小澤昭一的ココロ「HMについて考える」水曜日 投稿者:戸津都 投稿日:1月28日(月)01時34分
 この番組は・・・フロムハート、トゥハートの来栖川自動車と、
来栖川ディーラー各社の提供でお送りします。

             ***

 小澤昭一の「小澤昭一的ココロ」

 今週は・・・

 「私の人形は良い人形、動く人形『HMについて考える』」

 講演 小澤昭一 筋書 戸津都凵@お囃子 山元直純


              ***


 えー、今週は・・・

  「『私の人形は良い人形』動く人形、HMについて考える」

・・・と題しまして、近頃、巷で健気に働く機械仕掛けのお人形さん
たちについて、アレコレと考察しておりますが・・・。

 よく恋は心を若返らせると申しますが・・・今の宮坂さんにとって!!
斯様な「恋の痛手」は、残念ながら受け止める体がお若くはございません
ので、彼の日のように夕日に向かってバカヤロー!!と叫べば収まる・・・
と言うわけには参らないのであります。

 可愛がってたお嬢さん達の「心の本質」を覗いてしまい、惚けるように
週末を過ごした宮坂オトーサンの明けた月曜日でございます・・・。

 いつもより遅い電車に乗った宮坂さんは、若手の社員がそろそろ揃い
始めた始業直前の珍しい時間になってから、まるで!!「生ける屍」の
ような風貌で我が職場に着いたのであります。

 「宮坂さぁん・・・大丈夫ですかぁ?」

 今まで見たことのない不安げな顔でマルチちゃんがお茶をもって来ても、
宮坂さんの目は、まるで死んでおります。

 「あ・・・そこに置いといてくれ・・・ちょっと忙しいんだよ。」

 今の宮坂さんには、振り向きざまのマルチちゃんが見せた、不安げで
心細そうな顔なんて見えやしません。

 そして!!始業後の最初の行事として、いつも通り・・・

「−−宮坂課長。今週のスケジュールの確認を・・・」

 という初っぱなを・・・

 「特に予定は変わっていないね。あ、新聞記事は後で聞く。」

 ・・・と、一方的に宮坂さんに切られたセリオさんは、冷静な中にも
驚きの表情を見せて机の前を去って行きます。

 ただでさえ「月曜ボケ」なこの日、宮坂さんは輪を掛けてボケ過ごした
のであります・・・ええ、もちろんの事、月曜日だけでは済みゃしません!!

 明くる日も、また明くる日も、課長席には屍が座っているのであります。
 そして・・・件のお嬢さん方が来ると!!

 「何か用事か?・・・今は忙しいから外してくれないか。」

 疎んじられるマルチちゃんは今にも泣き出さんばかりであります。

 もちろん子会社出向とは言え課長の身分の宮坂オトーサン、仕事に穴なぞ
空けは致しませんがぁ〜、その無表情に仕事を片付けてセリオさんの報告を
受ける姿は、余りに無機質でどっちがロボットか解りゃしませんの!!

 お嬢さん達とサシになるなんて出来るわけなどございません!!
 終業後はそそくさと退社し残業も家に持ち帰るために、奥方からは

 「仕事をウチに持ち込まないでって、私、結婚するとき言わなかった!?」

・・・とグチられるようになった宮坂オトーサンであります。

 ついには週の半ばでございます。

 「あのぉ・・・気分転換に梅昆布茶ですぅ・・・どうぞぉ。」

 もはや恐る恐るのマルチちゃんが気を利かせたお茶出しを・・・

 「考え事をしてるときには中断させないでくれないか!!」

 ・・・と叱りつけてしまったのであります!!

 「も・・・もうじわげあじまぜん!!」

 その時!! お盆を脇に抱えて小走りに部屋を出ていったマルチちゃんを
溜息で送る宮坂さんを、一人の女性が見つめていたのでございます。

 "今日、昼食をご一緒しませんか?お話ししたい事があります。寺坂。"

 そんなメールが宮坂オトーサンに届いたのは昼休みまで後30分という頃で
ございました・・・「寺坂」とは恵美ちゃんの名字でございます。

 すると・・・あれほどまでにシオレていた宮坂オトーサン、まるで水を
与えられた砂漠に生えるナントカという植物の如く、青々と・・・まあ
実に現金にでございますが復活し始めたのでございます!!

