「父から二人に、祝福を」最終話 投稿者:ハイドラント


              最終話  春風




>side.B  幻・・・あるいは真実


「なんでだよ・・・」
 荒れ果てた大地の上。
 一人の男が、虚ろな声で呟く。
「なんで、こんなことになったんだよ・・・。」
「・・・言った筈です。」
 背後に立つ少女が、静かに言う。
「楓は、やがて破滅を生む。わたしはそう言った筈です。
 楓と、あなたとが結ばれる事で、二人に強い思いを抱くダリエリの魂が呼ばれ・
・・・。
 よりにもよって、あなたの息子として転生してしまった。
 唯一ダリエリを止める力を持つ、あなたの。
 だから、わたしはあなたたちを結び付けたくなかった。
 楓があの時死んでいれば、ダリエリがこれほど早く転生する事はなかったでしょ
う。
 もし転生したとしても、あなたがそれを止める筈だった。
 ヨークがこの星に降り立つことは、未然に防がれる筈だった。
 ・・・でも、全ての可能性は閉ざされたのです。
 あなたと楓が、結ばれたときに。」
 それはまるで、罪人に犯した罪状を突きつけるかのような口調だった。
 男が激した。
「分からない・・・分からないよ!
 俺達が、実の兄妹なのに愛し合ったから・・・だから神の怒りを買ったとでも言
うのかよ!!」
 男の叫び。
 それを聞き・・・・少女は、小さく呟く。
「・・・そうかも、しれません。」




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「止められなかったようだな。」
「・・・はい。あの星は『狩猟者』の手に掛かってしまいました。我々が危惧した
通りに。」
「あの星は、この宇宙において極めて重要な位置にある。だからこそ、汝を直接あ
の世界へと派遣したのだが。」
「わたしの力では、不足だったようです。」
「我々の力が及ばなかったとすれば、それは『主』の意志であろう。」
「いえ、その結論はまだ早いかと。」
「・・・黄金律に、干渉すると言うのか?」
「はい。」
「それは、『禁』である。宇宙に大きな歪みをもたらす事になるかも知れぬ。」
「現状のまま放置しておけば、いずれ宇宙全体の滅亡が起こる可能性もあると、我
々は推測しています。」
「確かに、その通り。かような事態を未然に防ぐのが、我ら『管理者』の務め。」
「だからこそ、我々には黄金律に干渉する力があるのです。『禁』と定められては
いますが、真に許されざる事であれば、そもそも不可能なはず。」
「・・・然り。では、我らの手により、新たな流れを作ることに決定する。」
「はい。」
「我は、黄金律への干渉による歪みを最小限に抑える。
 汝は、新たな流れの構築を遂行せよ。」
「承知しました。では、わたしは今一度あの世界に・・・」
「それは、許さぬ。我々が歴史に直接介入することもまた『禁』。
 重ねて『禁』を犯せば、歪みはもはや押さえきれぬものになるであろう。
 ・・・許さぬ。」
「・・・・・はい。」




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>side.A  現実・・・あるいは虚構


 そして、嵐が過ぎた後。
 わたしは再び、この大地の上に降り立った。
 かつての美しさはもはや見る影もない、この荒れ果てた星に。
 わたしの前には、二人の人間が倒れている。
 柏木耕一と、柏木楓。
 わたしは、答えることのない二人に語りかけた。
「あなた達は、余りに強く、激しくお互いを呼び合っていた。
 だから、同じところに兄妹として転生しようとしていた。
 そして・・・・・」
 わたしは、彼の叫びを思い起こした。
 目の前の彼とは異なる・・・しかし同じ耕一の叫びを。
「この星を救うため、私は破滅に向けて歩んだ流れとは異なる、新たな流れを生み
出すことにした。
  そして、破滅を避けるために、留意すべき事は何か考えた。
  答えは・・・・・。
  あなた達は近くにいてはいけない。実の兄妹であったにも関わらず、結ばれてし
まったのだから。
 そう思ったわたしは、引き合う二人を可能な限り引き離して、従兄妹の関係にし
た。そして念のため、千鶴、梓、初音の三人を楓と同じ位置に配し、耕一と結ばれ
る可能性を作った・・・・。」
 穏やかな風が流れていく。
 暖かい、春をのせた風。
「それでも、あなた達は結ばれ、そして破滅を生んでしまった。
 ・・・・・でも」
 わたしは、空を見上げた。
 雲一つない、抜けるような青空が広がっている。
「それは、神の意志・・・。」
「わたし達『管理者』が、ここまで介入しても止められなかったのならば、それは
『主』の意志・・・。」
 わたしは、二人の顔を見つめた。
 静かな表情。
「柏木君、楓さん・・・。」
 わたしは、そっと呼びかけた。
 二人の前に屈み込み、耕一の右手と、楓の左手をとる。
「あなた達が愛し合った事は、過ちではなく、主の意志だったのです。」
 それを、しっかりと握り合わせる。
「柏木君・・・楓さん・・・・あなた達は・・・・・」
 わたしは、二人に語りかけた。
 目の前の二人と・・・あの兄妹に。
「あなた達は、神の祝福を受けていたのです。」
 そしてわたしは、二人の手の上に花を置いた。
 祝福の、花を。




