フラレ男矢島の調査日記 富士樹海奥地に幻の神岸村を見た!(前)  投稿者:闘魂秋吉


やあ!俺は矢島!もう説明する必要も無いナイスガイだ!
今日も俺は神岸さんに告白する為に学校へ行く!
いや〜、この前はどうなるかと思ったけど、考え直してくれたみたいで良かった良かった。
さ〜て、教室には麗しき神岸さんの御姿が〜♪………
「いないぜ」
何だって?
「いねえよ、あかりは。」
「藤田ぁぁぁぁぁ!!貴様、デマを言って俺を神岸さんから引き離そうとしているな!?」
「いんや、あかりは今日は悩み事があるから休むってさ」
「悩み事?」
神岸さんの悩み事って何だろう。
休むくらいなんだから、余程深刻な悩みに違いない。
はっ!!!
まさか神岸さん、遂に俺の愛に答える気になったのか?
だけど俺は他の女性にもモテモテ(死語)だから俺に告白した事で、
クラスの女子からいじめに遭うのではないか、そんな事で悩んでいるに違いない!!
安心して下さい神岸さん!俺の意中の女性はあなたただ一人!
たとえあなたがいじめにあっても、俺が必ず守って見せます!!
「おい矢島」
「何だ藤田!俺は今…」
「あかりが休んだ理由、別にお前の愛に応える気になったからじゃあねえぞ。
そんぐらい分かってるよなぁ?」
え?違うの!?
「じゃあ何で…?」
「これだよ、これ」
藤田は懐から一枚の紙を取り出した。
…どうやら雑誌の切りぬき記事のようだ。
確か来栖川が発行している、情報誌…
「あかりが熊グッズ好きだってこと、知ってるよな?」
「当たり前だ!
俺は神岸さんの趣味、好きな食べ物、家では何をしているか、その他諸々
すべて調べているのだ!
俺の神岸さんについての情報量は、長岡さん以上と断言できる!!」
「おまえそれ、ストーカーじゃねえのか?」
「ストーカーじゃなあああい!!愛ゆえになせる行為だ!」
「……まあいい。とにかくこの記事を見てみな。」
そう言って藤田は、その切りぬきを俺に差し出した。
「なになに…富士樹海の奥地に、伝説の神岸村を見た…?」
伝説とか書いている割には、写真とかも撮ってあるじゃねえか。
「そう。その写真の一番奥にあるものを見てみな。」
「こ、これは…熊!?」
写真の一番奥には、熊の石像…らしきものが写っていた。
「そう。熊の石像だ。あかりはな、この熊石像を何とかして手に入れたいと悩んでいるんだよ」
「熊石像を…手に入れる?」
「そう。だけどこの神岸村は、調査隊も偶然発見したらしく、詳しい位置はわかっていない。
しかもこの熊石像、どうやら住民の間では『神』として崇められているらしい」
「お前…やけに詳しいな」
「あかりに聞かされたんだよ、散々な」
藤田に質問をした時、俺の決心は、もう決まっていた。
「あかりさんがそこまで熊石像を欲するのならば…」
「ん?どうした矢島?」
「俺が、俺がその熊石像をとってきてやるうううううう!!!!!!」
「マ、マジで!?」
藤田も流石に驚いたようだ。
「見てろ藤田…俺が熊石像を持ちかえった日、それこそが俺が神岸さんと結ばれる日だ!!」
「……矢島、お前の決心がそこまで強いなら、もう止めん」
「………藤田?」
「…………頑張れよ、矢島」
意外だった。
いままで敵としか見ていなかった藤田に、こんなセリフを言われるとは…
ありがとう藤田!
お前の応援、確かに受け取ったぜ!!
そして俺は、見事神岸さんと結ばれて見せる!!



翌朝。
「しばらくお別れだな…俺の家、俺の家族、この町…そして、神岸さん…
だが俺は!神岸さんと結ばれるべく!今旅立つのだ!!
待っていてくれこの街!神岸さん!!俺は…
俺は必ず帰ってくる!!!!!!」
俺は我が家に背を向けて、
富士樹海の方角を目指し、歩き出した。





歩き出していった矢島。
それを見つめる、4人の人物。
「浩之ちゃん、矢島君もう行った?」
「ああ、行ったな。でもアイツもそこまでするか〜?」
「ホント、浩之に頼まれてみたから来たものの、なかなかやるわねアイツ。別の意味で。
ねぇ?姉さん(寒っ)。」
「……(全くです、と言っている)」
「う〜ん、愛の戦士矢島、富士樹海で戦死というのは?」
「寒いぞ、あかり…。
そんなギャグを言う奴には…ていっ。」
「ひゃぁ」
「おーおー、仲のよろしい事で」
「……(悔しいらしい)」
「うるせえ。そんな事より、カメラの設置は済んでるのか?」
「うん、万全よ。これから楽しみね〜」
「……(全くです、と言っている)」
「じゃ、一旦解散と行くか」
「そうね」
「うん、それじゃ。その矢島って奴がアレを見つけたら連絡よろしくね」
「おう、勿論」
「………(それでは、と言っている)」


このような会話が繰り広げられていたことを、
矢島は知る由も無い……

                                     (中編へ続く)

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闘魂「例によって大幅改稿だ」
影「それどころか今回はなんと三つに分かれましたしね…読んでる人には
いい迷惑ですよ。」
闘魂「俺はこれを悪い事とは考えてはいない。なぜなら、
読む人に喜んでもらう作品を作ろうとするのはSS作家として当然の事であって、
結果的に分かれてしまったのなら、
仕方が無いではないか!」
影「おお〜、かっこいい。」
闘魂「…っていうのはタテマエで、ホントは自分の思いつくまま書いたら多くなりすぎて
じゃ分けるかってことで3本になっただけなんだけど」
影「……やっぱ死ね、このド外道」