To Heart7 第3話&第4話セット  投稿者:闘魂秋吉


「戦争が…始まったのか?」
俺は、そう呟いた。
(戦争なんて下らねぇぜ…俺の唄を聞けば…戦争なんてどうでも良くなるってのによぉ…)
だが、奴らはシェルの外。
歌は聞こえやしない。
どうやって俺の歌を聞かせるか?
………そうだ。
アレがあったじゃないか。
俺は、家の方角に向かって、走り出した。

第3話 ファイヤーヴァルキリー立つ!

あかりは人ごみの中、一人逆方向へ向かっていく浩之を見た。
「浩之ちゃん!?どこに行くの!?」
だが、あかりの声は浩之には届かない。
「あかり!早くシェルターに避難するのよ!」
綾香が、そう叫んでいたのは、あかりにも聞こえた。
「でも、浩之ちゃんが!」
うろたえるあかりに、綾香は、こう答えた。
「大丈夫よ、浩之は何か考えがあるのよ。きっと…」
「うん…そうだね。ありがとう、綾香。」
「ふふ。」
浩之に何か考えがあるかなんて、綾香にもわかるわけが無い。
だが、今はあかりを落ち着かせる事。
それが第一だと、綾香が思っただけのことである。
「アヤカ!アカリ!早くするネ!」
人ごみの向こうのほうで、レミィがそう言った。
「うん、分かった。行こう、綾香。」
「ええ。」
(浩之…何を考えてるか知らないけど、死ぬんじゃないわよ…)
そしてあかりと綾香は、シェルターへと向かう人ごみの中へと消えていった。


そのころ軍は、対応に追われていた。
「かぁ〜〜〜っ!!ヴァルキリー隊、展開が遅いぞッ!!」
バトルトゥハート7艦(略してバトナナ)の艦長、セバスチャンが唾を飛ばしながら叫んだ。
「早く展開させんか〜〜ッ!!」
「「了解!ヴァルキリー隊、発進、展開急いでください!」」
オペレーターコンビ、内藤&永田が、ヴァルキリー隊に指示を送った。
せめてセリフがあればヴァルキリー隊の一員になっていたかもしれないのに、
かわいそうな奴らである。
そのころ、
まだ格納庫にも辿り着いていなかったヴァルキリー隊があった。
「マルチ、もっと早く走って!」
隊長の、葵=松原が叫んだ。
「りょ、了解…はわわ、走りにくいですぅ」
着なれない宇宙服を着てマルチは走るが、やっぱり遅い。
というか、ロボットが宇宙服を着る必要は無いと思うが。
だがこれも軍服の一種。仕方が無い。
というかマルチ、なぜLLサイズ?
「これじゃあ格納庫に着くのは、後2分48秒分程かかりそうです」
セリオが冷静に状況を判断した。
「余計な事言ってないで、速く走って〜〜!」
葵はすでに涙目である。
(うう…何で私がこんな部隊の隊長に…)
なにはともあれ、彼女らが格納庫に着くのは、もう少し先になりそうだ。
…そのころ、その格納庫では、
軍一のエリート部隊、トパーズ・フォースが出撃しようとしていた。
「トパーズ・フォース1番機、橋本、出る!!」
「了解。お気を付けて」
続いて、
「2番機、矢島、行くぞ!」
「いってらっしゃ〜い」
「何か俺のときだけ軽くないか?」
「気のせいですよ。」
更に、
「3番機、垣内、行きます!」
「前方に注意して下さい!」
「了解!!」
ばしゅ、ばしゅ、ばしゅうう。
トパーズ・フォースの3機は、こうして出撃していった。

ところで垣内って、顔グラあるくせにやけに印象薄くない?

…………
浩之は走った。
片道20分かかるはずの家までの道を、10分で着くほどに。
そして浩之は、家のドアを開け、階段を下った。
…下った!?
そう、浩之の家には、地下室が隠されていたのである!
地下室には、一体何が!?
地下室には、一機のヴァルキリーが置いてあった。
いや、地下室と言うのは間違っているかもしれない。
むしろそれは、地下格納庫と呼ぶに相応しかった。
「親父の形見のヴァルキリー、やっと使うときが来たぜ…!」
浩之は、颯爽とそのヴァルキリーに乗り込んだ。
浩之は母の顔を知らない。
物心ついたとき、母はすでにいなかった。
父はよく浩之にヴァルキリーを見せては、
自分は元軍のエースパイロットだった、といつも誇らしげに語っていた。
だがその父も、浩之が10歳のとき死んだ。
浩之は、トゥハート7に乗る決心をした。
何故かは分からない。
ただ、そうしたかったのだ。
当然、親父のヴァルキリーも持ちこんで。
「よぉぉぉぉし!!行くぜぇぇぇぇぇ!!」
浩之がそう叫ぶと、家の前の道路がせり上がり、
丁度浩之の家の地下室からヴァルキリーが発進できるようになっている。
いや、そうなるようにした。
ばひゅううううん…
浩之の父が使っていた機体(を浩之が改造した)、VF−1J改通称『ファイヤーヴァルキリー』は…
宇宙へと跳んだ。

「な…何だと!?」
矢島は絶句した。
軍の誇るヴァルキリーが次々と撃破されていく。
だが矢島が絶句したのは、そのせいではない。
敵は、機体を撃破して、脱出ポッドで逃げ出した者を捕獲して、
ロボットの胸のあたりから青いレーザーらしきものを出す。
それだけやったら、捕虜にもせずに、すぐに次の敵の撃破にかかる。
敵は、そればっかりを繰り返していた。
「一体何をやっているんだ?あいつら…」
矢島は、戦場から離れた場所へ流された、ひとつの脱出ポッドを見つけた。
「おい、大丈夫か!?」
応答が無い。
「おい!どうした!?おい!」
矢島は、その脱出ポッドへと機体をよせた。
中には、無気力になった軍人がひとり、横たわっていた。
「何なんだ、一体…」
そのとき。
『俺の唄を…聞けぇ〜〜〜〜〜〜!!』
浩之が現れた。

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「来た来た来た来たぁ〜〜〜〜!!宇宙だ!」
浩之は興奮していた。
「戦争屋どもめ!戦いなんてくだらねえぜ!」
叫びっぱなしである。
「俺の歌を聞けぇ〜〜〜〜〜〜!!」
うるせえ。

第4話 ファイヤーヴァルキリー沈む!本日の教訓!!

