LF98(31) 投稿者:貸借天
第31話


「ぐぁっ……!!」
 強烈な横蹴りを腹部に受けて、おぼつかない足取りでふらつく英二に、ゼルガー
の薙ぎ払いが襲いかかる。
 なんとか身を沈めてかわしたのもつかの間、顔面めがけて膝が跳ね上がった。
 片手で防ぐ。
 強烈な突き上げに思いきり身体がのけ反ってしまい、体勢が大きく乱れた。
 いまのままでは、次の攻撃をさばくのは極めて難しい。
(まずいっ!!)
 思った時には、英二の手は勝手に動いていた。とどめの突きを見舞おうとしてい
たゼルガーに中剣を投げつける。
「ちぃっ!」
 忌々しそうに舌打ちしながら、それでもゼルガーはうまくかわすと、攻撃の手を
休めることなく斬りつけていった。
 その時には、万全とは言えないが英二もそれなりに体勢を整えている。かわすこ
とはできなかったが愛用の短剣で受け流し、そのまま後退して距離をとった。
「ったく、あんたやるなぁ。こんなにしぶといヤツは初めてだぜ」
 ゼルガーは余裕の笑みを浮かべながら、感心したように言った。
「……それはどうも」
 小さく肩を上下させながら答える。そんな英二の顔にはいくつかの切り傷があり、
衣服もあちこちが切り裂かれ、ところどころに赤いシミが浮いていた。
 しかしそれは、剣による攻撃を最優先で警戒していた結果に過ぎない。
 拳打や蹴りによる打撃に関しては、その倍以上のダメージがある。全身にうずく
打撲の痛みが体温を二、三度上げているような気がした。身体が熱い。
 英二は口の端ににじんだ血を拭った。
 かなり限界が近づいており、動きが明らかに鈍ってきている。にもかかわらず、
ゼルガーには傷ひとつ負わせることができなかった。
 勝ち目がまったく無いのは疑いようもない事実だ。だが、逃げられそうにもない。
 そんな状況に追い打ちをかけるように、
「……うん? あれは……セリオか……?」
 ゼルガーの言葉に、英二は顔を強張らせた。確かに、遠くから何かが近づいてく
る気配を感じる。
 凄まじい速度だ。セリオに間違いなさそうだった。
(く……どうする……!)
 考えたところで、もうどうにもならない。進退きわまるとはまさにこのことだ。
 が。
「なっ!? おい!?」
 猛スピードで疾駆してきたセリオは、その勢いのままゼルガーに襲いかかった。
 最初は戸惑いながら攻撃をさばいていたゼルガーだったが、朱髪朱眼の少女の額
にサークレットがないことに気がつくと、すぐさま反撃に転じた。
 そしてめまぐるしい攻防が展開する。
「……おいおい」
 独り取り残された英二は、わけがわからずポツリとこぼした。
 ほどなくして、交差するようにして場所を入れ替えた二人は、それぞれ退いて一
度間合いを広げた。
 眼でゼルガーを牽制しながら、セリオが英二にゆっくりと近づく。
「――先ほどは申し訳ありませんでした。この闘い、微力ながら助太刀いたします」
 英二の眉根がいぶかしげにひそめられた。
「……いったいどうなってるんだ? きみはセリオだろ? 俺の敵ではなかったの
か?」
「あなたと敵対していたわけではありません。私はかりそめのあるじによって、支
配されていたのです。ですが、己を取り戻すことができました。いまは真のあるじ
の命に従い、あなたの手助けに参ったのです。どうか……信じてください」
 無感情な朱い瞳の奥に、かすかに切望の光が灯っているような気がした。
「……真のあるじとは“月影の魔女”か……?」
「はい。来栖川芹香様です」
「そうか……なんか、わけ有りなんだな。わかった、信じよう。正直言って、俺独
