セイント・トゥ・ハート 第2話その3 投稿者: とーる【葵】
 金牛宮の死闘、重甲執事セバスチャンと浩之の闘いも、クライマックスを迎えよう
としていた。勝者は、どちらか?
「ものおき姫」の解答の割に綾香がいつまでも出てこない顰蹙小説(笑)始まりです。

============================================================================

第二話 金牛宮の激闘(後編)〜迸る流星


「あんたの攻撃、見切ってみせる!」

 セバスチャンの闘気がたわみ、凝縮していく。
 瞬間を見切れ。とてつもなく間合いが広く、見えないほどに早く振り下ろされる刀。
だが、どんな攻撃にも始まりの瞬間はある。
 拳が光の速さで迫るのならば、光の速さを捉えることができないなら、光の速さに
到達する前に見切ってしまえ。
 浩之は己の全神経、全感覚にとてつもなく無茶な命令を伝達した。
 そして、自分の身体以外にその命令に応えるものがあった。

「聖衣が……光る?」

 浩之の身体が光を放つかのごとく、『気』に呼応するように天馬座の聖衣が光を放
ち始める。

「グレートホーーーーーーーーーーーーーンっっっっっっっっっっっっっ!!!!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 その瞬間、セバスチャンの拳が浩之を捉える一瞬前に、浩之と天馬座の聖衣は風に
なった!
 だが、風は所詮光よりも遅い。

「ぐわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 浩之は床をボールのようにごろごろと転がり、4度宮殿の壁にうちつけられた。そ
の衝撃で床や壁はめちゃめちゃになっている。
 ……これでよく死なねえな、オレ……。
 痛みに朦朧とした頭をふり、浩之は前に立ちはだかるセバスチャンをにらんだ。

「だけど、何となくヒントはつかんできたぜぇ。次は、見切ってやるよ」

 さっきよりもボロボロになりながら、浩之はゆらりと立ちあがり、構えを取った。

「グレートホーーーーーーーーーーーーーンっっっっっっっっっっっっっ!!!!」
「どおぉぉぉぉぉぉぉぉりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 感じ取れ、感じ取れ、あの拳が、セバスチャンの拳がオレを捉えようとする瞬間を、
全身で感じ取れ!!
 浩之の踏み込みはさっきよりも格段に鋭く、早い。
 一条の閃光と化した浩之は、次の瞬間にセバスチャンの内懐にまで一気に踏み込ん
でいたのだ!

「もらったあっ!!!」
「ぬおぉぉぉっ!!!」

 腕組みの姿勢を崩し、とっさに放ったセバスチャンの左拳は浩之のわき腹を打ちす
えたが、致命傷にはなっていない。
 大きく吹っ飛ばされたが空中で体を入れ替え、床に2本の足で降り立った。

「構えが解ければ、拳も見えるってか?」

 浩之は不敵な笑みを浮かべながら、己の内にある闘気を意識していった。そして、
その『気』に反応する、天馬座の聖衣に声に出さずに語り掛ける。

『オレを選んだ理由は知らねえけど、ちょっとは協力してくれよ。な、ペガサス』

 浩之の体を包む天馬座の聖衣がにわかに綺羅星の輝きを発する。
 姿勢を低く、右の拳を振りかざしてセバスチャンに正対する。
 浩之の『本気』を感じ取ったのか、セバスチャンの闘気も呼応するように増大して
いく。
 金牛宮の中はセバスチャンと浩之の闘気が渦を巻き、嵐と化していた。

「……ふ……じ、た……」
「へへん、やっと思い出しやがったか、このもうろくぢぢいのセバスチャン!!」
「ふ、じ、た……ひぃろぉゆぅきぃぃぃぃぃぃっ!!!」
「あんたがまともに戻ってくれなきゃ、悲しむ人がいることも、この一撃で思い出さ
せてやるぜ!! ここで倒れろ、セバスチャン!!!」

 二人の闘気が頂点まで膨れ上がる!

「グレーーーーーート、ホーーーーーーーンんんんんんんんんんんんんんんっ!!」
「天馬の聖衣よ、お前の力見せてみろ!! ペガサス流星拳んんんんんんんっ!!」

 セバスチャンの全身から、振り下ろした浩之の右拳から、光の奔流が怒涛のように
溢れ出す! それは宮殿の中心で拮抗し、小さな太陽を生み出した!!

「ぬぅおぉぉぉぉっ!!!!!」
「いぃぃぃぃっけぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!!!」
「おぉぉぉぉうあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!」

 完全に拮抗したグレートホーンと流星拳の威力は、金牛宮の中心で対消滅を起こし、
目もくらまんばかりの閃光を生んだ。
 セバスチャンはたまらず目を伏せる。

「もらったあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「なにぃっ!?」

 気配を感じたセバスチャンは手をかざしながら閃光の向こうを見とおそうとする。
 だが、浩之は床に立ってはいない。ならば浩之はどこへ?