そのころトゥハート7では、
「浩之ちゃん、何処に行ったのかしら…」
あかりが、心配していた。
別に何かするわけではない。
ただ、心配していた。

レミィは、壁をドラム代わりにして、スティックで叩いていた。
それが今彼女にできる、唯一の自己主張だった。
「もっと出番が欲しいネ〜〜〜!!」
多分ムリ。

浩之は、歌い始めた。
敵味方、全ての通信に割り込んで。
その唄う男の正体にいち早く気づいたのが、
「ふ…藤田ぁ!?」
…矢島であった。
「…奴をこのまま野放しにしておく事は、我が母校卒業生一同の恥!!奴は、この俺がとっ捕まえてやる!!」
そういうと矢島は、
「ルゥパ〜ン、逮捕だぁ〜!!」と、浩之のほうへ飛んでいった。

浩之は、囲まれた。
敵のど真ん中で、あんだけ騒ぎ散らせば当然の事である。
だが当の本人は、
「俺の歌を聴きに来たのか!?」
呑気なものである。

綾香は、シェルターから姿を消していた。
今回は、これ以上このトゥハート7に直接攻撃はしてこない。
そう、思ったからだ。
別にそれは、科学的理論に基づく結果とか、そんなものではない。
ただの、勘だった。
綾香は、街中で、この状況下でも映っているオーロラビジョンを見つけた。
そこには、敵に向かって唄いつづける浩之の姿を、無人カメラが映していた。
「…ふぅ〜ん、そういう事なの」
綾香には、浩之がこれからやろうとしていることがすぐに分かった。…らしい。
それだけ見ると、綾香は夜の町に消えた。
(散歩でもしようかな…)
そう、思ったらしい。

浩之は、敵からリンチをくらっていた。
「無理もねぇか…40年前の機体だしな。
唄はまた今度、たっぷり聞かせてやるからな!あばよ!!」
そういうと浩之は、脱出ポッドを射出した。
割とあきらめがいい。
だが敵はしつこい。
脱出ポッドめがけて一直線だ。
そこで浩之は、
2段目のジェットを噴射して、逃げた。
40年前のこの機体だが、この2段ジェット噴射式脱出ポッドのおかげで、
ぜんとらーでぃとの戦争当時は生還率はNO.1だったという。
その内脱出ポッドでの生還の割合は、68.7%にも及んだ。
何か情けない。
なんとか敵の手から逃れた浩之は、トゥハート7の方向へと流されていった。

矢島が、浩之がもと歌っていた宙域に辿り着いたとき、
浩之はもういなかった。
「死んだか…藤田。たとえ脱出していたとしても、
他の奴のようにあのレーザーで無気力になっているはずだ。」
(よかった…
これで我が母校の名誉は守られた…)
それと同時に、
(ふふふ…神岸さんを彼女にするビッグチャンスがやってきたぞぉ…!)
矢島はそう思った。
懲りない奴だ。

あかりは、まだ浩之を心配していた。
あ、今丁度あかりのいるシェルターの真上を、浩之が乗っている脱出ポッドが通過していった。

レミィは、まだ壁を叩いていた。
俺がレミィ嫌いな訳ではない。
使いどころが無いだけだ。

そのころ
例の葵ちゃん達の部隊、アメジスト・フォースは、やっと格納庫に辿り着いた。
「や…やっと…ついた…」
「つ…疲れました…」
ロボットなのに?
「まさか途中であんな事が起きるとは…私の予想能力を上回っていました」
「…あ、そう」
途中、どんな事が起こったのか、それを知る者は、この3人以外にはいない。
俺も知らない。
ついでにあと1行、この後に付け加えるとするならば、これを書こう。
『もう、戦闘は終わっていた。』
ちゃんちゃん

浩之は、脱出ポッドのなかで、考えていた。
(本日の教訓!!
       40年前の機体で出るのは、もう、止めよう…)
40年前の機体という事は、F91に旧ザクで戦いを挑むようなものである。
と、言う事だ。
ついでに言うと、
浩之の家は、地下10階まであって、
浩之の家には、同じヴァルキリーが、あと9機あった。
いらねえ。

                                  To Be Continued…

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次回予告
あかり「あの〜…」
綾香「ん?何?」
あかり「綾香目立ちすぎ…」
綾香「…そう?」
レミィ「ソウヨ!ズルイワヨ!アヤカ!!」
あかり「あ〜、レミィ目立つためにあえてセリフ全部カタカナにしたの?ずるーい」
レミィ「勝てば官軍、ヨ!」
綾香「…それ、絶対違う」
あかり「次回!物件王誕生?」
レミィ「アカリも、ズルイ…」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
闘魂「毎回毎回こんな駄文に付き合ってくれる皆様、ありがとう!」
妹「…本当にそんな事思ってんのか?」
闘魂「おわっ!なんだ(中略)妹か」
妹?「いや、違う」
闘魂「違うの?」
妹じゃない「そう、違う」
闘魂「そうか。じゃ、名前は?」
影「影だ…お前の…」
闘魂「え?マジ?」
影「これからよろしく…」