りではあの男に勝てないからな。きみが味方になったのなら、これほど心強いこと
はない」
「――ありがとうございます」
 さすがに敵を前にして腰を曲げての丁寧なお辞儀はできず、セリオは英二に目礼
のみを返した。それからゼルガーに顔を向ける。
「ちっ……。形勢逆転ってやつかよ」
 苦々しく舌打ちした時、大勢の人の気配が新たに近づいてくるのを感じ、ゼルガ
ーは片方の眉をピンと上げた。
 その気配はもちろん、セリオも英二も気がついている。
「……今度は誰が来たんだ?」
「……わかりません。かなりの大人数です。組織には、もうほとんど残っていない
はずなのですが……」
「!」
 ゼルガーは軽く目を見開くと、高々と跳躍して、通りに沿った黒ずんだ壁の上に
着地した。
 何をする気だ、と英二が緊張の糸を張り詰めると、セリオが口を開いた。
「――やってきたのは、衛兵と警官の方々のようです」
「なに?」
 思わず周囲に視線を走らせる。すると、軍服や警官服に身を固めた男たちの姿を
視界のあちこちでとらえた。
 彼らは地面に倒れ伏した者たちの検分を始めている。
 相当数が横たわっているにもかかわらず、特に驚いたり取り乱したりしている者
がいないところを見ると、どうやらこの裏通りで何が起こっていたのか、すでに理
解しているようだ。
「……やれやれ、どうやら組織はもう終わりだな。ならば長居は無用。捕まるなん
て冗談じゃねぇし、ここはトンズラするに限るか……」
 高い壁の上からやや投げやり気味に呟き、
「おいあんた、命拾いしたな。粘り勝ちってとこか? 俺相手にあんだけ保ったん
だから自慢していいぜ。それじゃあな、あばよ!」
 こんな状況だというのに楽しそうな笑みを残して、ゼルガーはさらに跳躍して民
家の屋根に上がり、そのまま屋根から屋根へと逃げていった。
 それに気づいた衛兵たちが色めき立ち、「追え!」「一人も逃がすな!」と上司
に命令されて何人かが後を追いかけていく。
 しかし、さすがに能力を強化されているだけあって、ゼルガーのスピードは半端
ではない。おまけに、不安定な足場にもかかわらず平地と同じように駆けることが
できる並外れたバランス感覚。
 あっという間に、ゼルガーの後ろ姿は見えなくなっていた。
「……あれはたぶん逃げ切るだろうな……」
「私にもそう思われます」
 見送る二人に、衛兵たちが近づいてきていた。


「……がはっ……!!」
 成人男性の胴ほどもある太い尻尾に吹っ飛ばされ、好恵は背中から壁に激突して、
大きく開けた口から鮮血を飛び散らせた。
 すぐに立ち上がろうとして咳き込み、前のめりに崩れて四つん這いになる。
 顔を上げると、芹香が放った十数本の光の剣を、魔物が左腕の一振りで霧散させ
たところだった。
 次の一振りで、青白い人魂のようなものを数十個創り出す。
 が、美咲のかけたイレイズによってそれらは全部かき消された。
 雅史の衝撃波を宙へと避けた魔物を、天から降らせた芹香の雷光衝が地に叩き落
とす。しかし、二度目三度目の雷撃は触手に弾き散らされた。
 そこに冬弥が斬り込んでいったが、応戦に伸ばされた三本の触手に動きを封じら
れた。一本を斬り飛ばしたが、残りの二本で好恵と同じように吹っ飛ばされる。
 追い打ちをかけようというのか、魔物は地面に転がった冬弥にいくつもの白熱球
を撃ち出した。
 ちょうど完成した美咲の光の盾がそれをさえぎる。
 その間にも、雅史が衝撃波を放つが風の術で相殺され、芹香の術もまた易々と弾
き返していた。
(くう……なんてヤツなの……!)
