千鶴さんと一杯 投稿者: だよだよ星人
「耕一…さん?」
「わっ千鶴さん」

その晩なかなか寝つけなかった俺は、一杯引っかけようと台所にきたところだった。

「どうしたんですか?」
「いや…ちょっと眠れなかったもので」

今日の千鶴さんは縞のパジャマ。肩にカーディガンを羽織っている。
良かった。透け透けのネグリジェなんか見たらますます目が覚めてしまう。

「眠れない…ですか」
「うん」

俺は棚からウイスキーの瓶を取り出すと、グラスを…二つ持ってきた。

「どう?千鶴さんも」
「うふふ…いただきます」

二人で台所の椅子に座った。
いつもは居間の座布団で食事しているが、台所にも一応テーブルと椅子がある。

「ロックでいいよね?」
「ええ…ダブルでお願いします」
「了解(笑)強いもんね。千鶴さん」

俺は冷蔵庫から氷を出して来ると、グラスに入れてウイスキーを注いだ。

カラカラカラッ
箸をタンブラー替りにしてかき回す。

「はい。千鶴さんの分」
「うふふ…ありがとうマスター」
「どういたしまして(笑)」

グラスを口に持っていく。綺麗な千鶴さんと二人っきり、くつろいだ雰囲気。

「うまいっ」
「…おいしい」

千鶴さんの頬がほんのり赤く染まっている。う〜ん。何とも言えん。
こうして狭い台所のテーブルで飲んでいると、大きな屋敷であることを忘れてしまう。
まるでどこかのマンションの新婚さん…みたいだ。
もちろんどんなに酔っぱらっても…千鶴さんに酒のつまみをつくってもらおうとは考えたりはしない。

「二人でこうやって飲むのって…初めてだね」
「そういえば…そうね」

そうだ。どうして今までこういう時間を持たなかったんだ。全然気がつかなかった。
昼間の生活だけでなく、晩には晩の楽しみ(変な意味じゃなくて)もあるじゃないか。

「昼間は未成年がたくさんいるから…だな」
「(笑)そうそう」
「今度から時々二人で飲もうよ」
「そうね…いい考えだわっ」
「やっぱり大人は大人同士だよ」
「そうよね〜っ」
「えへへ」
「うふふ」

こっこれは…久しぶりに二人で部屋へ…突入モードか?
いやそれではますます寝れないぞ。いやしかし…パジャマもなかなか…。
よく見ると…やっぱり胸…つけてない…。うぐっ。

「どこ見てるんですか?耕一さん…」にこにこ笑っている。
「えっ?いや…あはは…」
「?」

だが今度は千鶴さんが…急に下を向くと、ぼそぼそと言った。

「…そう言えば…最近…あの」
「え?」
「ご無沙汰……いえっ…何でもありません」
「あっ…あははははっ」
「うふふっ…」

もわもわ〜んとしたムードが狭い台所に満ちて、もうゴールはそこまで迫っていた…はずだった。
だが柱の陰から触手のような髪の毛がぴょこんと揺れていた。

「ずっずるいよ。千鶴お姉ちゃん」
「…こう…いちさん…」目が恐い。
「ふんっ…どうせ朝になったら人に片づけさせるくせに」
「…飲みたいな。私も」口元に手をやってうつむく。
「…無理…」
「そうよ。未成年なんだから」
「うううっ」
「…私も…飲みたい…」じ〜っ
「そんなこと言うから…私も飲みたくなってきたじゃないか」
「だっだめかな?梓お姉ちゃんっ」
「……」こくこくっ
「いやでも…それは…いくらSSでもまずいだろう…」
「○に入ったりア○ロやレ○は許されるのに…」
「……」こくこくっ
「いやそれは(汗)別に法律に違反してるわけでは…」
「…いい考えが…あるかも…」
「えっ本当?楓お姉ちゃん」
「なんだい?その考えってのは」



「あれって…何でしょうね…千鶴さん」
「え…?」

一瓶を空にしてぼんやりした俺達の前で、いつのまにか酒盛りをする三人。
見ると背中に紙を張り付けている。

梓の背中には「+2」
楓ちゃんの背中には「+4」
初音ちゃんの背中には「+5」

「…なんか…鍛冶屋で鍛えてもらった…みたい…ですね」
「どっかのRPGか〜っ」

ドカッ
テーブルがひっくり…返りはしなかったが、大きく揺れた。

「おらぁぁぁあああっ酒をつぎやがれっ耕一っ」
「はっ…はいはいっ」

とくとくとく…ぐびぐびぐび。

「ぷはぁ〜っうめ〜っ」
「そっそれはよかったですね…」

ハンテンの扱いもすっかり手慣れた俺。

「…私…ふきふきされたのに…ついでくれない」(千鶴さんだけがぴくっと反応)
「はいはいはい」

とくとくとく…ぐびぐびぐび。

「ごくごく…あはははははははぁ…やだあ耕一さんったらぁ」
「こっ声を出して…笑えるのかっ?」

ハンテン?いや…ただの笑い上戸か?

「ごっごめんよぉ。いつも蹴り飛ばしてっ…よよよ…」
「はいはいっ」

とくとくとく…ぐびぐびぐび。

「うううっ…かおりのやつが俺の乳を…乳を…」
「うんうん…もっと聞かせてくれ…」

これはハンテンではなく、ただの泣き上戸…だな。

「愛してるぜっベイベー」もちろんウインクも忘れない。
「…次郎衛門暗いぞぉっあははははっ」テーブルをバンバン叩いている…楓ちゃん。
「あたしは〜っあたしはレ○じゃないのにみんながぁ〜っうええええええん」でっかい乳を揺らして泣いている。
「はあ…つげばつぐほど悪化していくな…当たり前か」
「…殺します」
「うげっ」

ほっといた千鶴さんがいつのまにか温度を下げまくった。

「やっぱり子守りが好きなんだわっ…耕一さん」
「つがせてくださいっ千鶴さん!お願いしますっ」
「知りません。ぷんっ」
「ちっ千鶴さ〜ん…」

とくとくとく…ぐびぐびぐび。

「はあ…もっと…もっとウイスキー飲みたいわ」
「もっとって言ったって…もうビールしか残ってないですけど?」
「ひっひどいわ耕一さん…私のことをビール瓶みたいですってっ?」
「言ってない言ってない…」

俺はまた一つ大切なことを覚えた。
柏木家で晩に台所になんか…来るもんじゃない。
そうさ。やっぱり学習するから人間は進歩するんだよな。
うんそうだ。そう思わないと…やっていけない(涙)

「ええと…じゃあそろそろ俺は…」
「また明日…来てくれるわよね?耕一さん」えっ笑顔が…こわい。
「…ふっ…ベイベー…待ってるぜ」人差し指でチッチッ…。
「いやあん。来てくれなきゃ…許さないからぁっ」←楓
「きっ来てくれるよなっ!耕一〜っ」うるうるうるっ
「…はい」


もちろん俺は次の日下宿へと(またかい)

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前半ムードで引っ張ってこれ。
ムフフに行けたかもしれないのに…脱力感…