スーパーリーフ大戦!! 投稿者:猫玉
 超人的な頭脳と、並外れた決断力を持った一人の科学者がいた。
 彼は緻密な調査によって、外宇宙からの侵略者『エルクゥ』の存在を知り、持てる
力の全てを注ぎ込んだ一体のロボットを造り上げた。
 そのロボットの名はヴァルシオン……
 絶大なパワーを誇る究極のロボットである。
 彼、長瀬博士は『エルクゥ』に立ち向かうにはまず、地球の総力を結集することが
必要だと考え、秘密結社『DC』を設立する。
 DCの目的はただ一つ。力による世界統一……すなわち世界征服であった。
 DCとヴァルシオンの圧倒的な力の前に、最強とうたわれた国連軍でさえも全くの
無力であった。
 だが、全世界の8割がDCによって支配されるようになっても抵抗を続ける人々が
いた。
 その名は『聖(セント)・リーフ隊』。
 彼らはガンダム、マジンガーZ、ゲッターロボの3体のロボットを中心に、DCの
支配に公然と反旗を翻したのだった。
 そして、今……
 全世界を震撼させる『スーパーリーフ大戦』が始まろうとしている!!

「これよりベルファスト基地を攻撃、かつ、捕えられているZガンダムと楓を救出
する。何か意見のある奴はいないか?」
 凛とした声が室内に響く。ショートに切り揃えた髪、負けん気の強そうな瞳が印象
に残る少女……柏木梓はみんなの顔を見渡して言った。
「異議なーし! てってー的にやっちゃいましょ〜!!」
 今度は室内に緊張感のかけらも無い声が響き渡る。ブンブン! と両腕を振り回し
ながら、新城沙織は嬉しそうな声を上げた。
「単細胞……」
 ポツリと沙織の横に座っていた少女がこぼす。
「ん? 何か言ったかな? るりるり〜?」
「べつに……。クスクス……」
 『るりるり』と呼ばれた少女、月島瑠璃子は焦点の合わない目でクスクスと笑い
続けた。そんな二人のやり取りを微笑みながら見つめていた、眼鏡の似合う少女が
思い出したように声を上げる。
「あ、梓さん。敵の戦力はどのくらいなんですか?」
「そんなに大したもんじゃない。今のあたし達でも十分に対処できる戦力だよ。
とはいえ、みんなの力を一つに合わせなきゃ、どんな敵にも勝つことなんて
できないんだからね。特に……ゲッターチームの命運は、瑞穂ちゃん! 
あんたが握ってるって言っても過言じゃないんだからね!大変だろうけど……
頑張ってくれ!!」
 苦渋とも憐れみともつかない表情を満面に浮かべながら、梓は藍原瑞穂の肩を
ガシッ!! と掴む。そんな梓に、瑞穂は引きつった笑みで答えるしかなかった。
「あれ? そう言えば、マルチはどうしたんだ? 姿が見えないけど……」
「あ、マルチちゃんなら、マジンガーZのメンテナンスがまだ終わってないから、
終わり次第行きますって言ってたよ」
 そう答えたのは神岸あかり。
 押しも押されぬ、聖・リーフ隊のエースパイロットである。
「まったく、作戦会議だって言うのに! あの娘、掃除始めたら終わるまで、
テコでも動かないからなぁ……」
 『やれやれ』といわんばかりに、梓は肩をすくめる。
「マルチちゃん、いつも一生懸命だからね。私たちのガンダムやゲッターの整備も
手伝ってくれるし……マルチちゃんはあれでいいんだよ」
 そういってあかりは柔らかな笑みを浮かべた。
「まあ……ね。じゃあ、あかり。格納庫へ行って、マルチに出撃準備だけは
しておくように伝えといてくれ」
「あ、うん。わかった」
 そういうとあかりは会議室を出て、タタタ……と駆けていった。
「んじゃ! ゲッターチームも出撃準備してきまーす!!行こう!るりるり!
みずぴー!」
 あかりに続いて沙織、瑠璃子、瑞穂も部屋を後にした。
 先刻までの喧燥が嘘のように静まり返った室内。そんな中、梓は深い溜息を吐いた。
「はぁ……あたしも前線に出て戦いたいなぁ。大体、艦長代理なんてあたしの
柄じゃないよ……。これというのも全部! 行方がわからない千鶴姉が悪いんだ!!
まったく! あのトロ姉は! カメ姉は! 今どこで何やってるんだよぉぉぉぉぉぉぉ
ぉぉぉーーーーーー!!!!」
 船内に響き渡る梓の絶叫。
 そんな魂の叫びを耳にしながら、みんな同じ事を思うのであった。
(すごい……肺活量だなぁ……)