 好恵と雅史と芹香と冬弥と美咲の五人を同時に相手取って、互角に渡り合ってい
る魔物とは、六十はゆうに超えた老魔道士ドグルスがその姿を変じたものである。
 儀式か何かだったのか、血の滝を頭からかぶったあと、この老人の身体に変化が
訪れた。もともと魔物じみていたが、本物の魔物になったのである。
 魔族特有の瘴気を大量に噴き出し、膨れ上がる筋肉によって身につけていた魔道
士のローブを内側から破り、額の左右から角が生え、強靭でしなやかな尻尾が伸び、
背中には一対の大きな翼が広がった。
 身体の右側面の肩から脇腹にかけては、ある程度まで伸縮自在の数十本の触手が
うねうねと不気味にうごめいている。
 二メートル以上の巨体だが動作は俊敏で、刃のように鋭い爪はもちろん、太い尻
尾や、触手の一本一本までをも強力な武器として繰り出してくる。
 また、呪文の詠唱を一切せずに、高位の魔法を物理攻撃と同時に使ってきた。わ
ずか腕の一振り、触手の一振りで術を完成させるのだ。
 漆黒の魔物に姿を変えたドグルスは圧倒的に強かった。今の五人がかりでも勝つ
のは難しく、また勝てたとしても倒すまでには相当に時間がかかるだろう。
「ぅぐ……」
 立ち上がろうとした好恵がうめきを洩らした。
 遠心力たっぷりの尻尾の一撃を受けた脇腹がズキズキと痛んでいた。あるいは、
骨にヒビが入っているかもしれない。
 やや離れた場所で闘いの成り行きを静観しているディクシルの姿が目に入った。
(まさかとは思うけど……あの男まで変身したりしないでしょうね……)
 ドグルス一人でこれだけ手こずっているのである。それがさらに一人加わるとな
れば、もはや勝ち目はない。
 うずくまって呼吸とダメージを落ち着かせていると、流れ弾なのか白熱球が五つ
六つ、視界の端を行き過ぎていった。
 その向かう先は――。
「危ないッ!!」
「きゃあああ!!」
 好恵はあわてて身体を起こして、猛ダッシュをかけた。
 由綺の腰に腕を回し、初音の肩をつかみ、力任せに抱き寄せて急ぎその場から避
難する。
 ジュゥッ!!
「ぐぁっ!!」
 そのうちの一つが好恵の左足ふくらはぎをかすめた。超高熱の光球は武闘着の生
地もろとも、肉を容赦なく灼き焦がして蒸発させた。
「あっ……あぐッ……ぐぅ……!」
 顔中にびっしりと脂汗をにじませ、傷口を押さえて転げ回る。かすめただけでこ
の威力だ。もろに当たったのなら、膝から下が失われていたに違いない。
 嫌なにおいがあたりに漂うなか、うずくまっている好恵はきつく目を閉じて歯を
食いしばり、叫び出したくなるような猛烈な激痛をどうにかこらえていた。
「あ、あのッ。だ、だいじょう……ぶ……じゃ、ないよね……」
「え、えっとえっと……」
 とっさに判断がつかず、どうすればいいのかと由綺と初音がおろおろしていると、

 びきぃぃぃぃぃん!!

「くっ……!!」
 刀を折られた冬弥が焦りも露わな声を上げた。その直後、尻尾の強烈な一撃を浴
び、壁に勢いよく叩き付けられる。
「がッ!!」
「冬弥くん!!」
 由綺が悲痛な顔で叫ぶように名を呼んだ時、好恵がよろよろと立ち上がった。
 ドグルスが触手を繰り出して雅史と美咲を牽制しながら、腕の一振りで術を完成
させて解放した。
 芹香は魔法障壁を展開して飛来する数個の爆裂火球を防御したが、衝撃によって
少しずつ後ろに押されている。
 ドグルスはさらに一振りして、巨大なつららを五つ創り出した。だめ押しをする
気らしい。
 それを芹香に放たれる前に、好恵は痛む脚に構わず、全力疾走で距離を詰めて魔
物に躍りかかった。
 迎撃の尻尾を宙にかわして跳び回し蹴りを延髄にぶち当てる。着地するまでの間
に身体を旋回させて、空中でさらに、今度は後ろ回し蹴りを延髄に直撃させた。
 ドグルスがよろめき、つららが空気に溶け込むようにして消滅する。術の妨害を
されて怒ったのか、雄叫びを上げながら刃のように鋭い爪を振りおろした。
 体勢が乱れていたがどうにかかわした時、芹香が炎の槍を数本撃ち出した。
 それは背中を狙っていたのだが、ドグルスは背後を顧みることもなく、翼を軽く
羽ばたかせてあっさりと消し去った。
 時間差で少し遅らせて放った槍もあっさりと散らされたが、その際生じた一瞬の
スキをついて好恵は果敢に攻め込んだ。しかし、ドグルスも素早く反応している。
 互いの攻撃のタイミングは同時だったが、爪が来るより先に、好恵は正拳を脇腹
にめり込ませた。が、分厚い筋肉にダメージの浸透を阻まれてそれほど怯ませられ
なかったために、爪を十分に回避することができなかった。
 右肩から首の真下あたりに四本の爪痕が刻まれる。生暖かい血が胸の谷間を滑り
落ちていったのがわかった。
 いったん退がって間合いを広げる。
(今のタイミングではダメだ……後の先をとらないと……!)
