初音ちゃんとお布団 投稿者: だよだよ星人

「ん〜〜〜っ、いい天気っ」

  縁側で思いっきり伸びをする。青い空。白い雲。

「こんなに晴れた日曜って久しぶり…。あっ、そうだっ!」

  そうだっ…今日はお布団を干そう。
  千鶴お姉ちゃんはお仕事。梓お姉ちゃんは部活。楓お姉ちゃんはお買い物。
  誰もいない今がチャンスかも。
  みんなをびっくりさせてあげるんだ。体は小さいけど、私だってお布団干せるんだよって。
  だってお布団干そうとすると、いつも梓お姉ちゃんに取られちゃうから。

『あ〜っ、もう見てられない…ほらっ、どいたどいたっ』
『あっ、梓お姉ちゃん…お布団ぐらいちゃんと干せるのに…』
『料理ならいざ知らず、こういうことを初音がするのは見てて危なっかしいんだよ』
『そうよ〜っ、初音ちゃん。こういう時ぐらいお姉さんたちに任せればいいの』
『だあっ、千鶴姉は料理できないんだから、やって当り前なの』
『うっ…ひどいわ梓…いいもん、ぷんっ』
『……』(横を楓がえっちらおっちら運んでいく)

  そうだよ。楓お姉ちゃんはちゃんと運ばしてもらえるのに…。
  ううっ…今日は絶対お布団干してみんなを驚かせるんだ。
  みんなの部屋から、たたんだお布団を運び出す。

「よいしょっ、よいしょっ」

  さすがに梓お姉ちゃんみたいにはいかない。
  だって鬼の力発動してぽいぽいっと屋根に上げちゃうんだ。私にはとっても無理。
  でもいいの。まずは縁側に並べて…と。こつこつとやっていけば大丈夫だよね。

「よいしょっ、よいしょっ」
「よいしょっ、よいしょっ」
「よいしょっ、よいしょっ」
「よいしょっ、よいしょっ」
「よいしょっ、よいしょっ」
「よいしょっ、よいしょっ」
  .
  .
  .
  .

  ふう。やっとみんなのお布団を縁側まで持ってきた。縁側はお布団の山。
  でも柱時計を見たら1時間ぐらい経っていた。少しふらふらする。

「疲れちゃった…。ちょっとひと休みしよっと」

  ぽかぽかした縁側に座る。お日様がさっきより高くなって、眩しい。
  うん。今日は雨も降らなさそうだし、大丈夫。
  お布団もお日様が当って、とっても暖かそう。
  
「……」

  ばふんっ
  千鶴お姉ちゃんの大きなお布団に倒れ込む。わあ。ふわふわホカホカしてる。
  ここまで運んだ疲れで寝てしまいそう。
  うふふ…。このままここで寝ちゃったら、きっとみんなに笑われちゃうね。
  でも大きなお布団っていいな…。私もこんなお布団で眠りたい。
  そういえば、もう一つ大きなお布団があったっけ。今は箪笥にしまってるけど。
  耕一お兄ちゃんのお布団。

  そうだ…。

  耕一お兄ちゃん。どうしてるかな。
  耕一お兄ちゃんの所に行きたいな。
  お料理作って、お掃除して、そして…ちゃんとお布団まで干してあげるの。
  そしたら、いつものセリフ言ってくれるよきっと。

『初音ちゃん。きっといいお嫁さんになれるよ』
『えっ、ホント? 耕一お兄ちゃん』
『ああ本当だ』

「うふふっ…むにゃむにゃ…あっ、いけないっ」

  もう少しで眠っちゃうところだった。ガバッと起き上がる。
  ぐずぐずしてたら楓お姉ちゃんが帰ってくる。急がなきゃ。
  次は屋根…。でもその前に梯子を持ってこないと。

「…どこかなあ。ええっと…」

  きょろきょろ…。あっ、そうだ。植木屋さんがこの間、使ってたっけ。
  確か裏の土蔵に…。パタパタパタ…。あったあった。
  梯子を屋根に立て掛ける。さあこっからだね。

「さっ、頑張るぞ」

  一人で気合を入れると、布団を一つずつ持って梯子を上る。
  気をつけて気をつけて…。

「よいしょっ、よいしょっ」
「よいしょっ、よいしょっ」
「よいしょっ、よいしょっ」
「よいしょっ、よい…きゃあああっ」ばたばたばたっ

  ぐぐっ…何とか持ち直した。危ない危ない。
  お布団から落ちちゃえば怪我はしないだろうけど…。
  でもそのかわり、梓お姉ちゃんに怒られちゃうね。お布団汚したって。
  ううん、本当は怪我が心配で怒るんだ。わかってるんだ。
  でもここでやめるわけにはいかないよ。ごめんね、梓お姉ちゃん。

「よいしょっ、よいしょっ」
「よいしょっ、よいしょっ」
「よいしょっ、よい…きゃあああっ」ばたばたばたっ
「よいしょっ、よいしょっ」
「よいしょっ、よい…きゃあああっ」ばたばたばたっ
  .
  .
  .

  終わった。
  白く輝いて並んでるたくさんのお布団。私の今日の大満足。
  耕一お兄ちゃんに見て欲しかったな。
  でも屋根の上って…初めて登ったけど…。風が違うんだね。
  こうやって屋根の上のお布団に横になってると、本当に気持ちがいい。
  嬉しいな。
  .
  .
  .



  お昼すぎ。忘れ物をとりに帰ってきた千鶴。

「ただいま〜。あら…楓どうしたの? そんなところに立って」
「……」
「えっ…お布団がない? どういうこと?」
「……」
「庭に梯子がある? 屋根の上?」



  数分後…。


「…もう少し干しておきましょうか」
「……」
「ただし…梓が帰ってこないうちに、お布団と…初音を取り込みましょうね」
「……」こくりっ



  す〜す〜っ。屋根の上で気持ちよさそうに寝ている初音。すぐ横にタマ。

「…うふふっ嬉しいよ。耕一お兄ちゃん。むにゃむにゃ…」
「にゃあ」



おしまい。

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はじめまして。初めてのりーふSSです。初音ちゃんで話が書けてよかった。
でも初音ちゃんが寝相悪かったら危ないって(^^;自分突っ込み。
ではでは。