LF98(1) 投稿者: 貸借天
長編初挑戦です。
リーフ・ファンタジー98といいます。
雫以降のリーフキャラ達をファンタジーっぽい世界に放り込んでみました。
先のことをほとんど考えていないので挫折する可能性が高いのですが、もしよければおつきあい下さい。
それにしても、なんつーベタな題名だ。

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第1話

娘が歩いていた。
その表情は明らかにウキウキしている。
それも当然だろう。今日は悠凪王国のリーフ祭初日。
全知全能なる神リーフに、今日までの平穏に感謝し明日からの幸福を願う、1週間にわたって行われる
大陸最大の祭りである。その盛大さと壮大さは近隣諸国にも知れ渡り、王都蛍崎には毎年大多数の、い
や超多数の来訪客が訪れる。
今日は第一日目とあって、町を歩く人々はおもにこの国の住民だが、それでも莫大な数の人間で通りは
ごった返していた。
「うーん。ちっとも進めないよー」
困ったような表情と声で娘が言った。
「約束の時間に遅れちゃうよー」
ぴょんこぴょんこと飛び跳ねて通りの先を見てみるが、さっきから全く前に進んでいない。
「せっかく冬弥君が誘ってくれたのに・・・」
どうやら、娘がウキウキしていたのは祭り見物に誘ってくれた男に会えるからのようだ。
「どうしよう・・・。危険だけど裏通りを通っていこうかな・・・」
娘はチラリと、すぐ近くにある暗がりへと続く細い路地を見た。
彼女はあまり裏通りには詳しくない。危険ゆえに使わないからだ。追い剥ぎや誘拐目的の人間に出会え
ば、彼女には身を守る術がない。
「でも・・・」
娘は再び、視線を通りへと戻した。あいかわらず全く進んでいない。
「うん・・・」
娘は1つうなずき、細い路地へと入っていった。
詳しくないと言っても待ち合わせ場所の方向へまっすぐ進んで、途中で表通りに戻ってくればいいだけ
のことだ。道に迷うことはない。そして今日はリーフ祭である。こんな日は追い剥ぎたちも活動を控え
て祭りを楽しんでいるかもしれない。
そんなことを考えながら、娘はスカートのすそをつまみ裏通りをひた走っていた。
しかし、彼女は箱入りで世間知らずだった。
こんな日だからこそ裏社会の人間達は活動するのだ。たとえば、この娘のような甘い考えを持った者を
毒牙にかけるために。
「はっ・・・はっ・・・はっ・・・」
と、その時懸命に走り続ける娘の横から、突然何者かが飛び出した。
「えっ・・・!?」
そして娘の肩をつかみ、腹部に一撃。
「うっ・・・!」
息を詰まらせたような声をあげて、直後彼女は意識を失った。




女が歩いていた。
その表情は明らかに焦っている。
(姫様・・・)
彼女は周りを歩く者たちの、特に若い女性の顔を見てきょろきょろしていた。
ものすごい数の人間である。この中からたった1人を見つけだすのは、砂漠に投げ込んだ砂粒を探し出
すことに等しい。
しかも、彼女が探している相手は周囲の空気や雰囲気にとけ込み、完全に一体化してしまう不可思議な
特技を持っている。はっきり言って探し出すのは不可能だった。
(姫様・・・。いずこに・・・)
それでも、彼女はやらなければならなかった。
今日のような日に町を出歩けば、彼女のあるじの身にどんな災いが降りかかるか分かったものではない。
少しずつ進み、ようやく広場へと出た女はそこで一息ついた。もちろん、そのさなかにもあるじを見つ
けだすという自分の仕事を、彼女は忘れていない。
と、そこで彼女の目に引っかかった者がいた。視界をちらっと横切った、1人の美しい娘の顔に見覚え
があるのだ。
(今のは・・・もしかして・・・)
女は、娘とその隣りを歩く背の高い男のもとへ、足早に近付いていった。


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メインキャラだけでも30人近くいるからなあ。
おまけにストーリーもほとんど考えてないし。
ほんとにちゃんとした形でエンディング(?)を迎えられるか、はっきり言って自信がない。
まあ、ぼちぼち書いていきます。