                          二人に、祝福を。






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HY=ハイドラント
柚那=姫路柚那

HY:お、終わった・・・。皆さん、見て頂けましたか? ハイドラントの力と
      技の全て・・・・・。
柚那:あの・・・なんか体が白いですよ?
HY:燃えた・・・燃え尽きた・・・真っ白に・・・・・・・・・・・・・。
柚那:・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
      どうやら、テンションが切れたようですね。しかし、良くここまで持た
     せたもんです。この作者、最後は音楽の力でテンションを維持したりも
     してました。意志は黒さんの影響を受けたようです。
      ちなみにそれは、「アトラク=Oクア」の曲。私の誘惑シーンでは「R
     unning clouds(MB)」、戦闘シーンで「Throwin
     g into banquet」と「Huge battle」を、そして
     最後は「Adoption」を、大音量で鳴らしていました。近所迷惑
     な話ですね、ホント。
      ま、その効果も切れ、作者が完全に燃え尽きた鼻持ちならないジョー・
     矢吹になってしまいましたので、代わりまして、わたしが最後の後書き
     及び解説を担当致します。
      まず、最終話のside.BとAの間にある文。
      あれは、第一話の冒頭に載せたものと全く同じですが・・・。
      そこで触れられている、「黄金律」について。
      これは、「因果律」と置き換えてもいい・・・のかな?
      とにかく、この宇宙の歴史の全て・・・過去、現在、そして未来・・・
     が記録されているもの、と作者はイメージしていたようです。
      わたしたち、「管理者」は、それを不完全ながら読み、宇宙に迫る危機
     を未然に回避するのが仕事です。
      ちなみに「管理者」というのは、いわゆる高次元存在というもので、時
     間や空間を操る力を持ちます。「天地無用!」の精霊・津名魅のような
     ものです。
      ただし、その力は完全なものではありません。現にわたしは、破滅の歴
     史を変えようとして失敗したわけですし。
      完全ではない、とはどういうことか?
      まず、わたし達が歴史に介入出来るポイントが限られているという事。
      いつでもいい、という訳ではないんですね。今回の場合、耕一たちがダ
     リエリや祐也と戦う事件の時しか、介入のチャンスは無かったのです。
      もう一つは、歴史に対し、わたし達があまり干渉しすぎると、歴史その
     ものを破壊してしまう可能性があるということです。例えて言うなら、
     素人が機械を修理しようとすると、完全に壊してしまうことがある、と
     いうようなものですか。
      そういった制限が無ければ、話は簡単だったんですけど。楓をわたしが
     殺してしまうとか、もっと簡単にダリエリを歴史から消してしまうとか。
      このあたりの事は、「YU−NO」をプレイされた方や、「グイン・サ
     ーガ」を読まれている方なら、割とスムーズに理解していただけるかも
     知れません。
      この作品で、わたしのした事を説明しますと、まず人間として地球に現
     れ、耕一と楓兄妹の仲を邪魔しようとしました。しかし失敗、結果地球
     はエルクゥの魔の手に。(side.B)
      その後、諦めの悪いわたしは、今度は黄金律に介入、side.Bの歴
     史を無かったことにし、いろいろといじくって新しい歴史を作ろうとし
     たわけです。(side.A、及び原作の楓シナリオ)
      でも結局、やっぱり地球は狩られてしまいました。
      それで最終話のside.Aになるわけです。
      side.AのストーリーはBの耕一の夢だと思っていた方々。実はそ
     れは、作者の陰険なトリック。実際はこういう事情だったのです。第一
     話のAだけなんですよ、Bの耕一が見ていた夢って。
      ・・・「分かるわけねーだろ、そんなの」って声が聞こえてきそうです
     ね。実はそれを作者も気にかけていたらしく、第一話には色々と配慮し
     ていたようですが。
   (作者注・だから第一話を出すのに時間が掛かったんです。)
      もう一度、第一話から通して読んでいただければ、分かるかもしれませ
     ん。
      まさたさんの図書館に収録されておりますので、そちらに御足労願いま
     す。下のリンクをご利用ください。(ひょっとして、こういうの勝手に
     やったらまずいのかな? だとしたらごめんなさい、まさたさん)


