宇宙は無限。 星の煌きの中で、戦乱の火が燃えあがる事があっても、 それは無限の宇宙の中の、ほんの一滴の出来事なのだ。 To Heart DASH7 第1話 理想、空想、現実 藤田浩之 19歳。 目つきの悪さが特徴的。 性格は、ぶっきらぼうで、世話を焼きすぎる事もある。 結局のところ、いい奴であるという認識が彼の周りの人にはある。 彼は、彼の周りの人物からは、確実に慕われていた。 同じバンドのメンバー、神岸あかりから。 来栖川綾香から。 宮内レミィから。 現市長の、来栖川芹香から。 高校の後輩の、松原葵から。 HMX−12、マルチから。 調査船に乗り、帰らぬ人となった、長岡志保から。 佐藤雅史から。 保科智子から。 姫川琴音から。 雛山理緒から。 だが、そんな彼を慕っている人物達も、近頃の彼の行動には首を傾げるのである。 なぜなら、彼はどこからか手に入れてきた軍の最新鋭ヴァルキリーを乗り回し、 戦場で唄うと言う行為を繰り返すのだ。 当然、敵味方共通して、何の効果も無い。 では、何故彼は戦闘の真っ只中に突っ込んで唄いつづけるのだろうか? 彼には、信念がある。 『理想と空想』 理想は、自分の努力、才能、運などでで何とかなる。実現可能だ。 理想とは、完全な状態だからだ。 空想は、何をやっても無駄。実現不可能だ。 空想とは、机上の空論に過ぎないのだから。 これが、彼の考え方である。 勿論、自分のやっている事は『理想』であるという信念を、 彼は持っている。 だから今日も、藤田浩之は唄うのだ。 「俺の唄を聞けええええええええ!!」 もう、10回以上になるか。 それでも彼は、自分の信念を曲げようとはしなかった。 今日の敵は、明らかにいつもとは違う。 普段の敵ならパイロットを殺す事は最小限に抑え、 例の青いレーザーで無気力にさせて、それだけすると帰っていくからである。 つまり今のところ、TH7の軍人が廃人同然になるのと引き換えに、 シティは平和を得ていたと言える。 だが、今日の敵は違うのだ。 容赦無く攻撃を加え、容赦無く殺す。 いつもの敵には無かった残忍さがそこにあった。 矢島は、今日の敵の性格を考えると、今の軍の戦力では不安だと考えた。 そこで、浩之を説得しようとする。 「藤田!敵に唄を唄っても、誰も聴いてはいないんだ!何故それが分からん! 貴様のヴァルキリ−の性能を活かせば、このような敵など軽く捻れると言うのに!」 浩之は、それに耳を貸す事は無い。 唄う為にここにやって来ているのだから。 しかし浩之も、戦況全てに無関心と言う訳ではない。 民間船などを守るように唄っているのだ。 しかし正直それらの民間船がこれまで無事でいられたのは、 敵の目的が人殺しではないからだ。 もし、本当に殺す気で攻めてきたら…… 浩之は、今日も戦場にのこのこ現れた民間船を護衛するように戦っている。 しかし。 敵の中でひときわ目立つマシン…リーダー機だろうか? それが先程から明らかにその民間船を狙っているのである。 浩之は、そのリーダー機に民間船までの射線を開けない様に、 計算しながら動く。 だが、そのリーダー機は囮だった。 浩之機とリーダー機が対峙している隙に、他の一機が民間船を狙撃しようとした。 射線は開いている。 今敵が銃弾を発射すれば、民間船は間違い無く沈むだろう。 浩之は、咄嗟に護身用に積まれたミサイルのボタンを押してしまった。 敵は撤退し、戦闘は終わった。 浩之の機体に、矢島から通信が入った。 「藤田、よく撃った」 それだけ言って、通信は途切れた。 浩之が消したのだ。 再び、通信が入った。 今度は綾香からだった。 浩之は、綾香に「俺は旅に出る」と短く言い放った。 「ちょ、ちょっとひろ…」 浩之は、通信を切った。 浩之は、自分のやっている事が『理想』でなく、 所詮、『空想』だったのではないか?と感じた。 そして浩之は機体を翻し、 漆黒の闇へとその姿を消していった。 (つづく) ========================================= 次回予告 浩之「さよならだトゥハート7!俺は旅に出る!」 あかり「ひろゆきちゃ〜ん、そんな事するとますます私達の影が薄くなるじゃな〜い」 浩之「大丈夫だろ、多分綾香も出ねえ」 あかり「………ほんとにぃ〜?」 次回 『旅路の果て』 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 闘魂「こんにちわ、闘魂です」 影「やれやれ」 闘魂「タイトルは変わりましたが、要するに第2部です。こんな駄文でも、 読んでくれると嬉しいですね」 影「これ何部まで続くの?」 闘魂「構想では、全7部。」 影「長すぎる!他の人の迷惑も考えてみろ!」 闘魂「それは自信ない」 影「じゃあ他の事には自信ついたってのか?」 闘魂「えっと、第2部を始めたので暫く俺は矢島の方は休止します。 会長、第2部が終わるまで宜しくお願いします!」 影「本当に他人の迷惑を考えとらんな、お前」