優しさの結末 三日目 深夜 投稿者:智波
さて、初!家で書いた、優しさの結末ですっ!
果たして、うまくコンバートできるんでしょうか?(不安)
それでわっ!
・・・見事にこけました(笑)

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1

何時の間に、窓の外が雪景色に変わっていたんだろう?
列車の窓から見る雪は、何か懐かしく、何処か寂しかった。
今こうしていると、なぜ正月に戻らなかったのかが不思議になる。
それは多分記憶のせい……
夏の記憶、
皆と遊んだ過去の記憶、
正月に遊びに行ったという記憶は、無い……
「ふう……」
列車には少々季節外れの湯治客がいる。
そういや千鶴さんは忙しかったんじゃないだろうか?
温泉宿なんかは冬が書き入れ時だ。
迷惑はかけられないよな。
一晩、一晩だ!それで片づけて見せる!
正直言って無謀な考えだった。
どれだけ考えてみても、やつの方が実力は上。
真正面からぶつかれば、勝ち目はない。
鬼の力……
俺は慢心していたのか?
あの時、全身から湧きあがる力を感じた。
千鶴さんに向かって振り下ろされる爪……
あの時、俺は無敵だと感じた。
何者も俺に立ち向かうことはできないと……
絶対的な力を誇っていたはずの鬼を弱いと感じた。
俺は、強い……と。
間違いだったのだ。
俺は弱い。
しかし、あの時、すべては終わった、と……
終わってなかった。
終わってなかったんだ。
ガタンゴトンと列車は揺れる。
見知った町に近づいていく。
戦いの町に……

ルルルルルルルルルルルルルル……
カチャ……
「はい、小出ですが」
「すみません、柏木と申しますが、由美子さんは?」
「あっ、柏木君?あたしだよ。何か用?」
「由美子さん。ちょっと聞きたいことがあって」
「何々?何でも聞いてよ」
「雨月山の鬼のことなんだけど」
「うんうん」
「ほら、鬼の娘が侍に渡した武器ってのがあったでしょ?」
「うん」
「ああいうのって、何処かのお寺に残ってたりするわけ?」
「えー……、そういえば、あったかな?」
「それ、何処か分からない?」
「ちょっと待ってくれれば分かるけど……、どうしたの?急に」
「地元のことだしさ。今度のレポートにでも使おうかと思って」
「ごめーん、鬼の話、あたしが使っちゃったよ」
「それでもいいからさ。お願い」
「うーん、いいよ。ちょっと待っててね」
無音の受話器を握り締めつつ、馬鹿らしいと思った。
鬼を討伐したという侍が使ったという武器、
それが現存すればやつに対抗できるのではないか?
正直、その可能性に賭ける意味合いはある。
あるならば、だが。
「もしもし、柏木君?」
「はい、聞いてるよ」
「あのね、隆山の鬼神神社ってところにその侍が使ったとされる刀があるらしいよ」
「鬼神神社?」
「うん、その侍の子孫が、侍から受け継いだ力で化け物退治をやってたんだって。
そのうち一人、時の領主に憑いた八又の蛇を退治した侍を祭ってるんだって」
「そうか、場所を教えてくれる?」
「いいよ、メモできる?」
「多分、覚えられるよ」
「そっか、そうだよね。それじゃね………」

そして、今俺はその神社の境内にいた。
夜も更けかかっているというのに、神主が快く迎えてくれる。
と、いうのも、俺が彼らの祭っている神の子孫である、
柏木家の人間だからだろう。
俺は、御神体である刀を見たいと申し出る。
快い承諾。
神主に言わせると、俺達柏木の人間こそが正当な後継者らしい。
柏木家から、この神社に奉納された後も、それは神主たちに
代々伝わっているということだった。
神社の奥、古びた倉に白い布に包まれて、それはあった。
「これが?」
「ええ、そうですとも。霞と銘打たれた希代の名剣…
ということになっとりますがの」
神主の言いたいことはすぐに理解できた。
と、言うより、理解するしかなった。
その丈、およそ2メートル、およそ人間に扱えるものではない。
しかし一方で、その柄や、鞘は、まるで昨日打たれたもののように美しい。
「これは、誰かが手入れを?」
「ええ、私どもがやらせてもらっております」
「ちょっと触って見ていいですか?」
「どうぞ、貴方が遠慮する理由はありませんよ」
そっと手を伸ばし、柄に触れる。
その瞬間、俺の全身を脱力感が襲い、俺は思わず膝を付いた。
「大丈夫ですか!?柏木様」
「だ、大丈夫です」
な!?何だったんだ?今のは?
気を保ち、もう一度触れてみる。
再び俺を脱力感が襲う。
しかし、先ほどのように、全身の力を抜かれるというわけではない。
「抜いてみていいですか?」
「いや、それが……」
「駄目なんですか?」
「いえ、試して見てください」
神主の物言いに何かを感じたが、良いと言われた以上は、やってみるしかない。
しかし、この刀を持ち上げるには……、そう、鬼の力を解放せねばならないだろう。
俺はそれを避け、台に置かれたままの刀を、鞘から引き抜こうとした。
「ふんっ!………あれ?」
「……実は、抜けないのです。刃が錆びてしまっているのか、それとも封印されたのか?
私どもにはそれに関する伝承が伝わっておりません」
「抜け、ないんですか……」
「ええ、申し訳ありませんが……」
「いいえ、いいんです。俺もこんな遅くに失礼しました。帰ります」
「お気になさらずに、何か聞きたいことがあったら、何時でもお寄り下さい」
「有り難うございます。では」
「はい。お休みなさいませ」


