どこからともなく死の宣告を受けた。
「な、何を言うんだ! そんな事言って本当に来たらどうするんだよ!!」
「恐らく今ごろ玄関あたりにいて、姉さんにつけ込む隙を狙っているのよ・・・そして、心優しい梓姉さんはかおりさんを邪険に扱う事ができなくて、最終的には(以下ソフ倫の検閲につき削除)」
「や、やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

「ちっ、ばれたか」
 その頃柏木家の玄関では、盗聴機を持ったかおりが舌打ちしていた。
 楓の一言はひとりの少女の人生を救ったのだ。
 すごいぞ楓! 頑張れ楓!
 来週もその未完なボディにノックアウトだぜ!!

 すごいよ楓さん! 第十三話『楓とデモンズレ○ビアン』<完>

                    ★★★

「なあ、やろうぜ」
「えっ!? あ、あれを?」
「そうだよ、やり方は知ってるだろう?」
「う、うん・・・一応・・・」
「わからないところがあったら俺が教えるからさ。な?」
「・・・わかった・・・・・・お兄ちゃんがどうしてもやりたいって言うんなら・・・」

 どうやら耕一と初音は新しいお遊戯を始めるようだ。

                    ★★★

「やれやれ・・・」
 夕飯の支度ができた梓は、耕一と初音を呼びに向かっていた。
 そして、初音の部屋の扉に手をかけようとした時、

 ずんっ
「あ・・・お兄ちゃんっ!!」

 な、なんだ?

 ギシギシ・・・
「初音ちゃん、まだまだ早いよ」

 ちょっ・・・ちょっとまて!?

「ううっ、ダメッ! そんな事したら・・・ああっ!!」
「ふふふ、可愛いなぁ初音ちゃんは・・・たったこれだけでもう・・・」
「いやぁ・・・あんまりいじめないで・・・」

 こ、これってまさか・・・
 男と女のプロレスごっこ!?
「何してるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 梓は扉を蹴り飛ばして部屋に飛び込んだ。
「うわっ!! 梓!?」
「お、お姉ちゃん!」
 そこで梓が見たものは・・・
「な、何をしてるの・・・」
「え、えーと・・・その、なんだ・・・」
「お、お兄ちゃんがやろうって言うから・・・」
 初音にコブラツイストをかける耕一の姿だった。

                    ★★★

 さて・・・夕食も終わり、一家だんらんの時間がやってきた・・・・・・はずなのだが・・・
 じーっ
 じーっ
 じーっ
 千鶴、梓、楓の視線は、耕一の横に寄り添う初音に注がれていた。
 初音はおもいっきり居心地が悪そうにしていたが、鈍感な耕一は気付かない。
「耕一さん・・・・・・なんで初音にばっかり・・・」
 じっと見ているのに耐え切れなくなって、ついに千鶴が口に出した。
「え? だって俺達はプロレスごっこをするほどの仲だもの」
 よくわからん答えを返す耕一
「で、でも・・・・・・・・・むぎゅっ!!」
 なにか言いたそうな千鶴を押しのけ、女子高生から毒舌家に進化した楓がずずいっと前に出た。
「そんなに初音がいいのですか?」
「ああ!」
 太陽のような輝く笑顔で耕一は答える。
 その瞳には一点の曇りもない。
「では・・・」
 楓は、紙袋から何かを取り出した。
 その何かに耕一の目が釘付けになる。
「ああっ!! それは俺の『マルチの抱き枕』!!」

 ガ・ビーン

 楓以外の姉妹は固まった。
「か、返してくれっ! 頼むから! 俺のまるちぃぃぃぃぃぃぃ!!」
「そんなにマルチが好きですか?」
「おうよっ! 他の誰が何と言おうと、俺はマルチのために生き続ける!!」
「お兄ちゃん・・・」
 初音の目に、涙が光る。
 千鶴と梓は、だくだくと大量の涙と鼻血を流していた。
「マルチは・・・マルチは・・・マルチは俺の物だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 耕一のバックにライジングサンが輝き、ドドーンという効果音と共に、巨大な波が打ち寄せた。
 BGMは、当然『愛國戦隊 大日本のうた』だ。
「あっ!?」
 しかし、耕一の天下も長くは続かなかった。

 祇園精舎の鐘の音、諸行無常の響きあり。
 沙羅双樹の花の色、盛者必衰のことわりをあらはす。
 おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。
 たけき者もつひには滅びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。
  作詞、作曲 は○たいらに3000点

 このような事があってよいのであろうか!
 その波は、あろうことか、マルチの抱き枕を海に引きずり込んでいったのだ。
「マルチィィィィィィィィィィィィィィ!!!」
 耕一は愛するマルチを救うため、荒れ狂う冬の日本海に飛び込んだ。
「ちょっと待て!! ここはウチの居間じゃなかったのかぁぁぁぁぁぁぁ!?」
 梓のツッコミは、マルチに心奪われた男には届かなかった。