 「やはり・・・人間の心は・・・人間が解ってくれるんだなぁ〜!!」

 哀れな自分を見て、恵美ちゃんが慰めてくれると勝手に解釈した宮坂さん、
足取りも軽く恵美ちゃん御指定の小洒落たテラスに向かったのであります。


            @@@【御囃子】¥¥¥


 さて、御指定の小洒落たテラスに先に着いていた恵美ちゃんのタダならぬ
雰囲気に、席に着く前から宮坂オトーサン、やや圧倒されたのであります。

 「率直に伺います宮坂課長。土曜日のお昼、会社で何をご覧になりました?」

 大学院卒、才女の誉れ高くも傲りは全く見せないデキたお嬢さんの恵美
ちゃんのこんな恐い顔なぞ、今まで見たことがない宮坂さんであります。
 「う・・・うぇ・・・」なんて口ごもってる宮坂オトーサンに畳みかける
ように恵美ちゃんは続けます。

 「青木君の机の上にあったパソコンをご覧になりましたでしょ?」

 「・・・は・・・はぃぃ。」

 「それは、もしかして"特殊設定画面"という画面じゃありませんか?」

 「は・・・はぁ・・・その・・・とおりです。」

 もはや!!どっちが上司で部下なのか解りゃしません!!

 何でも仲良し子良しだった宮坂さんとお嬢さん達の関係に異変を感じて
いた所に、"土曜日にHMの整備をしていたら課長が来たですよ、"という
青木君の話から、才女の恵美ちゃん、直感したそうであります。

 土曜日に出社したとき「特殊設定」の内容を見てしまったこと、その
ためにマルチちゃんやセリオさんの気持ちが信じられなくなったという
事を一切合切、洗いざらいにぶちまけた宮坂さんに・・・

 「もう!!プライバシーに関わるファイル出しっぱなしにして出かける
なんて、本っ当に青木君たらデリカシー無いんだからっ!!」

 てっきり自分が怒られると思った宮坂さん、すっとんきょな顔をして
恵美ちゃんの顔をボーっと見つめてしまいます。

 「青木君には私から注意しますけど、しっかりして下さいよ宮坂課長!!
優しかった上司が豹変して、彼女たち狼狽えていますよ!!」

 恵美ちゃんは宮坂さんを叱りつけるようにそう言うのであります。

 「だって課長!!課長だって自分の行動規範を文書にしたら、ああいう
書き方になると思いませんか?」

 言うとおりであります。
 あの部長はメンドウだから適当に誤魔化せば良い、あの課長は詫び助
だから何かあったらアイツに投げろ・・・本人なんかに見せられません。

 何でもセリオさんは、ここ数日、常に能力の何%かを何かの考え事に
使うために仕事の処理が滞り、マルチちゃんは、あの「梅昆布茶」の後に
心配して給湯室に行った恵美ちゃんに抱きついて・・・

 「『課長さんを怒らせてしまったですぅ〜!!』って号泣したんですよ!!」

 何も解らない彼女たちを、そこまで追いつめていたのか・・・。

 運ばれてきたCランチの「ジェノバ風仔牛のカツレツのナンタラ・・・」の
慣れないハーブの香りもあって、宮坂さん、食欲の湧かないお昼を過ごして
しまったのであります。


            @@@【御囃子】¥¥¥


 その夜の終業後であります。
 暫く振りに件のお嬢さん以外、全ての社員が退社するまで残った宮坂さん、
心配そうな顔をしている彼女らを呼び寄せます。

 「私から彼女らにも"課長がお話があるそうよ"って話しておきます。」

 さっき別れ際に、そう宮坂さんに言ったとおり、恵美ちゃんから聞いていた
のか、セリオさんは表向き、いつも通りの落ち着いた顔をしていますけど、
方やマルチちゃんは俯いて顔を上げません。

 「・・・いや、君たちを呼んだのは・・・」

 なんて宮坂さんが話を切りだした直後でございます!!

