兄妹 投稿者:つな 投稿日:9月16日(土)19時29分
ここは・・どこ?

暗いよ…どこなの?

(……瑠璃子)

え?

お兄ちゃん?

どこ?

(ここだよ…瑠璃子)

わからないよ…

お兄ちゃん?

どこにいるの?

(ほら…すぐそばだよ…僕はいつも瑠璃子のそばにいるよ…)

暗くて何もみえないよ、お兄ちゃん。

私はどうすればいいの?

お兄ちゃん…怖いよ…。

(怖がる事なんてないよ、瑠璃子。だって僕はいつもそばにいるから)

うん、お兄ちゃんはずっと一緒にいてくれる。

でも、どこ?

私には見えないよ。

(手を伸ばしてごらん、僕はここにいるよ)

手?

うん、わかったよ。

・

・

・

あ、お兄ちゃん。

(瑠璃子、僕の瑠璃子)

うん、お兄ちゃんの瑠璃子だよ。

(やっと戻ってきてくれたね。僕はずっと待っていたんだよ)

でも、私もずっとここにいたんだよ?

(そうだね。瑠璃子はいつもそばにいてくれたね)

うん、お兄ちゃんのそばにいたよ。

(でもね、僕にも見えなかったんだ。)

真っ暗で怖かったの?

(うん。瑠璃子が見つけられなかったんだ。)

ふふふ、私と同じだね。

私もお兄ちゃんが見つけられなかったんだよ。

(瑠璃子もなのかい?お互い、こんなに近くにいたのにね。)

ふふふ、なんだか可笑しいね。

(ははは、僕もそう思うよ。)

お兄ちゃん?

(ん?なんだい瑠璃子。)

ここはどこ?

(ここかい?)

うん。

(ここはね、僕が瑠璃子のためだけに作った世界だよ。)

私のためだけの世界?

(そうだよ。ここには、太田さんもこれないんだ)

太田さん?ああ、お兄ちゃんの彼女だね。

(彼女?違うよ。太田さんは「鍵」だったんだよ)

鍵?

(そうさ。瑠璃子を捜すためのね。)

太田さん、お兄ちゃんの鍵だったんだ。

(僕が作ってしまった扉だからね)

違うよ、私が作った扉だよ。

(じゃぁ、二人で作った扉だね)

うん、そうだね。

(でも、その扉も、もう開いたんだ。)

うん。だからお兄ちゃんに会えたんだもん。

(これでずっと一緒にいられるね。)

ずっと一緒だよ。

私はずっとお兄ちゃんのそばにいるよ。

だから、もう帰ろう?

(帰る?どこへ?ここが僕と瑠璃子の家なのに?)

違うよ。

ここは私たちの家じゃないよ。

(どうして、そんなこというんだい?瑠璃子。)

だって。

ここは暗いもの。

(暗い?僕には瑠璃子が見えるよ。)

私にもお兄ちゃんが見えるよ。

(じゃぁ、いいじゃないか。ここにはあの長瀬とか言う男もいない。)

うん、長瀬ちゃんいないね。

(二人だけの家だよ?僕と瑠璃子の。)

でも、長瀬ちゃんいないよ?

(瑠璃子、なんであんな奴の話なんかするんだい?)

長瀬ちゃんは一緒にお兄ちゃんを捜してくれたんだよ?

(探してくれた?僕には瑠璃子を奪おうとしてるようにしか見えなかったよ。)

そんなことないよ。

だって長瀬ちゃん優しかったもん。

(優しかった?)

うん。

優しく抱きしめてくれたよ。

お兄ちゃんと同じように。

(僕と同じ?僕は瑠璃子を傷つけることしかできなかったよ。)

そんなことないよ。

だって、私はお兄ちゃんのこと大好きだもん。

(瑠璃子、約束したよね。僕が守ってあげるって。)

うん。

覚えてるよ。

(僕ではだめなのかい?)

そんなことないよ。

だから、一緒に帰ろう?

(……)

お兄ちゃん?

(だめだよ、僕は帰れないよ。)

どうして?

(だって、瑠璃子を泣かせてしまったから。)

私は元気だよ。

ほら、ね。

(だめだよ。だって瑠璃子は今も泣いているよ。)

泣いてないよ。

ほら。

(……)

お兄ちゃん、どうして?

(ここにいれば、瑠璃子は笑っていてくれる。でもきっと帰ったら泣いてしまうよ。)

私、強くなったもん。

大丈夫だよ。

だから、一緒に帰ろうよ、お兄ちゃん。

(僕は、ここで瑠璃子のことを待っていたんだ。)

でも、長瀬ちゃんが見えないよ。

(ここでしか僕は笑えないんだ。)

お兄ちゃんはいつも笑っているよ。

ほら、今だって。

(でもきっと帰ったら僕も泣いてしまうよ。)

私が一緒にいてあげるから怖くないよ。

(だめなんだ。あそこはもう僕の居場所じゃないんだ。)

私たちの家があるよ?

一緒にいられるよ?

(優しいね。瑠璃子は。)

お兄ちゃん?

(僕はもう戻れないんだ。僕はそれだけのことをしてしまったから。)

長瀬ちゃんだっているよ。

きっとお兄ちゃんを守ってくれるよ。

(だめだよ。長瀬を見たら、きっと僕は同じ過ちを繰り返してしまう。)

お兄ちゃん…。

(だから、僕は帰れないよ。瑠璃子も一緒にいておくれよ。)

でも…。

(長瀬のことが好きなのかい?僕よりも?)

そんな、比べる事なんてできないよ。

(長瀬が必要なのかい?)

長瀬ちゃんは、私を呼んでくれるから。

(僕には聞こえないよ。)

私には聞こえるよ。

瑠璃子さんって。

私のこと探してくれるの。

(僕だって探したさ。)

うん。

感じたよ。

お兄ちゃんの電波。

でも、だめだよ・・・。

長瀬ちゃんが泣いてるから。

私、長瀬ちゃんのところへ行くよ。

(どうして?僕がきらいなのかい?)

ううん。

そうじゃないの。

本当は、お兄ちゃんと一緒がいいけど…。

ここにいなくても、お兄ちゃんのことは感じられるから。

(僕はいつでも、瑠璃子の事を見ているよ。)

うん。

でも、長瀬ちゃんは私が探してあげないと見つけられないんだよ。

長瀬ちゃんは、ここを知らないから。

だから私は長瀬ちゃんのところへ行くよ。

(瑠璃子、また僕を一人にするのかい?)

大丈夫。

いつでもここにくればお兄ちゃんには会えるから。

(瑠璃子・・・。)

ごめんね。

でも、私は行かなきゃ。

(どうしても・・行ってしまうのかい?)

うん。

私は帰るよ。

(僕と一緒にいるわけにはいかないのか?)

だめだよ…。

だって…。

(だって?)

・

・

・

長瀬ちゃんが呼んでるから。



The end




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読んでの通り、雫のお話です。

設定は、トゥルーエンドを迎えて、瑠璃子が帰ってきた場面。

原作では、祐介視点で話が進むため、月島兄妹の話しの細部は語られませんでした。

それで、瑠璃子はどうして現実世界に戻ってきたのか?

ってところを自分なりの解釈で書いてみました。

もっと他の解釈の仕方も多数有ると思うので、「趣味」だと思って下さい(爆)

しかし、瑠璃子の性格がつかみ切れていないため(つかみ切れている人はいるのだろうか?)

予想以上に苦戦しました・・。

最後のセリフ。

どっかで聞いたことがあるなぁと思ったかた。それは図星です。


http://user2.allnet.ne.jp/tuna/