月下の長瀬 投稿者: トリプルG
満月の夜は、凶悪事件や交通事故の発生件数が上がるらしい。
もしかしたら満月の光は、狂気の光なのかもしれない・・・・

深夜。空は晴天。満月がその身を余すところ無くさらしている、そんな夜。
鬼が、静かにその公園に降り立った。手には先ほど殺した男の血がこびり付いている。
公園にいた数人の男が、鬼の姿を見て悲鳴を上げた。鬼が、笑った。
「柳川・・・。」
丁度命の炎を見終わった頃に、公園の入り口の方から声をかけられる。あれは・・・そう、今支配しているこいつの上司・・・長瀬とかいう奴だ。
鬼は、不振を抱かなかった。鬼の姿をしている自分に向かって、長瀬が柳川と言った事に。
「もう・・・元には・・・戻れないのか・・・。」
鬼に聞こえないほどの小さな声で呟く長瀬の目に浮かぶのは、恐怖ではなく悲しみ。鬼は、その目が気に入らなかった。高速で長瀬に近づくと、その頭に腕を振り下ろす。
・・・一瞬の後、鬼の顔に驚愕の色が浮かぶ。
長瀬の頭を潰すはずだった腕は、何か見えない壁によって止められていた。
「私の一族には代々変わり者が生まれてましてね・・・老齢の今も強靱な肉体を保っている者、えらく頭のいい者、本人は気付いてないようだが『能力』の素質がある者・・・」
鬼の爪が、何か見えない力によってへし折られる。
「私の場合、今あなたに使っているような力を授かってるんですよ。」
長瀬が無造作に腕を振るうと、鬼が大きく吹き飛ぶ。
「一つ聞きたいんですが・・・その体、柳川に返す気・・・ありませんかね?」
「フザケルナ!我ワ誇リ高キ狩猟者!貴様ラ下等ナ者ノ指図ナド受ケン!」
「そうですか・・・。・・・柳川・・・お別れだ・・・・。」
怒りにまかせて突進してくる鬼を見据え、腕を突き出す。風船が割れるような音がして、鬼の体が消し飛んだ。
(・・・ありがとうごさいます・・・貴之・・・阿部貴之の事を・・・頼みます・・・)
最後に、そんな声が聞こえた。

「いや、おまたせおまたせ。」
車の座席にどかっと腰を降ろす。
「おそいじゃないですか!こんな時間にいきなり車止めろなんて言って、一体何やってたんですか!?」
「ちょっと腹の調子が悪くてね。ビールを飲み過ぎたかな?」
「まったく・・・。」
力を使った後の疲労感に身をまかせ、部下のぼやきを聞きつつ、ふっと満月を見上げる。
自分も、この満月の狂気に支配されているのかもしれない。ふと、そう思った。

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す、すいません、また顔だしてしまいました・・・(汗)。僕は意志が弱いです・・・。
変なところがあったらごめんなさい。あ、長瀬家の人々、一人抜けてますが、あの人はどうも一教師としか頭に浮かばないので・・・・。

前作に感想くれた人に感謝!