あかりの涙 投稿者:祢本 暢明
 涙が頬を伝わって落ちて行くのを感じていた。
 私は、とめど無く溢れる涙をコントロールすることが出来ずに、人通りの激しい道の
中を、ただ、呆然と立ち尽くしていた。
 空は何処までも広く薄い雲に覆われていて、空気は身に染みるほどに冷たかった。
 私はどうして涙を流しているのだろうか?
 覚めた心の奥底では疑問に思うのだけれども、狂い始めた感情をセーブすることはで
きずにいた。
 時折、ぼやける視界の端々を白い粉雪が舞い降りて来るのを、ただ、ぼんやりと眺め
ていた。
 アスファルトに呑み込まれるように、粉雪が溶けて小さな染みを作る。
 私の涙も、アスファルトに吸い込まれるようにして消えて行く。
 この、見慣れた街とも、今日が最後。

「あかり、どうした?」
 前を歩いていた、浩之ちゃんが私の異変に気がついて、尋ねて来た。
「泣いてるの」
「なんでだよ?」
「わからない」
 自分自身でも、本当にどうして泣いているのか解らなかった。
 どうしても、理由を付けるとするならば、どうして泣いているのか解らない自分に対
して腹立たしく、情けなく、悲しかった。
 感傷的になりすぎているのだろうか?
「泣くなよ。俺、なんかしたか?」
 でも、涙は一向に止まる気配もなく、ただ、ただ、混乱していたのだ。
「そんなんじゃないの! でも、でも……。私だって、泣きたくて泣いているんじゃな
いもん!」
 私はヒステリックに叫びながら、地団駄を踏む。
 そんな私を見て、浩之ちゃんは混乱しているようだ。
 そうだよね。
 理由も無く泣き出すなんて、おかしいよね。
「後悔してるのか?」
 浩之ちゃんの声のトーンが下がる。
「違う! 後悔なんてしてないもん!」
 周りで見ていた野次馬が、浩之ちゃんの方を指差して、ひそひそと話している。
----違うの。浩之ちゃんは悪くないの。
 そんな自分が情けなくて、余計に涙が出てくる。
 思考が袋小路のなかで、ぐるぐると回っていると、浩之ちゃんが優しく頭を撫でてく
れた。そして、私が顔を上げると、優しげな目で私に語りかけてくれた。
「何も恐いことなんかないぜ? なんたって、あかりには俺がついてるんだからな」
 浩之ちゃんは、ちょっとおどけた感じで、照れながら言ってくれる。
「----うん」
 私は独りじゃないんだ。
 そう。
 知らない街の、知らない人々の中でも、浩之ちゃんがいてくれる。
 明日、私は藤田あかりになるのだ----。

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と、いう訳であかりのお話です。
これは、オリジナルの創作の中途半端な書きさしのヤツを改稿して書き足しました(^^;
結婚直前の情緒不安定な様子が描けたらなあ、とか思ったんですけど、ちょっと違和感
があるかも(汗)

>久々野 彰さん
 感想、ありがとう御座います♪
 僕は、基本的にはオリジナルの小説を書いてるんですけど、えっち系の描写とかっ
て書いた事がなかったんですよ。だから、ちょっとチャレンジしてみようかと(笑)
ジンクスは、これでやぶれたことになるんでしょうか?(^^;

>ゆきさん
 ありがとう御座います♪
 これからも頑張りますね(^^)


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