 相打ちでは圧倒的に分が悪い。先に攻撃させてそれをかわし、素早く反撃する。
 とはいえ、魔法も絡めて連続的に攻撃されたらさばききれない。それに、打たれ
強さにまかせての強引な攻めにも対処しきれない。
 いや、打たれ強さに関してはどうにかなるかもしれない。好恵は早速実行に移す
ことにした。
 黒い疾風のごとき踏み込み――しかし、ドグルスが黒いイカズチを自分の周りに
発生させたため、慌てて立ち止まる。
 なんという名称のどういう効果がある術なのかは知らなかったが、「攻めたらや
ばい」という予感が好恵にはあった。
 そこへ、そばまで来ていた冬弥がそこらに落ちていた剣を拾って投げつけた。す
ると、黒いイカズチに接触した剣がバチバチと音を立てて黒煙を上げ、あらぬ方向
へと跳ね返された。
「……まいったわね」
「俺たちではどうしようもないな……」
 考えあぐねていると、ドグルスがゆっくりと歩み寄ってきた。やむを得ず、攻撃
を諦めて後方へと離脱する。
「坂下さん!!」
 声の方を向くと、雅史が拡散した衝撃波で触手を追い散らしたところだった。
 一度ひるんだものの、しぶとく美咲に襲いかかっていった触手を、今度は芹香が
魔法で妨害する。
 イレイズをかけようとしている美咲の援護をしているらしい。そう理解した好恵
は腰を落としてタイミングをはかった。冬弥もまた美咲の援護へと向かう。
 しばらくして、美咲の手もとで淡い光が灯り、空間に刻まれた法印が夕焼けの朱
を押しのけるように蒼い輝きを放った。その直後、ドグルスの周りに張り巡らされ
ていた黒いイカズチが音もなく消える。
「いまだ!」
 雅史の言葉よりも早く、好恵はふたたび黒い疾風と化していた。痛む脚に顔をゆ
がめながら、それでもわずかな衰えもなく一気に距離を詰め、尻尾と爪をかいくぐ
って相手を攻撃圏内にとらえる。
 両足を地面にしっかりと噛ませ、身体全体を利用してひねりを加えた、ねじり込
むような正拳突きをみぞおちに叩き込んだ。
 ドグルスの動きが完全に止まる。
『裏当て』。
 身体の外側を覆う筋肉や、あるいは鎧などを素通りさせて、内部に直接衝撃を伝
える特殊な技術である。そのため、どんな頑強な鎧を着ていたとしても、この技の
前には意味がない。そして、決まればほとんど一撃必倒だ。内臓を鍛え込むのは不
可能ではないが、並大抵のことではない。
 が――。
 ぶん、と重い音をともなって振り回されたドグルスの尻尾に、好恵は為す術もな
く弾き飛ばされた。一応ブロックはしているが、ほとんど用をなしていない。
 地面を三回転してようやく止まり、うめきを一つこぼしてのろのろと顔を上げる。
「ぐ……ぅ……」
 裏当てに失敗したわけではない、間違いなくダメージを与えることはできた。だ
が脚と脇腹の痛みが原因で、衝撃力の伝播が十分ではなかったのだ。
 もっとも、万全の状態で決まったとしても、その一撃で仕留められるかといえば
はなはだ疑問ではあるのだが。とはいえ、もし完全に決まったのなら、こうもすぐ
反撃はできまい。ドグルスを倒す最大のチャンスになることは確かなはずだった。
(だけど……!)