 「ふぇぇぇぇぇぇん!!」

 なんと!!マルチちゃんが、まるで子供のように泣きだしたのでございます!!

 「課長さぁん〜!! やっぱり私、駄目ロボットですぅ〜!!」

 「−−マルチさん、宮坂課長はまだ何も仰っていないのですよ。」

 泣きじゃくるマルチちゃんを軽く抱いてセリオさんが宥め諭します。
 まるで姉妹のような光景でございます。

 重々しくも切り出そうとした宮坂オトーサン、すっかり機先を制されて、
困ってしまいました!!
 女の涙にはちょっと・・・いや全く!!無力の宮坂さんであります!!

 「すまん!!オレが悪かった!!」

 ゴツンという音と共に宮坂さんは課長机に頭を擦りつけたのであります。

 「ふぇ・・・?」

 泣いていたマルチちゃんは呆気にとられて泣きやんでしまいました。

 「−−宮坂課長!!いけません!!頭をお上げ下さい!!私達はロボット・・・」

 女の涙への対抗手段は殆ど持たない宮坂オトーサンの!!もう必死の!!
事態収拾策でございます。

 「すまん!!君たちを心配させた!!本当にすまん!!」

 ・・・暫くしてでございます。
 2人並んだお嬢さん方に向かい合って立つ宮坂さんの姿がありました。

 「罪滅ぼしのために君たちの望む事をしてあげたいが何が良い?」

 一連の「特殊設定」の内容を見てしまった事からの打ち明け話をした後、
そういった宮坂さんにマルチちゃんが無邪気にも答えたのであります。

 「じゃ宮坂さぁん・・・ナデナデして下さいですぅ!!」

 「−−私も・・・そうしてくださいませんか。」

 両手でマルチちゃんとセリオさん、2人の頭を宮坂オトーサン、何度も
何度も撫でてあげると!! 

 「宮坂さぁん!!好きですぅ!!大好きですぅ!!」

 嬉し涙のマルチちゃんが宮坂さんの胸に飛び込んで参ります!!

 ふとセリオさんの方を見ると、さすがに大人であるのか、躊躇して顔を
赤くしているのであります。

 人間の方ではイマイチでありましたけど、素質としてはぁ・・・色男の
要素は無いわけではなかった宮坂オトーサン、片腕を広げてセリオさんも
招き入れるのでございます・・・もう誰に習ったんだか!!

 お嬢さん達の頭を抱きしめると、マルチちゃんの少女らしいシャンプーの
香りと、セリオさんの軽めのコロンの香りが胸に充満いたして参ります。

 2人の女性に抱きつかれるという!!今まで経験したことのない至福の
瞬間に、最近、締まりとキレの悪くなってきた宮坂さん!!気を付けないと
小便チビリそうだったのよ!!

 そうだ、この子達のために・・・この子達の笑顔を見るために・・・
オレは残った人生を捧げよう。

 天にも昇る至福の中で、宮坂オトーサンは誓ったのであります。

 そんな決意を誓った宮坂さんに、水を差すようなヤボを申しあげる
ワタクシではございません!!

 たとえそれが、お嬢さん達の制御システムの中に於いて今現在!!

 「とりあえず泣いてみる。宮坂課長は女性の涙には無力である」

 「スキンシップが宮坂課長との仲直りの決めて」

 ・・・などなどという情報が!! 彼女たちの制御装置の中にある
例の「宮坂課長 特定基本設定」のメモリ領域に書込の真っ最中!!
・・・ということなど・・・ワタクシは申し上げません!!

 やっぱり・・・女の子なんだねぇ。


            @@@【御囃子】¥¥¥

          @@@【CMと天気予報】¥¥¥


 さて、お嬢さん達と「感動と涙の和解」を遂げました宮坂オトーサンには、
更なる事件が待っているのではありますが、それはアサッテのココロとして
1日お休みいたしまして、明日は町の商店や商店「・・・の様な物」で健気に
働く御人形さんをアレコレ考察いたしたいという話は!!

 また明日の「お人形さん」のココロだぁ〜


          @@@【エンディング御囃子】¥¥¥