優しさの結末 三日目 午後 投稿者:智波
やっと、家のPCにWORD97が・・・(感涙)
こ、これで家のPCで書いて、送れる!
って、失敗・・・(涙)
どうすればいいんですかぁ・・・(涙)
学校のPCはIEの大分良いやつだと思うんですけど・・・
結局、今日は直か・・・
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補足・雫はトゥルーハッピーエンドを
痕は千鶴さんのハッピーエンドをそれぞれ基準としていきます。
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1

ひゅう、と、屋上を冷たい風が駆け抜けた。
3月の初めとはいえ、風は冷たい。
この寒さの中、屋上まで登ぼって来る学生はいないだろう。
・・・足場は良い。
コンクリートを固めただけだが、安定はしている。
問題は、
「瑠璃子さん!危ないから離れてるんだ」
男の鬼気が高まって来る。
昨日遭遇したときよりも強く、深く。
鬼は力を増して来ている。
「もういいんだよ・・」
瑠璃子さんが不意につぶやいた。
良いわけがない。
彼はとっくに鬼に支配されているんだ!
今、いますぐ殺らないと・・・
多分、彼は柏木の血のものだろう。
何処かで、血が漏れていたのだ。
考えられないことではない。
彼は俺を見つめたまま、茫然と立ち尽くしている。
そう言えば、どうして前回逃げ出したのかも分かってない。
しかし、悠長なことは後でいい。
今は彼を、いや、奴を、
「どの血筋かは知らないが」
例えどの血筋であったとしても、
「鬼を制御できないなら・・」
かつてのあの鬼のように、
「俺が殺す!」
次の風が、ひゅう、と、吹いた。

ギィン!
硬質化した爪と爪が、異様な音を立て弾かれる。
火花が散り、お互いが間合いを取る。
お互いに鬼と化した二人、今度は彼も取り乱さない。

・・・久しいな、ジローエモン。

そんな声が頭で響いた。
遠く懐かしい声、そんな気がする。

・・・ジローエモン?誰の事だ!

地を蹴って飛び出す!
奴が待ち受けるように、腕を振り上げる。

・・・忘れたか!このアルガルを!

アルガル?
不思議と聞き覚えがある。

・・・我は忘れんぞ!

と、奴が右手を降り降ろす。
早すぎる。
と、思うと同時に、奴の思惑が分かり、俺は身構えた。
鋼鉄より硬い爪が叩きつけられたコンクリートの破片が、
辺りにつぶてとなって、飛び散った。

・・・ジローエモン!我が主、ダリエリの仇!

飛んで来たつぶてを弾く!

・・・ダリエリ?だと!

強烈なイメージが脳内を駆け巡る!
何だ?この意識は!
はっとすると、目の前から奴が消えている。
風が、上空から舞い降りて来る。

・・・そうだ!!

見上げもせずに、前方に転がる!
背をかすめる風が、どれだけ危なかったかを伝えて来る。

・・・ただでは殺さんゾ!ジローエモン。

・・・なんだと?

地を転がり、両手で地を弾き、体を反転させる。
顔を上げた瞬間、目の前に迫る風があった。
左手を跳ね上げる!
奴の右手に当たる!が、爪が俺の左肩を深々とえぐった。
「グォォオオォォォォォォォ!!!」
当てた手で、とっさに俺の肩をえぐったままの、奴の右腕を掴む!
右足が弾かれたように動いた。
ドゴン!
一発、
ドゴン!
二発、
ドゴン!
三発。
すべてガードされる。
「グオオォォォォォオオオオオォォォォォ!」
左手を離す、と、同時に最後の蹴りを放った。
またガードされる。しかし、一方で、奴の巨体が揺らいだ。
畳み掛けるがごとく、すばやく体勢を整えた俺が右腕を振り上げる。

・・・我が痛み、我が苦しみ、我が絶望。
・・・すべて味わせてくれる!

「グホッ!」
重い衝撃が、俺の腹を襲った。
腹部を駆け抜ける異物感、・・・爪だ。
奴の爪が俺の腹を貫いたのだ。

・・・ジローエモン。

・・・違う!俺は柏木耕一だ!

・・・キサマと我は良く似ている。

・・・なんだと?!