2

帰ってきた。
心底そう感じた。
柏木家。
相変わらず、お屋敷で、そういう意味では馴染めないけど、
この前の事件で、何かが変わったんだろう。
門は閉まっていた。
だが鬼の力を出せば、塀を飛び越えることくらいなんでもない。
千鶴さんだって、分かってるってことだ。
その証拠に、居間にはラップに包れた肉じゃがが置かれていた。
その隣にメモ。
「終電が終わる頃に電話します」
確かに悪くない。
電話だけなら、俺も、奴も千鶴さん達の居場所を突き止められないだろう。
時計を見ると、午後11時45分。
そろそろ電話もかかってくる頃だ。
俺はとりあえず、肉じゃがをレンジでチンして、食事にすることにした。

「ご馳走さま」
誰もいないテーブルに向かって、そう一人ごちた時、電話が鳴った。
「もしもし、耕一さん?」
「うん、俺だよ」
「よかった、無事に着かれたんですね。
家に居られなかったらどうしようかと思ってたんですよ」
「そっちも大丈夫?」
「はい、いまのところは」
「そっか、でも気をつけて」
「はい。……耕一さん」
「なに?」
「私がいてはお邪魔でしょうか?」
「……千鶴さん」
正直言うと、一緒にいてほしかった。
この家に一人は寂しすぎる。
奴に一人で戦いを挑むのは無謀すぎる。
「駄目だよ、千鶴さん。千鶴さんは、みんなを守ってもらわないと」
「そっ、そうでしたね。すみません。私、差し出がましいこと、言ってしまって」
「ううん、いいんだよ。ありがとう、千鶴さん。その気持ちだけでうれしいよ」
「………はい、耕一さん」
居たたまれない。
できれば、できることならば、今すぐ行って、抱きしめたい。
息ができないくらい強く。
「あの、……初音に代わります」
「うん」
「…………あ、あの、お兄ちゃん?」
「初音ちゃん。ごめんね、俺の我が侭で、辛い思いさせて」
「ううん、いいんだよ。
耕一お兄ちゃんが、私たちのこと考えてくれてるって、知ってるから」
うう、初音ちゃんは、ホントいい娘だなあ。
「ところで、あの肉じゃがは……」
「うん、私が作ったんだよ!」
「美味しかったよ。また腕を上げたんじゃない?」
「うん、でも早く梓お姉ちゃんくらい上手に作れるようになりたいな」
「でも、性格まで真似しちゃ駄目だよ」
「……うっ、うん。じゃ、じゃあ気をつけてね。梓お姉ちゃんに代わるね」
「……」
「おう、耕一。あんた、またなんかやらかしたのかい?」
「何だ、その俺がいつもとんでもないことをしでかしてるような口振りは」
「別に、どうでもいいけどねえ。まっ、何でも、さっさと終わらしちまいな」
「分かってる」
「それじゃ、楓に代わるな」
「……」
「……」
「…………」
「…………」
「あの、楓ちゃん?」
「……はい、耕一さん」
「ごめんね、こんな目に合わせちゃって」
「……いいえ、気にしないでください。なんとなく分かってましたから」
「えっ?」
「あの、実は半年前、話そうと思ってたんですけど、実は、
私も耕一さんと同じような夢を見るんです」
「えっ?」
「遠い夢。そして、近い夢。私は夢の中で、鬼の娘なんです」
「楓ちゃん、それは」
「分かってます。でも違うんです。私は私じゃなくて、別の私。
エディフィルという名の、鬼の娘。
そして耕一さん。次郎衛門という名の耕一さん」
「次郎衛門だって!  それに、エディフィル」
「はい」
「楓ちゃん、君はその夢の中で、アルガルという名の鬼を知っているかい?」
「……知っています。
私、いえ、エディフィルの姉二人を殺した、ダリエリの右腕のような鬼です」
「じゃあ、奴の言っていたことは、ホントだったのか?」
「耕一さん。次郎衛門はアルガルに辛うじて勝利しているんです。
今の耕一さんじゃ」
「そうかもしれない。でも、俺はやらなきゃいけないんだ」
「……耕一さん」
「無事を祈っててくれよ、楓ちゃん」
「……はい、ご無事で」
「それじゃ、千鶴さんにまた電話するように、言っといて。お休み」
「お休みなさい。耕一さん」


3

久しいな。
そうは思わないか?
ジローエモンよ。
雨月山が見える。
思い出さないか?
我らが狩猟の日々を。
貴様との戦いを。
この地は生命力に溢れている。
貴様を狩った後が楽しみだ。
……させるか!
なら止められるか?
……止めて見せる。
できるものならばやってみるがいい。
それもまた一興だ。