「ららららら〜、る〜るりら〜、るる〜るるる〜り〜ら〜」
 薄明かりの格納庫に、場違いとも言える鼻歌が響き渡る。
 その歌を聴いているだけで幸せな気持ちになれる……そんなことを思わせるほどに
その少女の歌は楽しそうだった。
「……手伝おうか? マルチちゃん」
「え……あ! あかりさん」
 パッ、と花が咲いたような笑顔を浮かべ、マルチはあかりのもとへ駆けてくる。
「今ちょうど終わりました! ガンダムさんも、ゲッターさんもキレイに
お掃除しておきましたから!」
 そう言われて、あかりは周りを見回す。マジンガー、ガンダム、3機のゲット
マシン。共に激戦を繰り広げてきたとは思えないくらい、新品と見まごうばかりの
輝きを放っていた。
「……すごい。すごいね。いつもありがとう。マルチちゃん」
 そう言ってあかりは、マルチの頭を優しくなでた。
「あ、あかりさん、そんな……私はメイドロボで、人様のお役に立つのが
お仕事ですから……」
 うつむきながら、ぽそぽそと言葉を紡ぐマルチ。そんなマルチをなでながら、
あかりはマジンガーZを見上げた。
「いい機体だよね。マジンガーZ……」
 そんなあかりの言葉に、マルチはハッと顔を上げる。
「そ、そうなんです! マジンガーさん、いつも私を励ましてくれるんです! 
戦うことが怖くて怖くてどうしようもなくて……そんな時いつも
『この程度で、超合金Zはビクともしない! がんばるんだ! マルチ!!』
って、そんな声が聞こえるんです!私の自慢の……お兄さんです」
「…………」
 シン、と静寂が走る。ジジジ……という古びた照明の音が、とても大きなものに
聞こえた。
「……いいんだよ? マルチちゃん。長瀬博士はマジンガーの、そして……
マルチちゃんの生みの親なんだもの。ここでマルチちゃんが戦うことをやめても、
誰にもそれを責める権利なんてないよ。だから……」
 そんなあかりの言葉にうつむきながら、マルチは静かに頭を振った。
 さらさらと、やわらかな髪が左右に揺れる。
「私……もう一度博士に会いたいんです。博士はいつも言ってました……。
『マルチ。お前はロボットだから、私たち人間のように80年近くも生きる事は
できない。このマジンガーZだって、生まれてからわずか20年で、既に時代遅れ
の旧型だ。どんなに大切に乗ったとしても、あと5年、10年すれば間違いなく
『壊れて』しまうだろう。
そしてそれは……マルチ。お前も決して例外ではないんだよ……』」
「…………」
「『だから……“今”を大切に、一生懸命に生きなさい。お前の周りにいる人々が
いつも笑顔でいてくれるように。お前が今、マジンガーに感じている気持ちを、
何十年か後、お前が愛した人々にも感じてもらえるように……がんばりなさい。
マルチ』」
「…………」
「そう言って私の頭を、優しく撫でてくれて……だから、わたし、も……いちど
……はかせにあって、それから……それ……か……ら……」
 最後の方は言葉にならなかった。うつむきながら肩を震わせるマルチ。床に
ポツポツと涙の雫がこぼれる。そんなマルチの肩を、あかりは静かに抱き寄せた。
「うん……そうだね。がんばろうね、マルチちゃん……」
「あ、あかりさん……う……うぅ……うわあぁぁぁぁぁん!」
 あかりの胸の中で、マルチは隻を切ったように泣きだした。
「す、すいません……私……わたし……」
「うん、いいよ……今はいいから……。思い切り泣きたいときは、我慢しない方が
いいから……」
 そういうあかりの目も、涙で滲んでいた。
「う……えぐ……ひっく……う……うああぁぁぁぁぁぁ……」
 マルチは子供のように泣き続けた。
その小さな体を、あかりは強く抱きしめた……。

