藤田家子育て戦記 その2 投稿者:へーのき=つかさ
                           MISSION 3 おむつを換えよ


 「ふぎゃっ、ふぎゃ・・・」
 「あううっ、まるちゃん泣かないでくださぁ〜い」
  マルチが真瑠を抱きかかえておろおろしている。
 「おなかが空いたんじゃないか?」
  オレはそう訊いた。
 「ちがいますぅ、さっきミルク飲んだばかりですよぉ」
  違うのか・・・・・・じゃあ、何だ?
 「うう〜〜ん」
 「どうしましょう」
  ふたりで悩んでいると、あかりがやってきた。
 「おむつを換えて欲しいんじゃないの?」
  おおっ! さすがあかり。
  ・・・って、これくらい自分で気付かにゃ・・・


 「こうやってウェッティで綺麗に拭いて・・・ちゃんと拭かないとかぶれちゃうからね。そ
 して、おむつのテープはこの位置に貼って・・・」
 「うわー、あかりさんすごいですー」
 「そんなんで感心するなよ」(苦笑)
 「──あかりさん、今日の夕食ですが・・・」
  そんなやりとりをしていると、一階からセリオの声が聞こえた。
 「あっ、そうだ、今日はわたしが当番だったっけ・・・」
 「え? まだ何も用意してないの?」
 「急がなきゃ! あ、マルチちゃんこのおむつお願いね」
  あかりは丸めたおむつをマルチに押し付けると、バタバタと階段を駆け降り・・・
  どしんっ!
  廊下で転んだ。


  あかりは流れるような動きで料理を作ってゆく。
  いつも思う事だが、普段のどん臭さが嘘のようだ。
 「あかりさーん、洗濯機回しておきましたよー」
 「あっ、ありがとうマルチちゃん」
  にっこり微笑むと、再び料理に取り掛かり・・・・・・三秒間のフリーズ。
 「「洗濯機?」」
  オレとあかりの声がハモった。
 「マルチちゃん、洗濯機って・・・わたし何か洗い物お願いしたっけ?」
  その問いにマルチは首をかしげた。
 「え、だってあかりさんがおむつをお願いねって・・・」
  オレとあかりは一瞬で凍り付いた。
  そしてオレ達の考えを肯定するかのようにセリオの声が・・・

 「──あかりさん、洗面所の方から何か異臭がするのですが・・・」


  ちなみにその日の夕食はカレーだった。





                          MISSION 4 寝かしつけよ



 「ただいまー」
 「おかえりなさい浩之ちゃん。今日は遅かったね」
 「ああ、なんかいきなりでかい仕事が入っちまってなー。無理矢理残業させられちまった
 ぜ」
  オレはできるだけ茶化して言ったつもりだったが、あかりはそうとらなかったようだ。
 「ホントに・・・体大切にしてね・・・」
  おもいっきり心配している。
  おいおい・・・
 「何言ってんだよ。オレはこれくらいでくたばるようなタマじゃねーぞ」
  両手をブンブン振り回しながら言うと、あかりはくすっと笑った。
 「ほらほら、辛気臭い顔してんなよ」
 「ふふ、そうだね」


 「ひかり達はどうした?」
 「今マルチちゃんが寝かしつけてるよ」
  そうか、もう寝ちまうのか・・・
  ホント、赤ちゃんってのはよく寝るよなあ・・・
 「さ、あかり・・・・・・メシっ!」
 「はいはい・・・」
  その時、二階からなにか声が聞こえてきた。

 「ふぎゃっ、ふぎゃっ」
 「おぎゃ〜〜〜」
 「あううううっ、みなさん泣かないでくださぁぁぁぁぁい」

 「・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・」
 「・・・寝かしつけてるって?」
 「・・・う、うん・・・」


  寝室に来てみると、マルチは芹菜、ひかり、真瑠に囲まれ座り込んでいた。
 「ぐすっ、ううぅ・・・浩之さぁ〜〜〜〜〜ん・・・」
  なに情けない声出してんだ・・・
 「マルチちゃん」
  あかりはマルチの横に腰を下ろした。
 「あっ、あかりさんなんとかしてくださぁ〜〜〜い・・・」
  しかしあかりは首を振った。
 「だめ、マルチちゃんが自分で寝かしつけるの」
 「ええぇ、無理ですぅ〜〜〜。わたしがいくら言ってもみなさん全然寝てくれないんです
 ぅぅぅぅぅ」
  そんなマルチにあかりはやさしい笑みを見せた。
 「それはね、マルチちゃんが泣いてるからだよ」
 「えっ?」
  わかりませーんという顔をしているマルチ。
 「赤ちゃんはね、お母さんの気持ちが分かるの」
 「気持ち?」
 「そう、みんなが泣くのはマルチちゃんが泣いてるからなんだよ」
 「じゃ、じゃあどうするばいいんですか!?」
  マルチは、涙を拭くとあかりに向かい直った。
 「一緒に寝てあげるの。添い寝して、優しくなでてあげるのよ」
 「いっしょにですか・・・」
 「そう」
  マルチの顔から涙が消え、かわりに強い意志が生まれた。
 「がんばりますっ! あかりさん」
  あかりの手をぎゅっと握り、目を見詰める。
 「が、頑張ってね・・・」
  いきなりの変わりように、さすがのあかりもたじろいだようだった。


