「天使の贈り物」「競作シリーズその弐 NTTT VS その他大勢」「お題:会話文のみ」 投稿者:第3接触 投稿日:5月20日(土)22時46分
「ヒ〜ロ〜〜、疲れた〜〜〜」
「へいへい、“疲労”と“疲れる”は同じ意味だね、全く全く」
「それってつまんな〜〜い、。ねえ、おんぶ〜〜」
「てめえって女は。オレの背中のがきんちょが目に入らねえのか」
「ウゥ〜〜〜、じゃあ抱っこ、“お姫様抱っこ“して〜」
「できるかっ!!それに変な声で唸るな、恥ずかしいたらありゃしねえ」
「恥ずかしいですって〜。唸るわよ。唸りたくもなるわよ。ウゥ、ウゥ〜〜、ウウゥ〜〜〜〜〜〜〜〜」
「うるせぇ、子供が目を覚ますじゃねえか!」

「ゴメン。でももう、1時間以上歩き回ってんのよ」
「…オレがお前に会って30分も経ってねえ。それにオレはお前に会う前から1時間はこの迷子のがきんちょ
を背中に背負ってるんだ」
「…さいですか」
「ったく、そもそもなんでお前がついてくるんだ。疲れてんなら勝手に帰れ帰れ」
「そうもいかないわよ」
「何でだ?」
「何でって、まあ、あれよ。“女泣かせのヒロ”と勇名を馳せたあんたが最年少記録を更新するのを是非とも
阻止しなけりゃいけないし〜」
「変な悪名をつけるな。こんな小さい子にオレがナニするってんだよ。というかそもそもオレは女を泣かせる
マネなんかしねえ」
「本当ですかねえ。幼馴染のあの子に飽き足らず委員長に留学生に勤労少女、先輩1人に後輩2人、果
てはメイドロボと来ればお客さん、涙なみだのお話の一つや二つ出てくるんじゃないですかぁ、フフフ」
「!…て、てめえ、なぜそれを!!お前はオレのストーカーか!?」
「フフン、このあたしの情報網をなめてもらっちゃあ困るわね」
「勝手に困れ。…しっかし恐ろしい女だな」
「ヒロのことなんか全部お見通しってことね。…でも、あたしにも見抜けなかったこともあるわね」
「?」
「ヒロが迷子の子供の面倒をちゃんと見るってことが、よ」
「ああ、そんなことか」
「そんなことって、あたしにはすっごく意外だったのよねえ」
「…てめえが普段オレのことをどう見てるのかよ〜く解ったぜ。…まあ、なんだな、オレもよこの子と同じ年く
らいのときにな、買い物してた母親とはぐれちまって迷子になったことがあるのさ」
「エェ〜〜!それでそれで!?」
「?… で、そのときどっかの男の人がオレをおぶって色々と探してくれてな、何とか母親にオレを届けてくれ
たってわけだ。だからかな、泣いている迷子の子を見るとあのときの自分にかぶって見えて、どうにも放って
おけなくなるのさ」
「へえ、そうか、そうなんだ」
「まあ、そういうわけだし、オレはこの子の面倒ちゃんと見るし、もちろん変なマネもしねえ。だからお前はもう
帰っていいぜ」
「…だったらなおさら後には引けないわ。絶対この子の親を見つけてやるんだから。行くわよ、ヒロ」
「!… なにいきなり張り切ってんだよ。疲れてんじゃないのかよ。って待てよ、走るな〜!ウヒ〜〜〜」

「……やっぱり始めからあそこに行けばよかったのよねえ」
「…言うな」
「結局3時間歩き回って、ゴールは交番。全く無駄足ってやつ〜」
「何も言うな」
「あの子も可哀相に、こんな怖い顔の男に散々連れ回されてさあ。トラウマになったらどうすんのよ〜」
「だぁ〜、うるせえ!!そうだよ、意地になってました!交番に預けてはいサヨナラってしたくなかったんです。で、
結局商店街の中の店が閉まり始めて断念。交番に着くと感動の親子の再会が待っていた、以上。はい、す
べては私の不徳の至すところのものでありまする。ついでに顔が怖いのも私のせいですぅ、どうだ〜〜!!」
「はい、どうどう。まあ結局あの子も親に会えたんだし結果オーライってことじゃん」
「…だったら最初からそう言え。ふう……、疲れた」
「ご苦労ご苦労」
「ご苦労じゃねえ。3時間も背中に子供1人背負ってるのがどんなに辛いと思ってるんだ」
「うそうそ。実際のトコ逆算したら2時間チョイ、それまでは手ぇつないで歩いていたじゃん。ってあんまり変わ
んないか」
「…だっけか?ってお前と会った時にはもう背負ってたぞ。いつから見てたんだよ、お前?」
「えっ、ああ、……ヒロがあの子に話しかけた頃ぐらいかな」
「なんだ〜、お前本当にストーカーじゃねえのか?」
「失礼ね!ただあたしはヒロがあの子にナニするのか監視してたのよ」
「監視だ〜。さっき言ってたのは冗談じゃなかったのか?」

