20045年も、夏を迎えていた。 ・・・とは言っても、その『夏』とは、所詮人工的にコントロールされたものに過ぎないのだが。 まあ、そんな事はどうでもいい。 罵炉唄第8星系調査団を乗せたシャトルが消息を絶ってから、もう、1年半か・・・。 あのころは良かった。 ステージが用意された、大通りのすぐ脇の公園。 熱唱する俺。 演奏するあかり、雅史。 少ないながらも熱狂するギャラリー達。 だが、そんな時が戻ってくることは、もう・・・無い。 バンドのメンバーで、キーボード担当だった雅史。 あかりの薦めで、メンバーに加える筈だった志保。 あいつらも、あのシャトルに乗っていた。 適性テストの結果が、なまじよかったばかりに。 あいつらも、もう恐らく・・・ そんなことを考えるととても唄う気にはなれず、唄、音楽、いやこの世の全てに対して、 俺は無気力になっていた。 バンド・・・か・・・。 3人(と、ドラムマシン)で何とかやっていた俺達のバンド『ダイナマイトボンバー』。 それも、たった一人、雅史を失っただけで、活動を休止していた。 実際、いつ解散してもおかしくない。 3ヶ月くらい前から、あかりは毎日同じ質問を俺にしてくる。 その内容は、バンドのこれからについて。 俺がすっぱり「解散しよう」と言えば、それで終わり。 だが、その一言がどうしても言えない。 (まだ、俺はこのバンドに未練があるのか・・・。) そう気づいた俺は、最後の賭けとして、メンバー募集告知をした。 これで集まらなかったら、潔く解散だ。 第1話 なるかバンド再結成!新ボンバー誕生!? 「うーん・・・応募ないねえ・・・」 そりゃそうだ。 人生そう上手く行ったら、苦労が無い。 俺は完全に負け犬モードに入っていた。 (さて、解散の事をどうあかりに伝えるか・・・) もう俺の頭の中は、そんな考えのみだ。 メンバーが集まらなかったんだ、仕方が無い。 よし・・・あかりに言うぞ・・・ 「あかり」 「何?浩之ちゃん」 「実はな・・・」 こんこん。 会話を遮るように、ドアをノックする音が響いた。 「すいませーん、バンドのメンバー募集の告知見て来たんですけど・・・」 え? 来たの? 俺は、少し複雑な気持ちになった。 「はーい、どうぞー」 あかりが答えた。 かちゃり。 ドアが開かれる。 入ってきた人物、その名は・・・ 「あ、綾香ァ?」 「はぁ〜い、久しぶりね、浩之。」 綾香=クルスガワ。 俺が通っていた高校、トゥハート7第2高校からやや北よりに位置する、超お嬢様高校、 セブン女学院の生徒。 なんでそんなお嬢様と俺が知り合いなのかというと、ちょっとした知り合いである、 同じ高校の先輩、芹香=クルスガワの妹だからだ。 ちなみに芹香さんは、今このトゥハート7の市長をやっている。 まだ20歳なのに、大したもんだぜ。 「で?何しに来たんだ?綾香」 「だから、さっきドアの前で言ったじゃない。メンバー募集の告知見て来たんですけどー、って。」 って事は・・・ 綾香がウチのバンドに入りたいってことか? これは嬉しい。 だが、いくら人手不足とはいっても、演奏できない奴をメンバーに加える事はできない。 「綾香、お前演奏できるのか?」 「ん〜、一応は」 おいおい。 「じゃ、やってみてくれ。」 「どの楽器をやればいいのかしら?」 「何が出来るんだよ」 「う〜ん・・・何でも・・・かな?」 はぁ〜。 ホントかねえ。 「じゃあ、キーボード弾いてみてくれ。」 「OK。」 キーボードは、昔雅史が弾いていた。 手で持って弾くタイプのものだ。 その雅史のキーボードを綾香は手にとって、演奏をはじめた。 その音色は、どう誉めたらいいのか分からないほど、素晴らしかった。 これならバンドをまたやれる。 俺の中で、音楽、そして唄への情熱が再び燃え上がり始めた。 綾香の演奏が終わった。 「ふう。どう?浩之」 「おめー、どこが『一応弾ける程度』だ」 「え?そんなに下手だった?」 「あほ。その逆だよ、逆。」 「それじゃあ・・・」 「ああ。文句無しに合格だ。あかりもいいよな?」 「うん。綾香さん、キーボード上手ね。」 確かにすごい、悪いが、雅史よりも数段上だ。 「ふふふ。神岸さん、いいのよお世辞は。」 「お世辞じゃないよ。それに、今日から同じバンドのメンバーなんだから、『あかり』でいいよ」 うわ、歯が浮きそうなセリフ。 「分かったわ。じゃ、これからヨロシクね。浩之、あかり。それから、私の事も『綾香』でいいのよ?」 「俺はもうそう呼んでるけどな」 う〜ん、予想を遥かに上回る綾香の上手さ。 ドラムマシーンのぎこちなさをもカバーできる程に上手い。 「よし、じゃ、とりあえずこの3人で・・・」 「ちょっとまった〜〜〜!!」 「うわっ!なんだ、レミィか・・・。」 レミィ=ミヤウチ。 彼女も、わが母校トゥハート7第二高校の同級生だ。 「ヒロユキ、このバンド、ドラムのヒトいないのよネ?」 「ああ、いないぜ。」 なんせ、『ドラム自動演奏ロボ、ドラムマシーン50000Z』に頼りきりだったからな。 「アタシ、ドラムできるヨ。」 「おお!そうなのか?ならちょっと叩いてくれないか?」 「うん、いいわヨ。」 これが、レミィもまた上手い。 ドラムマシーンなんて比較にならないぜ。 決まりだな。 「レミィ」 「何?ヒロユキ」 「お前、ウチのバンドに入ってくれないか?」 「何いってるノ。そのためにワタシここに来たのヨ。」 「ありがとな、レミィ。えっと、じゃメンバー紹介と行くか」 「知ってマス。さっきから部屋の外で聞いてマシタ。」 「何だよ、そうならそうと早く言えよ。」 「よろしく、レミィさん。」 綾香がレミィと握手した。 するとレミィは、 「『レミィ』でいいのヨ。同じバンドのメンバーなんだからネ。」 真っ赤になるあかり。 どうやら、さっき自分の言った台詞のクサさに、ようやく気づいたらしい。 「レ・・・レミィ・・・いつから聞いてたの・・・?」 「フフフ。壁に耳あり障子に目あり、デス」 「もう、レミィったら。」 「さて、じゃあ新生ダイナマイトボンバー、活動開始といくか!」 「うん!」 「ふふ、張り切ってるわね」 「ワタシ、やりマス!」 あかり、綾香、レミィがそれぞれ返事をした。 ・・・・・・ ったく・・・解散しようとした瞬間、これだ。 俺もツイてるのか、ツイてないのか・・・ ともあれ、こんな上手い奴が二人も入ってくるなんてよ・・・ 唄いたくなっちまったじゃねえか。 「よーし、唄うぜ!!」 To Be Contiued・・・ =============================================== 次回予告 あかり「いよいよ明日はライブの日だね。」 浩之「俺の唄が光って唸るぜ!」 綾香「あら〜?浩之、あれ何かしら?」 浩之「戦争が始まったのか!?」 あかり「次回、久しぶりのライブ!トゥハート7危うし!?」 浩之「か〜、燃えてきたぜ!!」 * * * * * * * あ〜、こんなに書いて全然進まなかった・・・・・・ 一体何回で終わる事やら・・・