To Heart WDASH7(7)  投稿者:闘魂秋吉


図書館1の速筆家(自称)闘魂秋吉が送る、
前回のあらすじッス!
前回…浩之が捕虜に歌を聞かせたら捕虜が発狂してぶっ倒れて意識を回復した。
あとマルチが死んだが替えのボディがあったのでそっちにデータを写して蘇った。
つぅーわけで、折角読んで下さっている方を全速で置いてきぼりにする内容でしたね!
さぁ今回もいってみよう!

第7話 壁の向こうが見えるとき

「しっかし驚いたなぁ。地球人同士で戦ってたんだぜ?」
あれから3日。浩之は今日も同じことを呟いた。
「でも浩之ちゃん、あの人洗脳されてたみたいだし、その敵のボスさんも地球人とは限らないよ?」
あかりが台所から顔を出して、浩之に言った。
「まあそうだな…待てよ…!?」
浩之は3日目にして、新しい仮説を生み出した。
「前の戦争が終わった時によ、一部のぜんとらんと、めるとらんが和平に反対してよ、
勝手に何処か行っちまったじゃねえか。」
ちなみに『ぜんとらん』と『めるとらん』とは、
それぞれぜんとらーでぃとめるとらんでぃの略称である。
「うん、何かの本で読んだ事ある。」
浩之は腕を組み、得意げに話し続ける。
「でだ、そいつらが、地球人を洗脳して使ってるんじゃねえか?」
あかりは浩之の意見にう〜ん、と唸り、
「でもそれじゃ、戦闘中に無気力になっちゃう人達の説明がつかないよ?」
この戦争では、戦死者数はあまり多くない。
むしろそれよりも、謎の光線を浴びせられ、無気力な状態になってしまう者の方が
遥かに多いのだ。
そのあかりの意見を聞いた浩之は、頭をぼりぼりと掻き、
「くそっ、いいセン行ってると思ったのになぁ…」
と唸った。
それきり二人は暫く沈黙する状態が続いたが、
浩之が口を開いた。
「よし……」
あかりは期待を込めた眼差しで、
「え?浩之ちゃん、何か分かったの?」
とか同じく期待を込めた口調で喋った。
「まずはメシだ。それからだな、他の事は」
「な〜んだ」
あかりはがっくり肩を落とし、とぼとぼと昼食の準備をするため台所へ歩いて行った。
「何だって何だよ、くそっ」
浩之は一人になったその部屋で、寂しく愚痴るのだった。

「ほれレミィ、タオル」
「Oh!Thankyou!ヒロユキ」
その日のライブが終わり、浩之達は舞台裏で寛いでいた。
それを一人、遠くから見つめる瞳があった。
深深と帽子を被り、ロングコートを羽織って(無論立て襟)る事もままならない。
そしてその眼光は、闇の中に生きる一匹の獣のような鋭さを持ち合わせていた。
「…藤田浩之か……」
その者の声は、一瞬の後、闇に消え、辺りには静寂が訪れる。
「…さて……」
その者は、落ち葉をかさり、と踏みつけながら、一歩、浩之に近付いた。
「ちょっとアンタ」
不意に後ろで声がして、その者は後ろを振り返った。
綾香が居た。
「何やってたの?浩之の事見ちゃってさ。
何アンタ、ストーカー!?正体を見せなさいよ」
綾香は喋りながら一歩、また一歩間合いを詰める。
その者はふうっ、と溜息をついて、
「まさか。私は…」
質問の答えは最後まで出なかった。
出す前に綾香が攻撃したのだ。
無論綾香は手加減した。
当たれば気絶するほどの威力はあるが。
が、その者はまるでその攻撃を予測していたかのように、
動じることなく受け流した。
「…!!」
二人の間合いが再び離れた。
「…やるわね、アンタ。これなら本気を出しても良さそうね」
綾香はそう言うと、不敵に笑った。
「だーかーら!私は!!」
「…さぁ!覚悟なさ〜い」
「人の話を聞け!もういい!この帽子を取れば分かる!」
そう言ってその者は、帽子の唾に手をかけた。
(隙有り!)
その瞬間、綾香の膝蹴りが炸裂した。
「がはっ…」
一瞬の後、その者は崩れ落ちた。
あの無防備な瞬間を突かれてはどうしようもない事だった。
「さぁ〜て、顔を拝ませてもらおうかしら?ストーカーさん!」
綾香は吹っ飛んだその者に近付き、その帽子を剥ぎ取る。
「……(思考フル回転中)……やばっ。」
綾香はその場から一目散に逃げ出した。

朝が来た。
「…はっ。」
倒れているその者は、幸か不幸か夜中誰にも発見されず、意識を取り戻した。
蹴りを食らった腹がまだ痛い。
「ぐう…綾香ぁ〜…!」
その者は腹をさすりながら憎悪の念を込め綾香の名を呼び、
ふらふらと朝焼けの街へと消えた。

