GUARDS of GAIA 投稿者: ハイドラント
  お前さん、鬼を知っているかね?

  そう、鬼さ。人を食い殺す、角の生えた化物のことさ。

  当たり前だ? 子供でも知っているって?

  違う、違うよ。

  儂が言っているのは、本物の鬼のことさ。

  そう胡散臭そうな顔をするものじゃない。まあ聞きなされ。

  この世界には、存在するのだよ。

  鬼という獣が。人を狩れという、神さまの命令を受けたものが。

  どういうことかって?

  お怒りなのさ。大地の神さまは。

  人間という害獣が、自分の体を汚し尽くしていくことにね。

  自分を凌辱し、支配者を気取っている、人という存在に対してね。

  そこで、鬼をおつくりになったのさ。

  この地上で唯一、人間を狩ることの出来る獣を。

  それは最強の獣だ。

  決して獲物を逃がさぬ脚。一撃で獲物を仕留める腕。

  何? そんなものなら虎だって持っている?

  そうだね。だけど、それだけじゃないんだよ。

  鬼は、化けるのさ。人間にね。

  普段は人の世界で、人として暮らしている。

  そして狩りをする時だけ、鬼の姿に戻る。

  そう、擬態というやつさ。

  だから人間は決して鬼の正体を知ることが出来ない。

  何せ、普段は見分けがつかないし、鬼の姿を見た者は全て狩られてしまうの
だからね。

  姿なき狩猟者、とでも言ったものかな。

  人間は敵の正体を知ることも出来ないまま、殺されていくしかないのさ。恐
ろしい話じゃないか、うふふ。

  ……ホウ、ホウ? なら何故お前は知っているのかって?

  そりゃあ、簡単だ。

  鬼の正体を知る者は、鬼だけさ。

  儂やお前さんのような鬼だけが、その存在を知っている。

  ……分からないはずがないだろう? 鬼は同族の気配を感じ取ることが出来る。
お前さんも、儂の気配を辿ってここまで来たのだろうに。

  目的は、同族狩りだな。人間狩りに飽きたのか。

  だが、せっかく見つけた同族がこんな老爺で、興醒めしたようだね。

  安心なさいよ、お若いの。

  まだ儂の鬼の力は衰えておらぬでな。感じぬか、儂の力を?

  ……顔付きが変わったな。

  ふふふ、そうか。儂を狩るか。

  嬉しいことを言ってくれる。

  儂も久しく、美しい炎を見ておらぬからの。

  お主の命の炎、いかほどのものか、楽しみでたまらぬよ。

  さあ……

  狩りの、始まりだ!




                                      「GUARDS  of  GAIA」