LF98(17) 投稿者: 貸借天
第17話


「はああッッ!!」
 気合い一閃、綾香の右拳と、左肘と、右の蹴りが三人の男を打ちのめした。
 すぐさま振り返り、背後で大上段に構えていた男の懐に一気に踏み込んで、振り
下ろされた腕を受け止めると同時に鳩尾に膝を突き刺す。
 腹を押さえてうめく男を右手からやって来た土人形の方に向けて強く突き飛ばし
た。体勢を崩してもたついている土人形に素早く接近して拳の一撃で黙らせ、新た
な敵を迎え撃つ。
 掌打をあごに叩き込みながら、浩之に一瞥を投じる。
「!」
 綾香は落ちていた剣をひっつかみ、投げた。剣は回転しながら飛んでゆき、斜め
後ろから浩之に斬り掛かろうとしている土人形の背中に突き刺さった。
 綾香は自分の背後から迫る土人形は無視して、少し囲まれ気味の浩之の方に向か
ってダッシュをかける。
 行きがけの駄賃とばかり二人の男と三体の土人形を沈め、浩之を挟み撃ちしよう
としていたうちの一人を倒す。もう一人は浩之が仕留めた。
「ハアッッ……!!! ハアッッ……!!! ハアッッ……!!!」
 浩之の呼吸は相変わらず乱れていたが、その眼光にはいささかの衰えもない。時
時苦しげにむせながらも、ちゃんと立って構えている。その彼の足元には土の塊が
いくつかと、倒れ伏した男も何人かいた。
「大丈夫……?」
「ハアッッ……ハアッッ……あ……あ……なん……とか……」
 激しい息切れの合間に小さく答える。
「……よし、じゃあ、私は行くわよ」
 返事は聞かずに飛び出す。
 ひねりを加えた横蹴りを正面にいた男の腹に打ち込み、下がった頭に逆の脚で回
し蹴りを叩き込む。それによって吹っ飛んだ男が、右手の方で集まっている敵の何
人かを妨害した。
 わずかな時間稼ぎのうちに、綾香は左側にいた人形の一人に滑り込むように接近
して腹に拳を突き入れ、服の襟元をつかんで足を払い、首筋に手刀を落とした。そ
して、いま人形が落とした剣を拾い上げ、左側の敵の群れに投げつけて牽制をして
おく。それから綾香は大きく回り込んで、浩之の背後側にいる敵の群れに真横から
突っ込んでいった。
 一番手前の男の攻撃をかわして懐に入りながら、全身の“氣”を練り上げ“勁”
に変換する。
 両のかかとを地に打ちつけ、地から返ってくる逆回りの反動を利用して、激しく
荒れ狂う勁力を絞り込むようにたわめながら、足元から右の掌へと瞬時に伝えてゆ
く。
 そして、渦を巻く“力”を乗せた掌底を男の胸部に叩きつけた次の瞬間──

 ッドオウゥッ!!!!!

「…………がァッ!!!!!」
「うわアァッ!?」
「ッッッッぐおおおッ!?」
 巻き込まれた人間、人形合わせて七、八人がまとめて吹っ飛び、さらに、その向
こうにいた人垣のことごとくを扇状に薙ぎ倒した。
 身をひるがえし、今度は浩之の前方にいる者たちに向かって跳び込んでいく。
「ッ!?」
 その途中、背後に殺気を感じて綾香は横っ跳びに地を蹴った。
 遅れること一秒、横回転の剣が寸前まで綾香がいた空間を斬り裂いて飛んでゆき、
行き先にいた一体の土人形の首を撥(は)ねた。
「あ〜らら、よけられちまった」
 やたら間延びした声が背後から聞こえ、彼女は振り返る。
 そこに立っていたのは、綾香よりも頭ひとつ分背が高い大柄な男だった。体つき
の方は筋骨隆々というほどでもないが、むき出しにした左の腕だけはやけにゴツい。
別に細いというわけでもない右腕と比べて、三倍ぐらい差がある。
「……あなたも敵かしら? ……って、訊くまでもないわよね」
「訊くまでもないねぇ」
 右手の長剣を弄びながら、にこやかな笑顔で男が綾香の方へと歩み寄ってくる。
「姐ちゃん、強いな、ここからは俺が相手をするよ。名前はゾルトっていうんだが、
覚える必要はないぜ」
「あら、そう? ……ああ、覚えたところで、どうせすぐに死んじゃうから?」
 挑戦的な笑みを向ける綾香にゾルトはひとつ頷いて、
「う〜ん、そうと言えばそうなんだけどよ……」
「だけど?」
「……本当のところはな……」
 喋りながら無造作に歩を詰めていたゾルトはそこで一度言葉を切り、
「……喰っちまうからさァ!!」
 目をカッと開いて、暴力的な笑みを浮かべながら斬り掛かった。
 右から左へと胴を薙ぎにきた剣撃を綾香は一歩退いて空をきらせ、二歩分前に踏
み込んで左正拳を放つ。
 同時に、ゾルトはあのゴツい左腕でカウンター気味のパンチを繰り出した。
 しかし綾香の方が圧倒的に迅く、鍛え抜かれた拳が空間を貫いて一直線にゾルト
の顔面へと吸い込まれてゆく。またゾルトのカウンターを冷静に見定め、右肘を上
げて受けの構えを取る余裕さえある。
 逆に、ゾルトは凄まじい圧迫感をともなった拳が顔面に迫るのを、顔をひきつら
せて見ていた。避けようという気ももちろんあるが、身体の反応が綾香の一撃に対
してあまりにも鈍重すぎる。
 どちらに軍配が上がるか一目瞭然のように見えた―─が、何を思ったか、綾香は
いきなり地を蹴って左後方へと跳びすさった。

