涙のワケ 投稿者: 貸借天
さあ、今日は学校に行こう。
今日の映文論は、そろそろ試験のことを口にしてくれるはずだ。
最近、あの授業出てなかったからなあ。
ちょっとやばいかも。



「えーと」
教室は、と・・・あれ?
あの後ろ姿は・・・・はるかじゃないか。
「おーい、はるか」
俺は、ショートカットでスリムな体型をした、幼なじみの女の子に声をかける。
「あ、冬弥」
相変わらずのぼーーーっとした声とわずかな微笑を浮かべて、はるかはこっちにやって来た。
と・・・あれ?
「これから授業?」
「あ・・・ああ・・」
俺は、どうしてもうろたえてしまう。
「冬弥、どうかした?」
聞いた方がいいのだろうか。
「はるか・・・泣いてるのか?」
「ん・・・・?」
はるかの両目は赤く充血し、両の頬を涙が伝い小さな流れを作っていた。
手の甲でごしごしと、涙を拭うはるか。
「なにか・・・あったのか?」
「ん・・・・・」
はるかには兄さんがいた。
それも、すごく仲のいい。
そして、俺のあこがれていた人でもある。
だけど・・・死んでしまった。
事故であっけなく。
彼には、輝かしい未来が待っていたというのに。
はるかには、川島先輩のことが忘れられないのだろう。
たぶん、ずっと。
そして、今も大好きだった兄さんのことを思い出していたのだろうか・・・・
そんなことを考えていると、
「冬弥とおんなじ理由」
はるかはそう答えた。
「え?」
・・・・俺と同じ理由で、はるかも悲しんでいる?
だけど、俺は別に悲しいことなんて・・・・
まあ、最近由綺とは会ってないから寂しいけど、別に悲しいってほどでも・・・・
いや、でもさっき俺は川島先輩のことを考えていたから、ということはやっぱりはるかも・・・?
「面倒くさいから」
「は・・・・?」
ますますもってわけが分からない。
「面倒くさいって・・・・何が?」
「まばたき」
「・・・・・・・・・」
「じゃ」
そう短く言い残して、はるかは歩き去っていった・・・・



はるか・・・・
面倒くさくても、まばたきぐらいしろよ・・・・
て、いうか、まばたきは面倒くさいというレベルか・・・・?
それに、俺はまばたきを面倒くさがって、涙を流したりしないぞ・・・・