・・・我らがこうして語り合えることが、証し。
・・・我らが互いの夢を見るのが、証し。
・・・分かるか?この事の意味が?

分からないわけがなかった。
腹部をえぐられ、強烈な痛みに耐えながらでも、しっかりと思い出せた。
響子さんは何故鬼の餌食になったのか・・・
かおりちゃんは何故・・・
あの時俺は、考えたくもない結論に達さざるをえなかった。
もう一人の鬼は、俺と意識をリンクさせながら、獲物を探していたのだと・・・
あの時と同じ事を・・・
キサマ!キサマ!
「グオォォォォォオオオォォォォ!」
両手を力の限り突き出した。
俺に密着しながら、俺の腹を貫いていた、奴は5mほど吹き飛ばぶ!

・・・ククク、焦っているな。
・・・だがどうしようもない。

奴はなんなく立ち上がる。
ダメージがないのは明らかだった。

・・・キサマ、俺の周りの人たちに手を出してみろ。
・・・どうなるか

・・・どうなるというのだ。

・・・何処だろうが、追い詰めて、殺してやる!

・・・ククク、そうだ、それこそが同じなのだ。
・・・我も同じ事を誓った。
・・・我も同じように絶叫した。
・・・止められるかな。我がキサマの最愛の女を殺すことを。

その瞬間、半年前に見た、千鶴さんの笑顔が、
一昨日聞いたばかりの、寂びしそうな千鶴さんの声が溢れた。

・・・させるもんか!

・・・クククッ、アーハッハッハッ。

・・・何が可笑しい!

・・・ジローエモン、キサマ、今思い浮かべただろう。
・・・女の顔を、女の声を。
・・・我が見逃すと思ったか!
・・・我が聞き逃すと思ったか!

・・・なっ!

・・・クックックッ、さあ、絶望しろ。あがけ。
・・・ジワリとした痛みを、終わらぬ苦しみを、味わせてやる。

・・・キサマァ!

ひゅっ!と、音を立てて、小さなコンクリートの塊が飛んで来た。
右手でそれを払う、と、ふっと、鬼気が消える。

・・・エディフィルの事を繰り返したくなくば
・・・全力であがくがいい。ジローエモンよ!

鬼気を追おうとして、それが無理なことに気づく。
奴は完全に気配を消し、俺とのコンタクトも断ったのだ。
まただ。また、こちらからはこの感覚を操作できない。
多分、それは奴との力の違いとも関係しているのだろう。
この戦いではっきりした。
奴と、俺にはほとんど力の差がない。
その差は、経験の違い、なのだ。
奴はどうしてだか知らないが、豊富に実戦経験を積んでいる。
鬼の肉体での戦いに慣れているのだ。
俺にはそれがない。
それが実力の差となっているのだ。
くそっ!
地面に拳を叩きつける。
コンクリートが弾けた。
「・・・行かないの?」
俺は顔を上げた。
変身を解いた、俺のそばに瑠璃子さんが立っている。
そうだ!行かなきゃならない。
それよりも先に電話だ!
早く伝えないと。
俺は立ち上がって、屋上から出た。
「・・・うわっ!」
その途端、そこにいた一人の女生徒とぶつかって、二人とも派手にこける。
「ごっ、ごめん!」
そう言って、立ち上がりつつ、重大なことを思い出した。
「見てたのか!」
女生徒は、ガクガクと震えている。
間違いはなさそうだ。
しまった、と、思う。
奴との戦いに夢中で、人の気配に気を配っていなかった。
千鶴さんと、俺との決定的な違い。
また見せつけられた気がする。
千鶴さんなら、絶対に冷静を失わずに戦う。
それは、これまでの事で分かっている。
それに比べて、俺は・・・
「あ、・・・」
「見てたんだね!」
女生徒は、震えながらも、しっかりとうなずいた。
「今の事は誰にもいわないこと、いいね!」
別にほんとはどうでもいい。
ホントの事を言ったところで、誰も信じはしないからだ。
「ほら立って」
そう言って、手を延ばす。
尻餅をついたままの格好だった女生徒は気丈にも、
俺の手を拒否しはしなかった。
「あっ、あの・・・」
「なに?」
「浅見君はどうなったんですか!?」
震える声をしぼったせいだろう。その声は不自然に大きかった。
「浅見、君?」
「あっ、あのっ、あなたと同じように変身して・・」
「彼か・・・」
なんと言ってやればいいのだろう。
何と説明してやれば。
「・・・詳しいことは言えない。今の事は忘れるんだ。彼の事も」
「無理ですっ!」
「どうしようもないんだ」
「嫌です!」
何を言われても、どうしようもない。
かわいそうだが、放っておくのが一番だ。
「浅見君の事はちっちゃいときから知ってるんです。
ずっと一緒だったんです。
忘れろなんて、そんな、無理です」
どうしろというんだ。
俺はしかたなく、ついに泣き始めた女生徒の対応は瑠璃子さんに任せることにして、
家に帰った。