 がぎぃぃぃぃぃぃぃん!!!!

 その直後、刃物同士が豪烈な勢いでもって打ち合わされたような音が、夕焼けと
鮮血で朱く染まる裏通りに鳴り響いた。
 その音は、ゾルトのゴツい左腕から発せられたものだった。
 そして今は、肉食獣が獲物を狩り損ねて無念といった感じのうなり声が聞こえて
いる。
「な……なんなの、いったい……?」
 綾香は食い入るように、ゾルトの左腕を見つめていた。
 あの瞬間、今まさに綾香の左正拳がゾルトの顔面を直撃しようという刹那、彼女
はうすら寒いものが背筋を駆け抜けていくのを感じ、ゾルトへの会心の一撃を躊躇
なく捨て、完全に攻撃動作に入っていた自分の身体を無理矢理に回避行為へと転じ
たのである。
 かなり無茶なことをやってのけたので首から下の筋肉と骨が騒ぎ立てたが、綾香
は危機を告げる自分の格闘家としての勘を信じていた。そして予想通りにやってき
た、奇妙な、それでいて強烈な一撃からうまく逃れることに成功したのだ。
 だが、あれはいったいなんだったのか?
「……ふぅ、恐れいった。まさか、これほどとはな……。相討ちで姐ちゃんを斃す
ことが出来たとしても、今のあれは勘弁してほしいぜ……」
 冷や汗を浮かべながらゾルトが言う。その彼の左の拳がいびつに変形していた。
「…………?」
 綾香はそれを見極めようと目を凝らす。
 変形した拳の先端には横に走る一本の裂け目と、その内側には鋭く尖った何かが
あるのが見えた。
「んん? ああ、これか? ふふん、さっきの音が気になるんだろ?」
「まあ……ね」
 ゾルトは唇を笑みの形につり上げた。
「んじゃ、教えてやるよ……」
 と、彼のゴツい左腕がぶるぶると震え、筋肉の厚みがさらに増してゆく。
 同時に、にじみ出てくるように現れた蒼黒い剛毛に腕全体が覆われてゆき、生き
物のようにざわざわと波打ちはじめた。
 その拳にはもはや指は存在せず、蛇の頭部のような形をしていた。
 そこから、血のように紅い眼が開き、角のように尖った耳が形作られ、裂け目の
周囲がせり出してきた。
 訳の分からぬものに変形していた拳が、訳の分かるものへと形を整えていく。
 そして、額の中央に縦長の、やはり紅い眼が開いた。
 最終的に、それは獣―─特に、犬か狼の身体、ただし前足、後ろ足、尻尾はなく
頭部と胴体だけだったが―─の姿を形成していた。
「―─紹介しよう。俺のしもべ、魔狼デスロフィアだ」
 ゾルトは口元をつり上げたまま、言った。
 獣―─三ッ眼の魔狼デスロフィアは大きく裂けたあぎとをかすかに開き、凶悪的
な歯並びの奥から相変わらずのうなり声を届けてきた。
「……なるほどね。『喰っちまう』ってのは、そういうことだったわけ……」
「そういうことだ。まあ、諦めてデスロの腹におさまってやってくれ。こいつは若
い娘の生肉が大好物でな、それはもう美味しく、かつ、丁寧に平らげてくれるぜ」
「『かつ』ときましたか……。そうねえ、そこまで言うんなら……。でも、世の中
働かざる者喰うべからずよ。そんなに私が食べたいなら、力尽くでやってみなさい
な」
「おーし、デスロ。本人の了解も得たことだし、骨までしゃぶり尽くしてやれ」
 人の言葉が理解できるのか、デスロは歓喜と興奮で高ぶったような荒い呼吸を繰
り返していた。
「……くす。だけど、私はとびきり活きのいい獲物だから、逆にコテンパンにやら
れないよう気をつけることね」
 綾香がふたたび、挑戦的な笑みを浮かべる。
「心配無用だ、行くぜ!」
 右に剣、左に魔狼を携えたゾルトが、半身に構えた綾香に襲いかかった。