「…実はさ、あたしも小さいころヒロと同じように迷子になったことがあるんだ」
「へ」
「ヒロと違うのは、ほらあたしってこんなに美少女じゃん、小さいころもそれこそお人形のようにプリティだっ
たのよね」
「……」
「で、邪な心を抱いたどっかの男が、『お嬢ちゃん、おじちゃんと遊ぼう』ってお菓子とか見せて誘ったわけよ」
「危ねえなあ」
「で、ついていったのよ」
「おいおい!」
「でもその男は途中で急に踵を返してどっかに行っちゃたのよ。多分警官でもいたのね」
「ふう」
「気がついたらエトランゼ。あたしは右も左もわからない所で1人泣くしかなかった」
「自業自得だ」
「るっさいわね。…そしてあたしは……天使に会ったの」
「…はい?」
「もう1人目つきの悪い男も一緒にいたけど、多分天使の下僕ね」
「あの〜」
「そしてあたしは天使に下僕の背に乗り、天使の導きの末ママと再会できたのよ」
「……」
「以来あたしは迷子を見ると、悪いやつに連れて行かれないか監視しつつ、早く親と再会できるように物陰
から天使に祈ってるってわけよ」
「ってわけよって、…その子の親を探そうとは思わないのか?」
「いや、だって、ほら、…めんどいし」
「……」
「まあ今日は相手がヒロだったから、あの子の貞操の危機にさすがのあたしも重い腰を上げたのよ」
「なんじゃそら!…まあ珍しくお前が人助けの真似事をするからおかしいとは思っていたけど、そんな理由が
あったのか」
「なによお、あたしも人助けの1つや2つしますよ〜だ。…たまにね」

「ふっ。…天使といえばあの子こそ天使みてえだったな」
「うんうん、寝顔なんか特にね」
「実際すぐに見つかると思ってたんだけどなあ、あの子目立つし」
「髪の色?」
「ああ、金髪だぞ金髪。それなのに目の色は黒いし、普通に日本語話すしさ。親はさぞかし気合の入ったヤ
ンママだと当たりをつけて、そんなんばっか目で追いかけてたからなあ。まさか地毛だとは思んなかったぜ」
「お母さん外人だったね」
「それもすっげえ美人のな。親父さんは…目つき悪すぎ。や〜さんかと思ったぜ」
「ヒロマジでびびったでしょ」
「そりゃあな、交番に入った途端奇声を上げて飛びかかってくるんだからよお。場所が場所だけに凶悪犯
が逃亡を図ったのかと思ったぜ」
「キャハハ、ひっど〜い。子を案じる親心理解できない?」
「あんときゃそんなこと考える余裕なんかあるわけねえだろうが」
「まあ、あの子とあたしをかばおうとしたからヨシとしましょう」
「とっさにあの子はかばったけど、…お前は偶然だ」
「はいはい」
「…しっかし、あの子が親と再会できたときの笑顔、あの笑顔こそ『天使の笑顔』って言うんじゃねえか。やっ
ぱハーフだよな。まさに『人形のようにプリティ』そのもの。あれこそ最高の報酬だな、疲れが吹っ飛んだぜ」
「ほんとほ〜んと、でもなんか引っかかる言い方ね。あたしにとってはヒロの超意外な一面が知られたことで
大満足だけどね。でもあの子ってクォーターじゃない。なんとなくだけど」
「そうか?っと駅についたぞ」

「ねえ、このまま別れるのもなんだしヤックで祝杯といかない」
「おっ、いいね」
「もちろんヒロのおごりで」
「何でだ!!」
「あんたあの子の父親から御礼をもらってたでしょ」
「うっ」
「あの子の笑顔が最高の報酬なんだよねえ」
「ううっ」
「あたしもあの子が泣かないようにいろいろお話してあげたし、挫けそうになりそうなヒロを支えてあげたの
にねえ……」
「解った、解りました。どうぞお好きなものをご注文してくださいな」
「よろしい、子供のころの話を肴に一丁盛り上がりましょうか。そんでえ、次はゲーセンにカラオケよぉ!」
「ぐわっ。せっかくの臨時収入がぁ〜。今月ピンチだったのにぃ〜〜。ブツブツ……」


「…天使の子供はやっぱり天使ね、そして天使の贈り物……」


「ん、なんか言ったか?」
「ううん、な〜んでもない。さあ行こっか。今夜は眠らせないわよ〜。タカミツヒロアキく〜ん」
「ううっ、…勘弁してくれえ、メグミさま〜〜」




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 どうも、皆さん始めまして。いや本当は2作目なんですが、前作を削除ということにさせてもらってこれを
デビュー作に替えさせてもらいます。
 ですから、改めて始めまして。
 仕事の関係でパソコンを人に預けてたら丸々1ヶ月も空いてしまいました。
 で、久しぶりに見に来たらなにやら面白いことをされていたので参加させてもらおうと思い立ったのです
が……、久々野さんのおっしゃることも解るのですが、まあせっかく書いたのでこのまま投稿させていただき
ます。
 で、この話の登場人物って解りますよね?
 迷子の子です。
 男のほうはPS版とWin版でなぜか名前が違うのでタカミツを苗字にしてみました。
 で、後はまあこんな話です。
 以後よろしくお願いします。