「ぬうんっ!!??」

 ばきんっ!
 真上に飛びあがっていた浩之は、落下の勢いを込めて右の手刀で牡牛座の黄金聖衣
の左の角をへし折った!
 勢い余って聖衣の兜がセバスチャンの頭から飛ぶ。

「おっ、おじょおさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 兜が床に落ちる金属音が合図になったのか、ぜんまいの切れたおもちゃのように、
セバスチャンは轟音とともに床にくず折れた。

「はあっ、はぁっ、はぁっ……か、勝った……」

 セバスチャンはそのまま気を失って動かない。
 浩之は荒く息をつきながら、床にへたり込む。

「おーい、大丈夫かぁ?」

 座り込む浩之の元に、耕一たちが駆け寄ってきた。

「遅いっすよコーイチさん」
「あれ、この人は……確か、来栖川家の執事のセバスチャン、だよな」
「オレが倒したんですよ。ったく、ボロボロだよオレ……」

 激闘の跡は周りを見まわしても、浩之の有様を見てもよくわかった。

「で、オレが必死に闘ってる間、コーイチさんたちは何してたんです?」

 まぁ、浩之の言い方が多少恨みがましくなっても仕方のないことだろう。
 だが、口を尖らしているのも一瞬のことだった。
 耕一の後ろから、黄金の杓杖を携えた芹香がすっと歩み出て、浩之の頭をなでる。

「う、うわっ……ご苦労様でしたって? いや、別にそんな、第一、ぢぢい……じゃ
ない、セバスチャンをこんなにボコボコにしちまって……黄金聖衣が守っているから、
命に別状はない? 次に目を覚ますときには、いつものセバスチャンに戻っています
からって?」
『そうです。セバスチャンさんは、牡牛座の黄金聖衣に意識を取りこまれていたので
しょう』

 恥ずかしいやらなにやらで首をすくめている浩之の脳裏に、琴音のテレパシーが響
く。

『どうやら、闘ってある程度の衝撃を与えない限り、黄金聖衣は自分が選んだパート
ナーを解放してはくれないようです。芹香さんが説き伏せれば、牡牛座の黄金聖衣も
きっと、わかってくれると思います』
「そういう琴音ちゃんは?」
『牡羊座の黄金聖衣は説得に応じてくれました。もう少ししたら私も追いかけます』
「うん、わかった。でも、危ないから闘いにまで首は突っ込むなよ」
『やさしいんですね、浩之さん』
「よせやい」

 照れながらも、浩之はこの先で待っているかもしれない連中を思い、顔をしかめて
いた。

「これは、この先には……」
「みんな、いるんだろうな」
「そうでしょうね」

 耕一と祐介も同じことを考えていたのだろう。
 この先にいるのが千鶴や、沙織や、あかりだったとき、果たして闘うことができる
のだろうか、と。

「それでも、先に行くしかないんですよね」

 瑞穂が、金牛宮の出口を見据えたまま、ぽつりとつぶやく。
 男3人、顔をつきあわせて互いを見る。そして、瑞穂に習うように金牛宮の出口を
見た。

「セバスチャンは私に任せて、皆さんは先に……? わかったよ先輩、そうだよな、
進むしか、ないんだ」

 4人がすっくと立ち、金牛宮を通りぬけていく。次にひかえるは、双子座の黄金聖
衣が守護する、双児宮である。

============================================================================

 うにゃー期間が開いてしまったぁ(^_^;)
 ども、とーるです。前回の話は……埋もれてますね。
 ま、一応これで金牛宮の話は終わり。次は双児宮です。

 さて、唯一の「黄金聖衣を着る男性」セバスなんですが……最初はもうちょっとマ
スター○ジア風味で浩之とGファイトな予定だったんですが(笑)、なんかテンポがよ
くなかったのでこんな風に書き換えてしまいました。もうすこしカッコよく書きたか
った……すまぬ。

 んでは数が少ないですが感想を。

「バーチャル大学生活 その2〜おひるにしよっ!」ミスター・アッキー氏
 日常風景ですね……というか、ほかに表現の仕様がない(^_^;)
 やっぱあかりはええ娘やのぉ(ほんわか)

「『君、死に給うことなかれ』」久々野 彰氏
 小説の書き方は人それぞれだと思いますが、最初に計画ありきの人と、情動ありき
の人、という風に大まかな分類ができると考えます。
 今回の作品は後者ではないか、と思いました。死と生、存在と言うのは人間を描く
上での永遠のテーマで、書きたいと思う反面とても難しいものです。
 インパクトに打ちのめされた作品でした。

 それと……
> 関係ないのですが、聖闘○星矢の最後ってどうなったんですか?
 えーと、確か教皇VS星矢の闘いに一輝兄ちゃんが乱入して、最後にアテナの盾を使
ってめでたしめでたし……のはずですが、この話の単行本が見つかってないんですぅ
(;_;)書き終わるまでには探さねばと思っております……。

「バッドモーニング!?」「手紙」まてつや氏
 もう、雅史ちゃんは薔薇の世界から帰ってこられないのね……しくしく。
 いっちょ、彼を主役にサッカー小説でも書いてみるかねぇ。
 個人的にはセリオがお気に入りです。

「初音ちゃんとお布団」だよだよ星人氏
 おおっ、某作品ではお名前を見ておりましたがこちらにも進出ですね。
 初音ちゃんがラブラブ光線を振りまいている……こいつぁ危険だ(なにが(笑)?)

 というあたりで今日はここまで! ではではー。