 ブロックした右の二の腕の内側で、突き刺さってくるような痛みが絶えず走り回
っていた。折れてはいないだろうが骨にヒビが入っている。
 左右どちらの拳でも裏当ては可能だが、これでは先よりもさらに威力が弱まりそ
うだった。
「ぁ……くっ……!」
 弱々しく立ち上がり、ふらっと身体を傾け、足を出してなんとか持ち直す。限界
はすぐそこだった。
 好恵は口もとに残った血を拭いながら、周囲一帯を覆う薄い霧のような瘴気のな
か、静かにたたずむ漆黒の魔物を見据えた。
 雅史、芹香、美咲、冬弥もそれぞれ距離をとって様子見をしていた。激しい攻防
にようやく一段落ついた感じである。
 だが、闘いが終わったわけではないことは言うまでもない。あれだけ攻撃をして
いながら、あまりダメージを与えることはできなかった。つまりドグルスを倒すに
は、攻撃をさらに激化させなければならないということである。
(だけど……いまのあたしでは……!)
 腕の骨とあばらにヒビが入っており、左足もかなり深い傷を負っている。体力も
切れそうだった。今の状態では、自分を十分な戦力として数えることはできない。
 もっとも、それは好恵だけではない。他の四人も濃い疲労が見え隠れしており、
特に雅史は左腕を骨折していた。また、冬弥も右足をかばうように立っている。
 対して、ドグルスはまだまだ元気そうで、明らかに余力を残している感じだった。
自分からは動かず、好恵たちから攻め込んでくるのを待っている。動けなくなるま
で疲れさせてから、じわじわといたぶるつもりらしい。
 結局、どちらもがしばらく様子見を続け、そのまま膠着状態に陥った。


「由綺様」
「え?」
 冬弥たち五人とドグルスとの闘いを固唾を呑んで見守っていた由綺は、背後から
不意に声をかけられて不思議そうに振り返った。名前を呼んだその声に聞き覚えが
あったからだ。
「ッ弥生さん!?」
「遅くなりまして申し訳ありません。お怪我はございませんか?」
「ど、どうしてここに……」
「――私といたしましては、由綺様がここにいらっしゃることは驚きや不思議より
も、恐怖を感じます。途中で行方がまったくわからなくなり、あなたの身に何かあ
ったのではないかと生きた心地がしませんでした。しかも、こともあろうに人身売
買組織によって囚われの身になられていたなどと……」
「ご、ごめんなさい……」
 沈痛な面持ちでうつむくあるじに、弥生はかすかな笑みを送った。
「ですが、ご無事で本当になによりです」
「うん……。緒方さん、理奈ちゃん。冬弥くんや美咲さん。あと浩之くんたち。み
んなのおかげで私は……あっ、そうだ。弥生さん、あの人たちを助けてあげて。あ
そこで魔物相手に苦戦している、あの五人……私を助けてくれた人たちなの」
「ですが……」
「お願い。私は大丈夫だから」
「――承知いたしました」
「あと、あそこにいるディクシル伯爵。あの人が今回の黒幕みたいなの」
「はい、存じております。まもなく衛兵や警官たちがここへ現れるでしょう、あの
方を捕らえるために」
「え? ずいぶん早いんだね……」
「私たちのほうでも、あの方の動きに注意を払っていたのです。詳しいことは、の
ちほどお話ししましょう」
「うん。それじゃあ弥生さん、気をつけてね。あの魔物、すごく強いみたい」
「おまかせ下さい。では、行ってまいります」




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セリオ助太刀シーン、なんだか手抜きっぽいなあ(^^;;