綾香はこの日、いつななく落ち着きが無かった。
だから何故か、浩之の家で御飯を食べていた。
テーブルには綾香のほかに二人の人物が座っている。
浩之とあかり。この家の持ち主なんだから当然である。
「で?なんでかくまって欲しいんだ?一体何やった?
ほれほれ、言ってみろ」
浩之が片肘をテーブルにつけて、綾香に聞いた。
「え、あー、そのー……」
綾香はごにょごにょと口の中で何やら言っている。
「あー?聞こえねえなぁ」
浩之はにやぁと笑った。
「だめだよ浩之ちゃん。人には秘密ってものがあるんだよ。
あまりしつこく聞いちゃ、綾香も可哀想だよ。」
そんなあかりの意見を、浩之は、
「却下だ」
と、一言で片付けた。
どうやらこの前の蹴り未遂の仕返しがしたいらしい。
「うぅ…」
あかりは下を向いて黙ってしまった。
「いわねえとかくまってやらねえぜ〜?」
その言葉に遂に綾香は観念したのか、
「わーかったわよ!言えばいいんでしょ!言えば」
「そうそう。人間素直が一番」
浩之はそのセリフを言い、またニヤ、と笑った。
綾香はそんな浩之の顔を極力見ないよう心掛け、口を開き始めた。
「実は昨日ライブの後―――――」
ピンポーン
そのとき、なんとも間が悪くチャイムが鳴った。
ピンポーンピンポーン、ピポピポピポピポーン。
連打連打だ。
「んだよ、いい所で…」
浩之は面倒臭そうに腰を上げると、玄関へ向かった。
かちゃ。
鍵を外す。
その瞬間…
「綾香ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
強烈な一撃を食らい、浩之の意識はどこかへ飛んで行った。
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「…はっ。俺は一体…」
意識を取り戻した浩之は、ソファーの上に寝そべっていた。
「あっ、浩之ちゃん気がついたんだ。よかった…」
あかりが浩之の元へ駆け寄ってくる。
浩之はいまだ定まらない視線の中、
3人の姿を確認した。
一人はあかり。
もう一人は綾香。
それと――――坂下?
「綾香ー、坂下さーん、浩之ちゃんが目を覚ましたよー」
「え?ホント?」
二人も浩之のところに駆け寄る。
浩之はその身を上半身だけ起こす。
すると坂下がずい、と前に出て、
「すまん藤田!」といきなり謝った。
浩之は別にその事はどうでも良かったのだが。
浩之はまだ『礼』のポーズで謝っている坂下を指差し、
「綾香、お前がかくまってほしいって言ってた理由ってこれか?」
と綾香のほうに向き直り、質問した。


「…と言うわけ」
綾香の話を聞き終えた浩之には、怒筋がくっきりと出ていた。
「…ほう…つまり俺はお前の巻き添え食って気絶したわけだな…?」
「うん…ごめんね浩之(はぁと)」
浩之はまた笑いを浮かべる。
しかしその笑みは、優しい笑みではなく―――――
「綾香ぁぁぁ!!!」
ついさっきの坂下と同じセリフを喋り、浩之は綾香に跳びかかった。
綾香はそれをかわすと、
「ちょっと浩之!ちゃんと謝ったじゃない!」
とか吐きながら、狭い室内を逃走した。
「てめーのにゃあ坂下のと違って誠意がねえんだよ!!」
浩之はそれを追う。
そんな逃走劇は15分続いたが、
結局浩之のほうがさっきの坂下の一撃のダメージのお陰で倒れた。

そんな浩之の再復活を待って、やっと話が普通に戻った。
「…で?なんで昨日浩之の事見てたの?あんた仕事は?」
綾香が聞いた。
すると坂下は名刺を差し出し、
「昨日はその仕事の件で藤田に用事が有ったんだがな…」
と、さっきのは実は二重人格だったのでは無いかと思わせるような
落ち着いた口調で話した。
浩之はその名詞を受け取り黙読した。
みるみるその顔色が変わっていく。
どうやら名刺に目を通し終えた浩之は、
信じられないといった顔で、
「…えっと…つまりこれはどういうことですかさかしたさん」と坂下に返した。
全部平仮名だというあたり、かなりうろたえているらしい。
坂下は煙草に火をつけ、「…何って、わかるだろ?」と煙草を加えながら話し、
そしてニヤっ、と笑い、「プロデビューだ、おめでとう」と言った。


『ヨシエ・リップス』レーベル主宰、敏腕音楽プロデューサー坂下好恵(20)のある一日であった。
「似あわねー」
「さっきの取り消そうか?」
「…すいませんでした」

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次回予告!
敵との戦い一段落!
プロデビューもした事だし安全なステージ上で浩之は歌いつづける…!!
ってなわけには行く筈も無い!
新たな敵が急接近!
さぁーどうなる次回!『ああ無情(仮)』お楽しみに!
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ちなみにこのSSでは好恵はもう20の誕生日を迎えた後です。
煙草もぷかぷか吸います。あてつけです。
どんな風にやってこの年で新会社なんか設立したのかは…秘密よ。
……はいすいません。考えてませんでした。
空手はもういいらしい。まあ葵とか綾香にも言える事だが…
中間テストが近い!?知るかそんなモン!
留年?中退!?望むところだ!(出来れば嫌)