 「おまえいい事言うなー」
 「えへへ、お母さんからの受け売りなんだけどね」


  あれから十数分後。
 「・・・静かだな」
 「うん、もう眠ったみたいだね」
  二階からは何も聞こえてこない。
 「・・・ところで、なんでマルチは降りてこないんだ?」
 「そういえばそうだね、どうしたんだろう」
 「・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・」
  オレ達は心配になって、再び寝室に向かった。

  部屋の前にやってきた。
 「マルチぃ〜」
  呼んでみたが返事は無い。
  オレは戸を開け、部屋の中へ入った。
 「あっ!」
  オレの声にあかりも部屋の中に入ってきた。
  そこでオレ達が見た物は・・・
  静かに眠る我が愛娘たち。
  そして、その三人の真ん中には・・・
  幸せそうな顔をして、マルチがスースー眠っていた。

 「なんだ、寝かしつけながら自分も寝ちまったのか」
 「そうみたいだね」
  もう一度マルチの顔を見る。
  気持ち良さそうな顔しやがって・・・
 「なんかこうして見ると、マルチちゃんもひかり達の姉妹みたいだね」
 「ははっ、言えてら」
  オレはマルチの足元にしゃがみこむと、肩に手を伸ばし・・・・・・何もせずに引っ込めた。
 「このまま寝かしといてやるか」
 「そうだね」
 「おやすみ、芹菜、ひかり、真瑠、そしてマルチ・・・」
  オレ達は物音を立てないよう、静かに部屋を出た。





                   MISSION 5 おもちゃを与えよ



 「おもちゃ?」
 「うん」
  ここは我が家のリビング。
  あかりが突然、子供たちにおもちゃを与えようと言ってきた。
  ちなみに、オレとあかりはソファーに座り、マルチとセリオは子供たちをあやしてい
 る。
 「まだこんなに小さいんだぜ? おもちゃなんかで遊ぶのか?」
  おれは当然の質問をした。
 「う〜ん、おもちゃって言うと少し語弊があるかも・・・・・・肌身放さず持っている物って
 言った方がいいかな」
 「肌身放さず持っている物?」
  なんだそりゃ、お守りか?
 「そう、ようするに親代わりに側に置いておく物の事。よく小さい子がどこに行く時も
 ぬいぐるみを抱えてたりするでしょ。ああいう物があると安心するの」
  なるほど、そう言われてみればそんなような・・・
 「ね? だから何かあげようよ」


 「おまえって・・・」
 「ん、何? 浩之ちゃん」
  あかりが持ってきたのは、予想通りくまのぬいぐるみだった。
 「おまえ、ひかりまでクマフェチにするつもりか?」
 「べ、別にそういうつもりじゃ・・・・・・・・・あ、ほら見て! ひかりもくまのぬいぐるみ
 喜んでるよ」
  ひかりはくまの頭にかぶりつき、ちゅーちゅー吸っていた。
 「気に入らないから噛み付いてるんじゃないのか?」
 「ちっ、違うよぉ〜」
 「どーだか」
 「浩之ちゃんの意地悪・・・」

  マルチが持ってきたのは・・・・・・なんと雑巾だった。
 「マルチ・・・なんで雑巾なんだ?」
 「だってこういう時はタオルやハンカチなどを与えるといいって書いてありますよ」
  そう言って育児雑誌を取り出した。
  こういう物で勉強してるわけか・・・・・・感心感心。
  でもねぇ・・・
 「なんで雑巾なんだ?」
 「それは、綺麗好きな子になって欲しいからですー」
  キラキラとした目で言う。
 「その志はいいけどさぁ、やっぱこのただの雑巾ってのは味気なくないか?」
 「そうですかぁ? ・・・じゃあわたしが作ります!」
 「へ?」
 「がんばりますぅー」
 「あ、ちょ、ちょっと待てって!」
  結局真瑠は、マルチが黄色いスポーツタオルを赤い糸で縫って作ったカラフルな雑巾
 を与えられた。

  で、セリオが持ってきたのは・・・
 「どこにこんな物があったんだ?」
  DVD−ROMをかたどったミニ座布団だった。
 「──この前雑誌のアンケートに答えたところ、これが送られてきたのです」
 「アンケートねえ・・・」
  一体何の雑誌のアンケートだったのだろうか。
  ウチでは育児関連以外の雑誌は買っていないはずなのだが・・・・・・実に興味深い。
  一方芹菜は芹菜で、その座布団を何故か頭にのっけてぽ〜っとしていたりする。
  怪しすぎるぞおまいら・・・


 「なんか異様な光景に見えるんだが・・・」
 「そう? かわいいじゃない」
  そう、確かにかわいい、だがよく考えてみると・・・
  くまにかぶりつくひかり、雑巾を舐めている真瑠、DVDを頭に乗っけている芹菜・
 ・・・・・なんかシュールだ。
 「まるちゃん気に入ってくれましたかー?」
 「─────」(ぼぉーっ)
  やっぱり何かおかしいぞぉ!?