                    ★★★

「ばぶびぃぃぃぃぃぃぃぃ!!(訳:まるちぃぃぃぃぃぃぃぃ!!)」
 耕一は、エルクゥパワー全開で海底をさまよっていた。
 彼はひたすら捜し続けた。
 この広い日本海、そこでマルチの抱き枕ひとつを探すなぞ、とても人間わざではない。
「ごべばべぶぶぶばぁっ!!(訳:俺はエルクゥだあっ!!)」
 しかし、彼の執念の捜索もむなしく、ただ時間だけが過ぎて行った。
 耕一の心に、最悪の光景が思い浮かんだ。

 海底にたったひとりで沈んでいるマルチ(の抱き枕)
 やがて、それは少しずつ荒れ狂う海に腐食されてゆく。
 己の崩壊を知り、恐れ、泣き叫ぶマルチ(の抱き枕)
 そして最後にはただの海のもくずに・・・

 耕一は自分の考えに恐怖し、頭をブンブン振った。
 だめだ! 負けを認めてしまった時、それが本当の負けだ!!
 明日は絶対ホームランだって約束したじゃないか!!
 どうにか気を取り直し、再び捜索に戻ろうとした。
 その時だった。

 ぼうっ・・・

 突如、海の中に光が生まれた。
 不思議に思った耕一は、慎重にそちらへ向かっていく。
「!?」
 その光の中には、ひとりの人物がいた。
「せ・・・芹香先輩・・・」
 なんとそこにいたのは、黒いロングのかつらをかぶり、三角帽子とマントと魔道書を装備した楓だった。
 耕一は、ただ楓の姿を見つめている事しかできなかった。
 楓は、ゆっくりと耕一に向かって足を進める。
 そして・・・

 すっ
 なでなで

「せんぱいっ!!」
 感極まった耕一は、楓に抱き付いた。
「・・・何がそんなに悲しいのですか?」
「違うんだ・・・・・・悲しいわけじゃない・・・」
 ぎゅっと力を込めて抱きしめる。
 暗く怪しい部室での抱擁だったが、愛し合うふたりにとっては関係無かった。
 しばらくすると、落ち着いたのか耕一は腕の力をゆるめた。
 耕一は楓の顔を覗き込む。
「先輩は、俺の事が好き?」
 こくり
「そーかそーか」
 楓の目を見詰める耕一、楓はぽっと顔を赤らめ俯いた。
 その顔を上げさせ、耕一は顔を近づける・・・

「やっほー、おひさ」
「綾香!?」
 突然の声に驚き、耕一は振り返った。
 すると、神社の石段を、寺女の制服に身を包んだ千鶴が登ってくるところだった。
「一体なにしに来たんだ?」
「なにしにって・・・敵状視察よ」
 そう言うと、千鶴は耕一の後ろにいる青いショートカットのかつらにセーラー服とウレタンナックルといういでたちの初音を指差した。
「そ、そんな・・・わたしは・・・」
「ははは、そんなに緊張するなよ葵ちゃん」
「そーそー」
「でも・・・」

                    ★★★

 耕一達が妙な世界にトリップしている頃、梓はひとり焦っていた。
「ちくしょーっ! あたしにぴったりな役が無いじゃないか!!」
 どうやら自分も、あの狂った世界に参加するつもりらしい。
 いいのか? 本当に・・・
 やめといたほうが賢明だぞ、梓。
「うーん、セリオは無理だろ、瑠璃子も駄目、あかりもなあ・・・千鶴姉に綾香を取られたのは痛かったなー」
 右手を顎にあて、考え込む。
「そういや、原作はやった事無いけど雀鬼のアレイとイビルも好きだって言ってたような・・・・・・イビルならできそうだな」
 さっそく衣装を用意する。
「・・・ってなんだ!? このきわどい衣装は!! これじゃムチ持った女王様じゃないかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 だいたい胸のでかいイビルなどおかしい。
「ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
 男泣きの梓、そう、男泣きだ。
 一時間ほど自分の不幸を嘆いていた梓だったが、突如泣きやんで立ち上がった。
「そうだ! あるじゃないか! あたし向けのやつが!!」
 そう言って、特徴的な髪型のかつらをかぶり、尖がった耳飾りのような物をつけ、見慣れぬ制服を着て、腕に何かの腕章を付けた。
「──私はセキュリティを司る者、人呼んで破壊の女神、Dセリ・・・」
「「内輪ネタはやめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」
 謎の力に吹き飛ばされ、梓はきりもみしながら奈落の底に落ちていった。
 ひたすらに、落ちて、落ちて、堕ちていった。