2

「よかった」
秘書とやらにしばらくじらされた後の、
電話口に出た千鶴さんの第一声がそれだった。
「へっ?」
「ニュースを見たんです。隆山での事件とよく似ているという事で、
話題になってるんですよ。それで・・・」
ああ、そうか。
「俺だと思ったんでしょ」
「・・・はい」
長いためらいの後に、千鶴さんは肯定した。
「私、また耕一さんを疑ってしまったんですね」
「そんなことはいいよ。それよりも」
千鶴さんはそれがどういう事か気づいていないのだろうか?
「いますぐ、皆を連れて、俺の知らないところへ逃げるんだ」
「どうしてです?」
「鬼が現われたんだよ!また、別の奴が!」
「あっ!」
まったく考えに及んでなかったらしい。
それというのも、俺の可能性が一番高かったからだろう。
「・・・私たちを狙ってるんですか?」
「そう!だから!」
「分かりました。でも私は残ります」
「どうして」
「私も戦います!」
「駄目だ!」
「どうして?」
「千鶴さんじゃかなわないよ。現に俺でも少しやばいくらいなんだから」
「だったら、なおさらです!」
そう言われれば、そうなのかもしれなかった。
「・・・・・・もう、あなたまで失いたくないんです」
「千鶴さん」
声がかすれた。
千鶴さんの気持ちにどう答えればいいのか、今は答えが見つからなかった。
「俺だって千鶴さんを失いたくない」
「じゃあ、一緒に」
「駄目だ。とにかく、今は身を隠して欲しい」
「でも、それじゃあ」
「分かってる。でも分かって欲しい。
俺は千鶴さんを見つけるよ。約束する。だから・・・」
「・・・・・」
沈黙が俺を不安にさせる。
「・・・分かりました。仕事が終わったら家に帰って、何処かに行きます」
「仕事が終わったらって」
「どうせ、梓は遅くまで帰って来ませんもの。それに」
「それに?」
「その鬼だって、電車でしょうし」
「確かに・・・」
一瞬、鬼の姿のまま、電車に乗る、奴の姿を思い浮かべて、
思わず苦笑してしまう。
「今から、行くから」
「はい、お待ちしています」
電話が切れる。
これが、もしこれが、
ただ遊びに行くというだけの電話だったら、どれほど良かったか。
今更そんなことを言っても仕方がないとは分かってる。
でも、そうだからこそ、
奴は許せない。
俺は何の荷物も持たないまま、家を出た。
終わりは何時来るのだろうか?
そんな疑問を抱きながら。

続く
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>うにゅにゅ、終わった〜(安堵)
「終わりましたね」
>真奈美ちゃん、また出たね。
「そんな、人を化け物みたいに」
>いやぁ、前回、ボロボロだったんで、苦労した〜。
「体調の悪いときは休んだらどうです?」
>そうだね、ありがとう。
「トチ狂った智波さんのせいで、襲われた私の身にもなってください」
>まあまあ、最後までやられなかったんだからいいじゃない。
「瑠璃子さんが襲われるんじゃなかったんですか?」
>いや、瑠璃子さんだったら、抵抗しないだろうな、と。
>さすがに最後まで書くのは、何だったし。
「途中までだったらいいんですかっ!」
>いいっ!
「・・・私の負けです」
>よし、勝った!
「それじゃあ」
>またこんど〜