To Heart DASH7 第4話  投稿者:闘魂秋吉


さて、浩之が巨人探しをしに山に入ってから更に三日。
その間浩之はワリと飯も食わず、そのワリと強靭っぽい体と、
何故かワリと高いサバイバリティによって、生き長らえていた。
だから、そう簡単に他界する事は無い。
………『高い』と『他界』…ぷっ。

第4話 嵐の夜

一方その頃!
綾香とあかりの乗ったダイナマイトヴァルキリーが、
今度こそ宇宙へと発進しようとしていた!!
「行くわよ、準備はいい?」
「いいけど…綾香って、こういうのも操縦できるんだ。」
「ふふっ、好き勝手やってたからね」
そういった他愛も無い会話を繰り広げる二人の後ろには…
「サテそれでは、出発しまショウ!」
……3人目が居た。
「うわぁ!レ、レミィいつの間に?」
「チッチッチッ、狩りをやるには狩る対象に気付かれてはならない。
これ狩りの極意ネ(本当か?)。それを今応用しただけよ!」
「…よく分からない…」
あかりには、さっぱり話の意味がわからなかったらしい。
そして綾香は、
(意外とやるわね…レミィ…)
何かライバル心を燃やしていた。
「むぅ〜、やっぱ3人じゃ狭いか…」
「な、何とか、大丈夫、入った、よ〜。」
コクピットシートの後ろから、あかりが呻き声とも取れる声をあげる。
「いいから…アヤカ、気にせず早く発進させるネ。」
そんな苦しそうな声を後ろで出されたら、普通気にすると思うが…
でも、綾香は気にしなかった。
なぜなら、このギター型操縦桿の仕組みを覚えるので精一杯だったから。
「………分かったわ!これね!」
そういって綾香があるスイッチを押すと、機体はものすごい急加速で発進した。
「うごぅ」
「ぐはぁ」
後ろの二人は、たまったものじゃない。
どっちがどっちの声かは、伏せておこう。

「……ふう」
山に篭もって5日。浩之はいよいよ行き詰まっていた。
何も情報が無いのだから、当然の事ではある。
さすがに疲れたのか、浩之はちょっとした草原を見つけるとそこにどかっ、と
腰を下ろし、眠った。

……それから何日…いや、何時間かたったとき。
突然、風が強くなり始めた。
それを感じた浩之は、ばっと飛び起き、
「何だよ…気持ちよく寝てたっていうのによ…」
と、曇り気味の空に向かって、愚痴った。
彼は寝起きが悪い。

はたまたその頃、例の3人は…
「ちょ、ちょっと綾香、スピード速すぎ…ぐっ」
「仕方ないでしょ!3人分エア使うのよ!!早く何処か駐機(?)出来るところ探さなきゃ、
私達窒息死よ!それがわかっててスピード落とせ、っていうなら落とすけど?」
「それは嫌ネ…」
「でしょ?じゃあスピード上げるわよ!」
「え?こ、これ以上デスカ…?げっ」
こっちもいろいろ、大変のようである。

風はいよいよ強くなり、それに雨が混ざり出した。
季節外れの台風、である。
「ん〜、いい雨だぜ。」
浩之は上機嫌になった。
自然の雨、風、空気を感じるのは久し振りだったからだ。
「ヒャッホウ!!」
思わずぬ出来事に浩之ははしゃいでいた。
巨人の事も、今の彼には後回し。
だが、それも彼の『唄う理由』には不充分だった。
彼は、どんな環境に置いても唄ってきた。
人工物の中でも、
戦場でも。
だから自然の脅威とか、猛威とか、そういうのに感動する事はあっても、
それは彼の中で唄とは結びつきはしなかった。
ゆらり。
「!?」
浩之は、雨と風で曇った視界の先に、影を見た気がした。
それが何なのか、今の彼には一つしか答えが思い浮かばない。
「巨人だ!!」
浩之は駆け出し、その影を追った。

…声が聞こえた。
巨人の声だ。
透き通った、いい声をしている。
…女か……。
いい唄だ。
浩之は、ついに巨人の姿をこの目で見た。
そして浩之は開口一番、
「すげえ…」
と、呟いた。
その巨人は、身長10Mはあるだろうか。
その巨人の目からは、浩之はあくまでちっぽけな存在にうつるであろう。
もしかしたら、見えもしないかもしれない。
「すげえぜ…」
浩之は、確かな感動を覚えた。
この台風に、勝るとも劣らぬ…いや、勝っている感動を、
彼は、その巨人に比べるとあまりにちっぽけな体で受け止めた。
「すげえ…」
純粋に感動している彼が今話せる言葉は、これだけである。
「…!?」
巨人が、浩之に気付いた。
目と目が合う。
一瞬の時が流れ、その巨人は、背中に手をかけた。
ギターだ。
その巨人…もう巨人と呼ぶのは失礼ではなかろうか?
彼女は、ギターを弾き、唄った。
その光景は、浩之にまた新たな感動を生み、
そして、もう一つの感情をも目覚めさせた。
それは……


                                        (続く)
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次回予告
浩之「さて?今回の話し相手は〜?…何?キャラクターが思いつかんから俺一人でやれと?
ふざけんな!冗談じゃねえ!だいたい次で第2部終わりのくせに!
そもそもこんなつまんねえ企画のSSを長々とやること自体…おい!聞いてんのか?おい!!」

                  次回 『唄、そして再会』