白樺の林の中で。 投稿者: 西山英志
 はぁっ、
 はぁっ、
 はぁっ‥‥‥‥、

 私は走っている。
 白い林の中、を。
 白樺の木々の林、を。

 さぁっ、

 と。
 林の中を微風が、吹く。
 微風が私の白いサマードレスの裾を踊らせる。
 優しい風。

 かさ、
 かさ、

 私の素足が、深緑の草を踏む。
 朝露を含んだ柔らかい草が、とてもくすぐったい。
 林の隙間から覗く空の色が、私の瞳の中に飛び込んでくる。
 雲一つない空に目が覚める様な、蒼色。
 私の目の前の光景には、三つしか色がない。
 走る私の足下に在る草の、緑。
 周りに拡がる白樺の木々の、白。
 涼しげな風を運んでくる空の、蒼。
 どれも、私の大好きな色。
 どれも私の大好きな人達を連想させる、から。

 緑。
 お母さんの様に微笑む、色。
 まるで、千鶴姉さんみたい。

 白。
 何処までも純粋な無垢な心の、色。
 そう、妹の初音みたい。

 蒼。
 ちょっと私を叱って、元気づけてくれる、色。
 うん、梓姉さんみたい。

 でも、本当に大好きなのは‥‥‥。

 走る。
 林の中をどんどん、走る。
 あのひとに追い付く為、に。
 あのひとに追い付かれない為、に。
 捕まえる為、に。
 捕まえてもらう為、に。
 ドレスの白い裾が、露を含んで足にまとわりつく。
 冷たくて、とても気持ちが良い。
 足を止める。
 緑。
 白。
 蒼。
 私の周りをその色が包み込む。
 サマードレスの裾をちょっと持ち上げて、両手で絞ってみる。
 白い裾から、きらり、と玻璃色の滴が零れて光った。
 その時。
 木々の間から、日差しが射し込んできた。
 スポットライトの様に、私の処に一筋の光。
 暖かい、光。
 私の瞳の中で、その日差しは万華鏡みたいに輝く。

 私の一番大好きな、色。

 多分どんな凄い画家でも、この色は決してキャンバスに描けない。
 暖かくて。
 気が付いたら、側にあって。
 無くなったら、とても悲しくなってしまう。
 日差しの光、の色。
 私の一番大好きな、色。
 それが、私の側にやって来て。

 ぎゅっ、

 と、私を背中から抱きしめる。
 そのまま、勢い余って草の中に倒れ込んでしまう。
 とさっ、と草を鳴らして寝転ぶ。
 私は瞼を閉じて、日差しと抱きしめた腕から伝わる暖かさに耳を澄ます。
 風の色が、見えて。
 日差しの囁きが、聞こえる。
「‥‥‥‥‥‥‥楓ちゃん」
 私を呼ぶ声。
 耕一さんの、声。
 一番大好きなひと。
 せつない程に。
 その声に応える様に、私は大きな胸に頬を埋めた。

 白樺の林の白、と。
 濡れた草の緑、と。
 澄んだ空の蒼、の幻影の中に。
 私達二人の想いの色がゆっくり、と溶け込んでいく。
 
 そんな夏の日の、情景。


                       白樺の林の中で。 <了> 

   あとがき〜又の名を戯れ言。

またもや、久しぶりの登場ですな。(汗笑)
どうも、西山英志です。前回の「さよなら、夏の日。」から‥‥‥ええっと一ヶ月半位で
すかね(汗)‥‥‥まったく、遅筆ですねぇ、私。(自虐笑)
今回のSSはある方の楓CGを見て思いついた作品でして、まぁこんな作品も良いモノで
すな。(苦笑)現在再び長編SS(勿論、楓SS・笑)を構想中です。
もし、出来れば楓の誕生日(11/15)に間に合わせたいですねぇ‥‥‥(でも、予定
は未定‥‥‥泣)
話は変わりますけど、最近漢方に凝っておりまして。毎晩、漢方薬局から買った薬を鍋で
煎じて飲んでおります。最初は胃腸が悪くて飲んだのですけど、最近はちょっと病みつき
です。(<危ないって、自分・汗)

レスです。

ジン・ジャザムさんへ
本家では本当に久しぶりの読み切りですよね。
「Odipus」面白く読ませていただきました。私も何度かダーク路線を書こうとした
んですけど、全然駄目で(と、言うか不幸な描写は生理的に駄目なんですよ・苦笑)ちょ
っと羨ましいです。スパリフFの方も頑張って下さい。あと、某HPのゲームレビューも
頑張ってください。(<例のゲームレビューのファンの一人より)

へーのき=つかささんへ
某駅前留学のCM‥‥‥‥あれ私も好きなんですよ。(笑)
いゃあ、へーのきさんには「柏木家の暴走」シリーズで私が暴れ出しそうな描写を書いて
いただきまして、本当に感謝しております。(にやり<狩猟者な笑み)
ううっ、昔の優しい子育てSSを書いていた、へーのきさんはもういないのね‥‥(嘘泣)

MIOさんへ
なんか、最近「はるか大ボケシリーズ」(勝手に命名)がいい感じですね。昔のヒヒ・シ
リーズも好きだが(笑)しかし‥‥‥‥そーか、冬弥くんは変態さんだったのか。(笑)

久々野さんへ
つ、‥‥‥遂にやってしまったんですね。十八禁SS(爆)
私もちょっと気分転換‥‥‥と、いうか現在の作風を打破するために十八禁モノを書こう
と思案中だったりします(爆)あと、梓SSちょいとお待ち下さい‥‥‥梓への愛が無く
なりかけているもので‥‥‥(問題発言)

八塚崇乃さんへ
「次回予告」シリーズ、面白く読ませていただいております。
個人的には「楓=ジオブリのまや」が嬉しかったです。(苦笑)‥‥‥ってことは、痕が
アニメ化したら、楓の声は飯塚さん??(んなわけないって・笑)
あと、「オーフェン」ネタで私も少し‥‥‥‥。

耕一「千鶴さん、何か楽器が扱えますか?」
千鶴「ええ、ピアノぐらいなら‥‥‥」
耕一「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥(冷や汗を掻いている)」
千鶴「‥‥‥‥‥‥‥?」
耕一「(震える手で汗をハンカチで拭きながら)‥‥‥ああ、大八車で容赦なく踏み付け
るんですね」
千鶴「轢いてどうするんですか。ピアノぐらいなら少し弾けると言ったんですよ」
耕一「そっ、そんな‥‥‥! もしや、どこかの偽善者だけが生まれ育つ、偽善者村とか
そういった場所では、何かとてつもないスラングで殺人や暴行することを『ピアノを弾く』
とかいうのでは?!」
千鶴「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
耕一「ま、または、遙か彼方のレザムの大地で四十八の殺人ピアノを相手に修行した者だ
けが修められると言う、伝説の拳法――究極のピアノ拳というのでは?!
千鶴「‥‥‥‥‥‥‥耕一さん」
耕一「はい」
千鶴「貴方を‥‥‥‥‥殺しますっっ!!(しゃきんっ!)」
 
‥‥‥‥‥何書いているんでしょうね、私(爆)

では、今回はこの辺で‥‥‥‥。