「てぃやあああーーーーーッッ!!!」
 葵の右上段回し蹴りをまともに受けた土人形は、口から魔力文字を吐き出しなが
ら弾き飛ばされた。わざと敵の方へ飛ばすことで何人かを足止めしておいて、彼女
は反対側の敵の群れに突っ込んでゆく。
 大上段からの斬撃を右にかわし、腹に拳を打ち込み、掌底のフックを顔の側面に
入れて横倒しにする。
 次の土人形が首を狙って曲刀を薙いできた。
 腰を沈めてそれをかわすと、地面に落ちている剣を拾いながら回転足払いをかけ
る。すっ転んだ土人形の顔面に拳を一撃入れ、刃をこちら向きにして剣を地面に滑
らせた。狙い違わず、それは理緒の元へとたどり着く。
 それを確認して、葵はまた新たな敵に向かっていった。


「大漁、大漁!」
 そんな事を言いながら、志保が四本の剣を手に理緒のそばにやって来た。そこへ、
葵が寄越した剣が理緒の足元へと滑ってくる。
「あら〜、暴れまくってるわねー松原さん。雛山さん、はいこれ」
「うんっ」
「彼女が来てくれたおかげで、こっちは大繁盛ね」
「う……ん。だけど、浩之ちゃんの方は大丈夫かな……心配だな……」
 表情を曇らせたあかりが不安げに口を開く。
「大丈夫よ、あかり。あいつは殺したって死なない奴なんだから」
「……うん……」
 志保が気遣ってくれてるのは分かるが、どうしても気になる。今は綾香が一緒に
いるらしいが、少し前まで浩之はたった独りで物凄い人数を相手にしていたのだ。
 ほんとに大丈夫なんだろうか。
 怪我してないだろうか。
 大分減ったとはいえ、自分たちも囲まれているし浩之たちも囲まれている。目視
して確かめることが出来ないので余計に気がかりなのだ。無事な姿を一目見ること
が出来たら、こうまで心乱されることもないのに……。
 それに、黒い壁に挟み込まれている、知り合ったばかりの三人の女性たち……。
 さらに、その三人のそばにはいつの間にか魔道士姿の人物が一人。おそらくは敵
なのだろうが、次から次へと現れる彼らは、いったい全部でどれぐらいの人数がい
るのだろうか。
「──たあああッ!!」
 その時、浩之の声と同じくらいに耳に馴染んでいるもの──いつもは風のない海
のように穏やかな声が、いまは裂帛の気合いをともなって周囲の空気を震わせた。
 そして、ほぼ同時に起こった吹きすさぶ嵐のような音がそれをかき消す。
 見ると、土人形たちが五、六人重なりあって吹っ飛んでゆくところだった。
「うん、大丈夫よ、あかり。こっちもあらかた片付いてきたし、もうすぐヒロの方
に加勢に行けるわよ。雅史が一気に蹴散らしてくれるって」
「……うん。そうだね」
 あかりは視線を上げ、木洩れ日のような笑顔を返した。
「──そうでもないんだなあ、これが」
「ここからが本番なのよ」
おどけるような調子を含んだ声は真上から降ってきた。
「「──え!?」」
 慌てて顔を上げようとする理緒とあかりの腕をひっつかんで、志保は一気に駆け
出した。そして、声を張り上げる。
「雅史、松原さん! 強敵よ!」
「え?」
「はい?」
 志保の大声を耳にして、呼ばれた二人は振り返った。
「あら、素早い……」
「でもまあ、強敵って言われて悪い気はしねーな」
 あかりが背にしていた壁の上に仁王立ちしていた『強敵』は、そう言ってひらり
と地面に降り立った。
 背を預ける壁の位置を変えた志保と理緒とあかりのもとに、群がる人形たちを蹴
散らしながら雅史と葵がやって来る。
「あの二人よ」
 志保の指す方に視線を向ける。
『強敵』は一組の男女で、一人は顔の中央に刀傷のある男。傷は大きく、ひたいか
ら眉間を斜めに走って右の頬までに達している。いま一人は、栗色の長い髪を後頭
部の中心でまとめて馬の尻尾のように垂らし、腰の後ろに細身の剣をさした女であ
る。どちらも二十代後半ほどだ。
「傭兵……ってところでしょうか……?」
「そんな感じね」
「でも、志保。闘ってもいないのにどうして強敵だって分かったの? あ、もしか
して知り合い?」
「違うわよ。自信ありげな台詞だったし、何よりこういう登場する奴ってのは、た
いてい強敵なのが相場でしょ?」
「でも、何事にも例外ってのはあるよ」
「あら、言ってくれるじゃないの、可愛い坊や?」
 女が唇の両端を上げた。しかし、目は笑ってない。
「はたして例外かどうか、この拳を受けて確かめてもらおうか」
 男が犬歯をむき出しにして、凄みのある笑みを見せた。
「女の人は私が引き受けます」
「じゃあ、僕はもう一人のほうを」
 葵の言葉にうなずきながら、雅史がターゲットに向き直った。
「おやおや、大丈夫かい、僕ぅ?」
 一転、軽薄な笑みを浮かべて男が言った。
「……僕の名前は雅史だよ」
 その小馬鹿にした口調に少しムッとしながら名乗る。
「おーそうか、俺はゼミルドだ。で? 雅史。なんか貧弱そうだけど大丈夫か?」
 確かに雅史はか細い印象を受ける。ゼミルドの、身につけている胸当ての下の厚
みのある上半身や、肩当てから下へと伸びているたくましい腕と見比べると尚更そ
のように感じられる。
「……闘ってみれば分かるよ」
 ますますムッとしながら雅史は答えた。
「オーケイ」
 その隣では、
「私はベリンダよ。あなたは?」
「葵といいます。お手合わせ願います」
「あら、礼儀正しいコね。それじゃあ……」

