「ツーリング?」 「「うん」」 はるかと彰は同時にうなずいた。 でも、ツーリングって・・・ 「二人とも、一応念のために聞いておくけど・・・」 「「?」」 やはり、同時にきょとんとする二人。 「何に乗って行くわけ?」 驚いちゃダメだ、驚いちゃダメだ。 「僕は当然、この単車で」 「私は当然、この自転車で」 予想どおりだ。 いや、前回の続きだからこの答えは考えるまでもないんだけど。 「ツーリングかあ、いいなあ」 「だけど二人とも、気を付けてね」 「うん」 「冬弥も行く?」 え?俺にふるか? 「いや・・・俺、単車無いし、乗れないし」 「アリーナで自転車借りれるよ」 「俺も自転車で来いっていうのか?」 「冬弥だったら大丈夫だよ」 あのなあ。 「・・・いったい何キロぐらい出すわけ?」 「やっぱり、高速乗ったときは100キロぐらいは」 待て。 自転車で高速道路走る気か? 「いつ頃行くの?」 「まだ決めてないんだ。美咲さんも一緒に行こうよ」 「うん・・・。私は三人の足手まといになるから」 あ。 いつの間にか俺も行くことになってる。 「由綺は・・・」 「私もきっと・・・仕事が忙しいから」 「そうだよね・・・」 心底残念そうに、彰が言った。 「でも・・・えへへ。おみやげ期待していいかな?」 「うん。まかせといて」 「おぼえてたらね」 「もー、はるかー」 ・・・と、そういえば。 「ところで、行き先はもう決めてあるのか?」 「うん。一応」 「どこに行くわけ?」 「バリ島」 バリ島!? か、海外か!? いや、だめだ。 落ち着け、落ち着くんだ。 「・・・えーと、飛行機だと単車や自転車を運べないよな。となると、現地までは船の旅か?」 俺は心を落ち着かせる。 「何言ってるんだよ。僕たちは自分の愛車以外の乗り物、使う気はないよ」 彰の隣のはるかは「冬弥、変」と、つぶやいた。 変なのはお前らだ。 「待て待て待て。じゃ、どうやって海を越える気だ」 「どう・・・って。当然、海面上を走って行くんだよ。潮の香りを含んだ風を全身に浴び、波を蹴立 てながら。時にはイルカの群と戯れ、時には旅客船に手を振って。まあ、海越えの醍醐味だよね」 「でも、海越えにあんまり時間を費やしてられないからね。猛スピードで走ることになるから、その 時までに足を慣らしておかないと」 う、海越え!? な、何だそれは!? 「藤井君も行くんでしょ?サメには気を付けてね。私にはまだ、海越えはできないから行けないけど」 俺にも無理だよ。 「冬弥君だったらママチャリでも全然オッケーだよね」 ムチャゆーな。 あああ。 ダメだ。 はるかワールドだ。 はるかワールドは絶対無敵なんだ。 『はるかワールドに不可能はない』 そう、いずれは俺もママチャリで宇宙を駆け抜け、あの月へ。 ああ、ミステリー。