>「どうしようもない僕に降りて来た天使」久々野彰さん
  考えさせられたお話でした。セリオと久々野さんにお礼を言わせて頂きます。
  私の答えは・・・まだ、見つかりません。
  見つけたら、SSの形でお目にかけたいと思います。

>「藤田家子育て戦記 その四」へーのき=つかささん
「お米屋さん」を熱心に見る子供たち・・・将来が楽しみですね(笑)。
  頑張れヒロパパ。

>「あかりちゃんちのヒロユキくん」まさたさん
  楽しませていただきました。男だな、くまヒロ。
  しかし、血統証って・・・バーコードかなんかでしょうか(笑)。

>「ファンタジアfromリーフ」意志は黒さん
  お、第二弾ですか。
  今回もばっちりシンクロしてますね。
「っあれっ?」の所、分かりましたよ。多分・・・。

>「優しさの結末 四日目午前」智波さん
「光の剣」だったのかぁぁぁ!!(爆) いや、どっちかと言うとライトセー
バーか? 
  宇宙人の超科学兵器だからなあ・・・そういうのも確かにアリだ。
  それはともかく、記憶を取り戻してしまいましたね。
  この後、楓がどう絡んでくるのか、すごく楽しみです。 

>セリスさん
  >楓ちゃんが可愛いです。
  そう言ってもらえると嬉しいです。苦心した甲斐があった・・・。

>ジン・ジャザムさん
 >確か、魔法か何かを使う軍と地球側の戦いで……
 シリウス連邦のエーテル使いの事ですね、多分。私も最初から読んでいたわけ
 ではないので良く知らんのですが。
「若ハゲ様」ことセドウ・タクナが私のお気に入りでした。渾名通り、美形な
のにハゲ(笑)。あとは正体バレバレの覆面コーチX(笑)。
 >3025年の戦友殿へ
 ジンさんは、どちらかというとTRPGの方ですね? 私もそちらはやってま
したが、ヴァーチャル・リアリティの「バトルテック」もやってました。
 ご存知ありませんか? 今はどうか知りませんが、渋谷の「Dr.ジーカンス」
や秋葉原の「ヤマギワ」に、設置されてたんですよ。本物のコクピットのよう
な席に座ってやるゲームなんですが、これが面白かった! でも一回千円。(爆)
 あとはパソコン用の「メックウォリアー2」とか。ブラックウィドウことナタ
ーシャ・ケレンスキーの最期が見られます。


柚那:三月二日から九日間、この連載に最後まで付き合って下さった方々、有
     難う御座いました。
      ハイドラントは、しばらくSSは書けそうにありませんが、皆さんの作
     品を読んだり、感想やレスをちょこちょこ書き込んだりする位のことは
     出来るでしょう、多分。
      そんな事をしているうちに、ある日突然復活したりするんじゃないでしょ
     うか。その時には、「ああ、また始めやがったよコイツ」とため息でも
     つきながら眺めてやって下さい。
    「キャラは全員皆殺し」殺戮電波的SS使いのこの男のことですから、きっ
     とまたそういう話でしょう。本人は、次の時は笑える話を書いてみたい
     とか言っていましたが、それを言うなら今回も最初の予定では恋愛コメ
     ディだった筈ですし・・・ね。
      最後に一つ。あのエピローグについて。
      作者は、賛否がはっきり分かれるのを覚悟しています。どうぞ遠慮の無
     い感想をお寄せ下さい。
      ・・・・・あ、作者が最後に一言言いたいそうです。
      えーと・・・・
    「私は神を信仰してるわけではなく、運命論者でもありません。
      私がこの作品で言いたかったのは、『愛は倫理を超え得る』この一言に
     尽きます。兄妹、親子といった血縁関係を凌駕する愛の形は存在する。
     私はそう信じています。
      引き合う二人を受け入れる容量も無いような世界なら、滅んだところで
     大して惜しくもない・・・。
      最後に、私は剣乃ゆきひろ先生を心から尊敬しています・・・・」
      ・・・・・だそうです。
     では、今回はここまでとさせていただきます。皆様、本当に有難う御座
     いました。

                              (閉幕)

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