「いこうか!!」「いきましょうか!!」 



「あうっ……はうっ……くうっ……!」
 由綺は眉間にいくつもの縦皺を刻んで、苦しげに喘いでいた。
 闇色へと近づく壁の圧力はますます上がり、胸を、肺を強く圧迫しているので息
苦しい。
 肋骨がとっくの昔から悲鳴を上げ続けている。酸素の供給が不十分らしく、顔が
青ざめており瞳もやや虚ろだ。
「ひょっひょっひょっ。ほ〜れほれ、はようそこから出んとペッシャンコになって
しまうぞ〜」
 魔道士──ドグルスは愉悦の表情で両の手のひらをパチンと合わせた。その行為
は由綺の、そして理奈と初音の行く末を予言したものだった。
 ドグルスのそばには二人の少女が立っていた。
 一人は短めの髪に、大きくタレ目がちの翠(みどり)の瞳の少女。髪は瞳と同じ
色だ。もう一人は夕焼け色のロングヘアに、やはり髪と同じ色の大きな瞳──ただ
しこちらはツリ目がち──の少女で、二人とも整った相貌ながら能面を思わせる無
表情で、ピンと背筋を伸ばして彫像のように佇んでいた。また、その額にはドグル
スと同じ、禍々しい色彩と形状のサークレットがはめられている。
「どぉ〜れ、どれ。こっちはどうじゃなぁ〜?」
 楽しくて仕方がないという足取りで、ドグルスは観察の対象を変えるべく歩き出
した。その後ろを二人の少女が、耳から下げた大きな飾りを小さく揺らしながら音
もなくつき従う。
「あ……あうっ……かっ……ごほっ、ごほっ……ぐ……うっ……!」
 両眼をきつく閉じ、歯を食いしばった理奈がそこにいた。
 その微笑みは天使のごとし、といわれる顔には珠のような汗が大量に浮かび、時
折苦しげに歪められる。
「いっひっひっひっひ。えーのう〜〜」
 耳に触るカン高い声が聞こえたのか、理奈がうっすらと目を開けた。
 しわくちゃの顔に照準が合うと、彼女は気丈にキッと睨みつけた。そして何か言
おうとするがしかし声は出せず、目を大きく見開いて痛みに耐えるように再び歯を
食いしばった。
「うっ……くっ……あぐっ……ふっ……!」
 強く噛み締めた歯の隙間から苦痛のにじんだうめきが洩れる。目尻には涙が浮い
ていた。
「ぐっふっふっふ。苦しいじゃろう。泣くか? 泣くんか? ふぇっふぇっふぇ」
 老魔道士は大きく身体を揺すって嗤(わら)った。
「おぬしは強くて体力もあるからな、そのまま圧殺黒呪をかけても自力で脱出され
る恐れがあったでの。じゃが、今の状態ではどうしようもないじゃろ。悔しいか?
ん? 悔しいか? へぁっへぁっへぁっへぁっ」