4

暗い病室。
消灯時間を過ぎた病院は、昼間とは違う世界になる。
そう、夜の学校みたいに……
肋骨を二本骨折、それですんだのは幸運だったんだろう。
それに重い怪我のおかげで、警察の事情聴取が遅れているのも。
「来たよ、長瀬ちゃん」
「待ってたよ」
呼び続けていた。
あの時、瑠璃子さんがずっと呼び続けていたみたいに。
ただあの時と違うのは、僕は瑠璃子さんを呼んでいたことだ。
電波の才能があれば誰でもいいというわけじゃない。
「……行こう」
「うん」
瑠璃子さんの手を借り起き上がる。
行かなきゃいけない。
あのイメージ、そして。
耕一さんは知らないから。
伝えなきゃいけない。
電波の力、僕は確かにあいつに浴びせ掛けた。
強く、止まれと念じた。
その電波を、あいつは吸収したんだ。
瑠璃子さんの手を借りて、病院を抜け出す。
ごめんなさい。
心の中でそう言いつつ、周囲に、眠るように命じた電波を飛ばす。
「こっちだよ」
そう言う瑠璃子さんについて行くと、やがて病院の裏口に出た。
「だ、大丈夫ですか?」
そこでそんな事を言いながら一人の少女が駆け寄ってくる。
瑠璃子さんが警戒していない。
「君は?誰?」
「私は……」
「長瀬ちゃん、助けてあげるよね」
「えっ?」
「……浅水君を助けてあげてください!」
「浅水君?」
「その人が、あなたなら助けられるって」
「なに?なんの…………瑠璃子さん?」
瑠璃子さんが肯く。
それで僕はすべてを理解した。
「分かってるよ。彼は僕が助ける」
「私も、私もいっしょに連れていってほしいんです!」
帰るように言おうとした先手を取られて、僕は戸惑う。
「浅水君が困ってるのに、何もできないなんて、嫌なんです!」
「………分かった、行こう」
そういった直後、胸に痛みが走る。
痛みに思わずひざを突きかけた僕を、柔らかい何かが支えていた。
「瑠璃子さん」
「……今度は私が長瀬ちゃんを守ってあげる」


続く
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>うるるるるるる……
「…………」
>なんか言ってくれよ、間が持たないよ。
「……言い訳するんでしょ」
>ぐう……
「さっさとしなさいよ。あたし、出番が復活するみたいで、忙しいんだから」
>誰のお陰で……
「真奈美が可哀相だといってくれた人のお陰」
>最初っからその予定だったんだけどなあ、信じてくれないんだよな。
「早くしてよ」
>はいはい。
>るるる、ついにハイドランドさんに突っ込まれてしまいました。
>耕一の服の件!(笑)
「あの、変身後は素っ裸じゃないか、ってやつね」
>そうです!
>前に言ったんですけどね、ボロ出したって……
「あれ?でもそれって、三日目午前の後書きじゃ?」
>その通り!
>あの時に断言したはずだ!誰かに突っ込まれるまでは黙ってると!
「情けないことを、堂々と……」
>突っ込まれた以上は言わねばなるまい!
>二日目午後でも、変身した直後の耕一が電話を求めて走ってます。
>素っ裸で!
「気づいてたの?」
>気づいてましたとも!
>書きおわって、投稿した後でね。
「で、その結果が、あの後書き?」
>はい、その通りでございます!
「で、やっぱり、耕一さん、素っ裸だったの?」
>それは直視したおまえが一番よく知っとろう。
「えー……、うーんとね……、あれ?」
>どうした?
「なんかモザイクがかかってて、思い出せない」
>をい!
「智波が説明しなさいよ!」
>うーい。
>すんげー、嫌なんだけどね。
>ショックで、一日書けなかったし。(嘘)
>ええと、実は耕一、ロングのダッフルコートを、前を止めないで着てるんです。
>戦闘前に脱ぎ捨てるようにしてるせいでボロボロ……(涙)
>で、もし鬼に変身してしまったら、素っ裸の上に、コートを……
「ええっ、耕一さん、それじゃあ、ただの露出狂じゃないですか!」
>言うと、思った……、だから嫌だったんだ。
>でも、前をはだけさせないので問題無し!
「でも、裸足じゃない」
>うん……………
「あっ、何一人でフェードアウトしてるのよ!」

次回!
ついに隆山での戦いの火蓋が切って落とされるのか!?
祐介たちは浅水を助けることができるのか!?
そして一部で望まれてるであろう柳川の復活はあるのか!?
過去と現在、未来を求めるものたちはそれらと向き合わねばならない。
ところで作者!
内容書く前に後書き書くなよ!

壮大なスケールでお送りする(隆山限定)
優しさの結末第六話!
明日出るとは限らない!


>また徹夜しちまいました。
>というのも、アリスソフトが悪い!(なんじゃそら)
>うう、なぜか日本時間で生活・・・
>夜まで起きてなあかんかな?
>眠いのでレスれません。
>また書きます。
>朝の3時から8時に書いた文章なんで、
>なぜか伏線ばっかはってます。
>では、寝ます!