「浩之ちゃんがいつも言ってた言葉……覚えてる?」
 ようやく泣き止んだマルチに、あかりがそっとたずねる。
「え……あ……お、覚えてます! ええっと……」
 遠い日の、大切な人の言葉……。あかりとマルチ。二人の言葉がきれいに重なる。
『簡単に物事あきらめてんじゃねーよ! 運命なんて変えちまえ!!』
 顔を見合わせて、クスクスと笑いあう二人。
「浩之ちゃんもきっとどこかで戦ってるよ! 浩之ちゃんに会えたときに
『たく、しょうがねーな』っていわれないように……がんばろう! マルチちゃん
!!」
「あかりさん……」
 目の中の涙をごしごしと擦り、キッと顔を上げる。
「はい! がんばりましょう! あかりさん!!」
 そういって笑顔を浮かべるマルチ。その瞳にもう迷いはなかった。
「くぅ! これよ! 友情、努力、勝利!! ヒーローの特権ってやつよね!!
燃える〜!!」
「さ、さおりん……」
 あかりが振り向くと、そこにはプルプルとこぶしを震わせる沙織、それを横目で
見つめる瑠璃子、瑞穂が立っていた。
「さ、出撃、出撃♪ 今日も元気にゲッターチーム、はっしーん!!」
 そういいながらゲットマシンに向かう沙織の足が、静かに歩みを止める。
「……ねえ、マルチちゃん?」
 あかり、マルチに背を向けたまま、沙織がつぶやいた。
「あ、はい……。なんですか、沙織さん?」
「……あたしが言いたかった事は全部あかりんが言ってくれたから、もう言う事は
何もないんだけど……忘れないでね。マルチちゃんがいなくなったら、とっても
悲しむ人が大勢いるって事。長瀬博士の言うような何十年か後なんかじゃない。
今、マルチちゃんに大切な想いを持っている人が大勢いるって事。そして……
あたしたちは、かけがえのない仲間だっていう事……」
「さ、さおりさん……」
 マルチの瞳が再び涙で滲む。
 くるりと振返り親指をビシッ! と立てながら、沙織は続ける。
「だからね! 何か困った事とか悩みがあったら、このさおりんにど〜んと
いってみなさい!! あたしに解決できない問題なんてないんだから!!」
「だいじょうぶだよ……みんないっしょだから……」
「みんなでがんばれば、きっと何とかなります! きっと!!」
 沙織、瑠璃子、瑞穂、そしてあかり。みんなの暖かな笑顔がマルチを包み込む。
 こぼれ落ちそうになる涙を両手で拭い、マルチはとびきりの笑顔で答えた。
「はい! わたし……いっしょうけんめい、がんばります!!」
「よーし!! それじゃ、まずはZガンダムと、楓ちゃんの救出から! 
絶対に助け出そうね! みんな!!」
 あかりの言葉にみんなの声が重なる。
『おおーーーーーぅ!!!』

「よし! 聖・リーフ隊出撃! 砲撃手! 攻撃は集中してやるんだよ!!」
 梓の自信に満ち溢れた声と同時に、3機のゲットマシンが高速で宙を旋回する。
「いくよ! るりるり! みずぴー! チェェーーーンジ!!」
『ゲッタァァァーーーーーーーー!!!!』
 三人の叫びが、機体が、心がひとつになった時! 大空に紅の巨人が姿を現す!!
「ゲッタァァァァ……さおりぃぃーーーん!! いっくぞぉぉーーー!!!」
 赤いマントを翻し、ゲッターロボが空を駆ける!!
「RX−78 ガンダム、神岸あかり、いきまーーーす!!」
 伝説の白い戦士が、大地に降り立つ!!

 戦士達は戦う。
 その道がたとえ険しく、果てしないものだったとしても……
 信じるもののために。守るべきもののために。
 そして……まだ見ぬ明日のために!!

「マ、マルチ、いきまーーす!! まじーーーん、ごぉーーーー!!!」    
                                                                  
                                                               <完>

 タイトル:スーパーリーフ大戦!!
 ジャンル:ゲーパロ、シリアス(?)/雫、痕、TH/オールスター
 コメント:勝利を誓う正義の心!スーパーリーフ大戦、スイッチオン!!