*************************************
「ねえ、綾香……」
「なに?」
「あんた、あんな性格だったっけ?」
「うっ……言わないでっ。私だって納得いかないんだから。今回は出てこなかった
けど、好恵だって似たようなもんじゃないの?」
「まあ……そうだけどね……」
「綾香さーーん、好恵さーーん」
「あら、葵。遅かったじゃない」
「はぁはぁ……はい、ちょっと作者さんに呼ばれてましたんで……」
「そうなの? で、作者のヤツ、なんだって?」
「えっとですね。綾香さんと好恵さんが、よく分からなくなったんだそうです」
「あたしと綾香が?」
「まず、好恵さんに関してですが、他のSSを読んでると、例えば頷くときに言う
セリフでは、『ああ』ってなってました。でも、某雑誌にでてた1シーンで、語尾
が『〜〜よ』ってなっていたので、このお話では『ええ』というふうに、女っぽい
言葉遣いにすることにしたんだそうです」
「ふんふん」
「でも、なんか違うかなぁ〜〜と……」
「ンなこと言っても、もう書いてしまったんだしどうせ変える気ないんじゃない?」
「そうですね。ただのグチだと言ってました」
「……あんたも災難ね。呼びつけられて、そんなの聞かされてたわけ?」
「ま、まぁ……。で、綾香さんに関しては、自分を『私』と呼ぶか、『あたし』と
呼ぶか、それと例えば藤田先輩を『あなた』と呼ぶか、『あんた』と呼ぶかが分か
らないと……」
「なるほどね」
「まあ、作者はTH持ってないからね。調べたくても調べられないのよね」
「はい。で、『初ない』内のおまけノベルでは後者、つまり『あたし』『あんた』
なんですよ。でも、LF97では前者の『私』『あなた』だったんですよね」
「……そうだったの?」
「……そうみたい……」
「で、どっちやねん!! (びしっ!!)」
「あいたっ! 何するのよ、葵」
「す、すみません。作者さんに一発突っ込んでこいと言われましたんで……」
「……ま、まあそういうことなら仕方ないか……でも、なかなか鋭いツッコミだっ
たわ。やるわね、葵」
「あ、ありがとうございます。これで私も今風の女の子ですね!」
「よし、それじゃあ今からエコーズあたりにでも行って、なんか飲みながらおしゃ
べりでもしましょう。そうして、今風に磨きをかけるのよ、葵!」
「はいっ!」
「ちょ、ちょっとちょっと。エコーズってWAの世界じゃない! あたしたちが行
っちゃ、まずいって!」
「気にしな〜い、気にしない。ひと休み、ひと休み……」
「あんたは一休さんか」

 その日、芸能関係者が集まるその喫茶店で女の子三人が格闘技話に華を咲かせ、
休憩に来ていた理奈が、「今風の女子高生ってこんな感じなのね……」などと考え
ていた。



なんか、ちと長くなってしまった……。綾香に関しては、どういうわけかこのシリ
ーズを書く前から『私』『あなた』だと思ってたんですよね。で、最近おまけノベ
ル見て「げ」となってたんですが、今さら変えるのはどうかと……。で、そのあと
八塚様のおかげで97の綾香エンド(?)を見ることができて、「よしゃ」と思い、
現在に至るわけです。それにしても、THではどっちなんでしょう?

ああ……元からイカレた内容だったけど、最近バカバカしさにますます磨きがかか
ってきた気がする……。
発勁の描写は、夢枕獏氏の『キマイラ』から一部模倣してます。
でも、それ以外はウソっぱちです。(汗)

感想書いて下さった皆さま、どうもありがとうございました。
レスはまた別の機会に……。