「どうして、どうしてあたしはこんなに不幸なんだろう」

「どうして、どうしてわたしはこんなに可愛いんだろう」
 梓の心の声に、楓がビールをマイグラスに注ぎながら続けた。
 エルクゥのテレパシー能力だった。

 なにはともあれ、やっぱり梓は限りなく不幸だった。
「それがステータスだしね」
 楓の毒舌、大好調。

                    ★★★

「にゃにゃにゃ〜ん」
 梓がきりもみしながら薔薇空間に飲まれようとしていた頃。
 台所では、たまが冷蔵庫を漁ろうとして手を伸ばしたところだった。
「にゃんにゃん、にゃにゃにゃんにゃん(訳:たまには豪華に、お頭付きの魚が欲しいにゃあ)」

 どげしっ!!

 突如冷蔵庫のドアが吹っ飛び、中から寺女の制服を着た千鶴が転がりだしてきた。
「くうっ、ヤクザキックキャンセルヨークにお願いをマスターしていたなんて・・・・・・こうなったらスーパーレザム人4になるしか手は・・・ってあら?」
 千鶴はようやく、自分が柏木家の台所にいる事に気付いた。
「なんで台所に・・・・・・さっきまでイ○クに乗り込んでフセ○ン大統領とライトセーバーで漢の友情について議論していたはずなのに・・・・・・台所!?」
 そこで、千鶴の目が光った。
 すぐにあたりの気配を探る。
「ふふ、梓はいないようね・・・今こそ耕一さんに愛の手料理をごちそうするチャンス!!」
 そして、常識を逸した展開に唖然としていた、たまの首根っこを引っ掴んだ。
「味見を頼むわね・・・」
 こうして、尊い命がまたひとつ失われた。

                    ★★★

 ここは柏木家の耕一の部屋
 いつ戻ったのかは知らないが、耕一と初音が楽しそうに雑談していた。
 ちなみに耕一の背後には、例の抱き枕が鎮座している。
 どうやら無事見つかったらしい。
 よかったね、耕一・・・

「ところで・・・・・・初音ちゃんにいい事教えてあげようか?」
 耕一は突然話題を変えた。
「え? なになに」
 無邪気な顔をして、その話題に乗る初音
「ふふふ、大人の世界の事をね・・・・・・・・・ごにょごにょ」
「えっ!?」
 さすがにびっくりした顔になる。
「知りたい?」
「え・・・えっとぉ」
 もじもじと体を動かすのが可愛らしい。
「知りたい?」
「う、うん」
 上目遣いに耕一の顔を見つめ、かすかにだが首を縦に振った。
「よーし、じゃあ!」
「待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
 息も絶え絶えに、ずたぼろの梓が飛び込んできた。
 いやに男臭いような気がするのは、多分気のせいだろう。
「ぜえ、ぜえ、ぜえ・・・」
「な、なんだよ梓・・・・・・それにそのある意味野生的なカッコはなんなんだ?」
「ど、どうだっていいだろ・・・・・・と、とにかく・・・初音に・・・変な事するんじゃないよ!!」
 梓は耕一に指をびしっと突きつけた。
「???」
 しかし耕一は困惑した顔をしている。
「なんだよ、初めて飲み屋に行った時の体験を語るくらいいいだろ?」
「へ?」
「どうしたんだよお前・・・何か変だぞ」
「それに、このてのネタは二回目だしね・・・」
 いつのまにか部屋にいた楓の追撃。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
 梓は泣きながら走り去って行った。
「一体どうしたってんだ・・・」
 それと行き違いに・・・
「こぉいちさぁぁぁぁぁん♪」

 びくぅ

 何故か耕一は反射的に身を縮み込ませた。
「姉さんったら、どうして毎回毎回同じ事やるのかしら。一度頭かち割って中覗いてみたいものだわ」
「お兄ちゃん・・・・・・わたし、いつまでたってもお兄ちゃんの事忘れないよ・・・」
 楓と初音の言葉は、耕一の精神をさらに追い詰めて行った。
「あ、あ、あ・・・」
「耕一さん、実は・・・」

 <唐突に完>

────────────────────────────────────────

綾香  「な、なにこれ・・・」
へーのき「・・・・・・・・・」
マルチ 「へーのきさんが、あのほのぼの作家のへーのきさんがぁぁぁぁ」
へーのき「セバスちゃん、電話届いた?」
あかり 「・・・・・・・・・」(脅えた目でへーのきを見る)
瑠璃子 「もう遅いよ、へーのきちゃんは扉を開いちゃったんだよ」
へーのき「あなたを・・・転がします!!」

 現在へーのきは精神的に壊れているため、苦情、大袈裟、紛らわしい広告はジャロまで。

http://www.alles.or.jp/~vpcrow/