                                         続く

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 テスト前なのにこんな物書いてるへーのきです。
 だめですねー


MISSION 3 おむつを換えよ
 だいたいおむつの話というと、換えてる最中に引っ掛けられるというのが王道(笑)なのですが、
それでは芸が無いのでひとつ上を行ってみました。(爆)
 食事中だったという方、食べながらパソコンいじるあなたが悪い。(責任転嫁)

MISSION 4 寝かしつけよ
 この連載を開始するにあたって、絶対に書いておきたかった話、その1です。
 ここに書かれている事は本当で、赤ちゃんは親の気持ちを読み取る事ができます。
 時々、赤ちゃんが寝なくてイライラすると言う人がいますが、それは逆で、イライラしているから
赤ちゃんが寝ないのです。
 う〜ん、なんだか子育て講座だなぁ。

MISSION 5 おもちゃを与えよ
 ここで出てきた小物は、以後の話でもちょくちょく出てきます。
 ちなみに、これらの小物は子供たちの性格などに影響していきます。


感想&レス

久々野 彰さん
 とうとうデンパマン終わりましたねぇ。
 早くいつでもインターネットできるような環境になるといいですね。
 ・・・って、オレもあと一年の間に自宅からできるようにせねば!
>でもやっぱり瑠璃子に手を出す人はいませんか・・・あの二人が怖いのかなぁ・・・(笑)。
>へーのき様のは特に誰って分からないし・・・(今の所)。
 へーのきのパートナーは、実はセリオだったりします。
 ちなみに始めは瑠璃子さんだったのですが、電波のふたりが恐くてやめました。(笑)

風見 ひなたさん
『(無題)』
 相変わらず赤十字美加香がいい感じ。
 愛の使者エルクゥユウヤはもっといい感じ。
 ぶっとびました。
>とどめに暴走したへーのきにタコ殴りにされる…
 へーのきは暴走しません。
 なぜなら、キレると同時に超必殺技「ハルマゲドン」が発動し、辺り一面が焦土と化すからです。
 ・・・と言っておくのを忘れてました。

dyeさん
>赤ちゃん、それぞれ育ての親に似るんでしょうね・・・
 赤ちゃんの性格は、育ての親+浩之の性格の一部になります。
 ちなみに芹奈は、バリバリの○○○○に、
 ひかりは○○○○な性格を受け継ぎます。
 真瑠は未定(笑)

西山英志さん
『スランプの時に『Lメモ』』
 出してくれてありがとーございますー

セリスさん
>続き頑張って下さい〜。
 頑張って書きました〜。
 (テストを頑張れって!)

カレルレンさん
『イリュージョン』
 きれいですねー
 こういう話を書けるようになりたいものです。


Runeさん及びLメモ執筆陣の方々へ
 実はへーのきのパートナーはセリオなのですが、生徒として通うセリオとは別物の、カスタムされた
特別製という事に勝手に決定しました。
 ちなみにそのカスタムセリオの正式名称は『HM−13D』で、通称『Dセリオ』
 なんと、Leaf学園に設置されたセキュリティシステムの端末のひとつです。
 普通のセリオとの違いは・・・
 1.武器を大量に内蔵している(ジン・ジャザムを超えるという噂)
 2.合体、変形までする
 3.中途半端に心を持っており、真面目なのかボケてるのかわからない
   (『藤田家子育て戦記』のセリオを参照)
 ちなみに、Dセリオとへーのきの出会いは、夜の学校でした。
 例のごとく柳川に荷物運びをたのまれたへーのき、しかし、大量&怪しげな荷物に苦労し、気付いた
時はもう夜中。
 慌てて帰ろうとするが、巡回していたDセリオに見つかりドロボウと間違われてしまう。
 学校が壊滅するほどの死闘のすえ、誤解も解け、お互いに打ち解けあう。
 それからというもの、ふたりはちょくちょく会うようになったのです。
 現在のDセリオはへーのきの趣味に毒されていて、メカ豪鬼(MSH VS ストリートファイター)
とライアット(サイバーボッツ)を尊敬するカプコンフリークに成り下がっています。
 そして、彼女とのツープラトンは・・・・・・まだ言わないでおこう・・・

http://www.alles.or.jp/~vpcrow/